もちろん撮影などは厳禁である。近年のYouTubeでのラリー・カールトンのインタビュー動画などを見ると、テレキャスターなぞを持っていたりするものもあり、ギブソンのES-335を使うかどうかは不透明だったが、このライブではES-335を弾きまくる。
デヴィッド・T.は近年は日本でドリカムのライブメンバーに入ったりしていた。名アルバムPressOnを発表してからほぼ四十年である。肉体的な衰えは隠せず、時として容易されていた椅子にステージ上で座り込む。
ライブそのものはラリー・カールトンのユニットにデヴィッド・T.が加わるという形のものである。この札幌市民ホールが建て替えられて訪れるのは二度目であるが、最初は小出裕章講演会であり、二度目がこれである。建て替える前の市民会館ホールでは、ブルース・ブラザーズ・バンドの来日を見た。
感想としては、ラリーのギターの音が大きすぎて、デヴィッドのギターの音が聞こえないという難点があった。ラリーはバックに回ってもオブリガードを随所にはめ込む。デヴィッドのギターの音色の色気は、チョーキングをしたあと、弦から指を話すタイミングの絶妙さにあるわけで、その部分がラリーのオブリガードで消されてしまう。フレーズの多彩さと運指の速さではラリーが上だから、デヴィッドは一音一音特徴を込めようとしても、演奏がそれを許さない。ちょっと残念である。
それでも、ブルース・ブラザーズ・バンドのライブの次に良かったと言える。外タレの演奏と歌で腹を立てて席を立ったのは、アン・ピーブルズの日本青年館での公演以来無い。
札幌に来てKitaraの大ホールで素晴らしい演奏と出会ったのは数年前のオーネット・コールマンのライブである。何度かお話をさせていただいたこともあるジャズピアニストの山下洋輔さんもジョイントしていたのだが、山下さんも札幌でのオーネットはすごかったと認めているほどの出来で、あれは空前絶後に近いほどの素晴らしさだった。
そんな腰が抜けるほどのライブとはならなかったし、ほぼ90分で終わるというギグであった。チケット価格としては順当であり、その金額分だけは楽しめたから、良しとしなければならないのだが、もう少しデヴィッド・T.の素晴らしがが引き立てば、良かったのにと思わないでもない。チョット物足りなさが残るのだが、ラリー・カールトンの公演としてみると、それはもう十分なんだろう。でも、正直に言えば、ラリー・カールトンだけなら、オレはチケットを買っていないもんね。
ジェフ・ベックのライブも近々あるらしい。オレは多分行かない。ボブ・ディランもちょっと大きなライブハウスというか、クラブでのスタンディングでのライブ。オレ、ボブ・ディランで踊れるか?という根源的な問題に立ち至ってしまうのよ。高いし狭いし、しかも立ち見で混み合う。正直に言えば「まっぴらごめん」である。