20140222 R/F #059「小出裕章ジャーナル」【安定供給・コスト低減・温暖化対策は原発推進の大義名分か?】
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個人的な考え方なのだが、オレは原発が「温暖化対策」になると思っていない。発電に使う熱量の倍の熱量を海に温排水の形で放出していることが、潮流に影響を与えないわけがない。
二酸化炭素による温暖化をアル・ゴアは「不都合な真実」で表明したのだが、オレは原発による温排水が海水温の上昇に寄与しているということからも、温暖化に寄与しているのだと思っている。
大気と海水では保温効果が違う。直接海を温める方が気候変動に大きく寄与しているのではないか。トンでも学者としてテレビバラエティなどに登場している中部大学の武田邦彦は、地球はむしろ寒冷化していて、氷河期が近づいていると警鐘を鳴らしている。
温暖化の結果訪れる氷河期という考え方もある。映画「デイ・アフター・ツモロー」では、大洋大海流が温暖化の結果停止し、氷河期が襲うという世界を描いている。海底の海水温の上昇が、世界の海の循環を阻害し、気候変動の大きな要因となる、という話だ。
この映画では二酸化炭素による大気の温暖化が、北極の氷を溶かし、その結果として極地の海水温が温暖化して海流を阻害し、大きな気候変動に至るという話である。その海の温暖化に、原発は大きく寄与している。
事故を起こさなくても原発は環境に大きな負荷を与える。事故を起こすと更に放射性物質の蔓延という過剰な負荷を与える。
放射性物質は「大したことない」という人がいる。都知事選に立候補し落選した自衛隊幹部出身の人物は、放射能は怖くないと言い放つ。果たして本当か。
放射能の生み出す放射線は電離放射線と呼ばれる。光でも電離作用を生み出す波長を持つものがあって、それは紫外線である。紫外線は生鮮食品を扱う店などに紫外線ランプが使われているように、その電離作用で微生物を殺傷する。皮膚に当たると、その水分子から水素を電子して、活性酸素を残す。その活性酸素が、皮膚の老化、シミ、シワなどを作り、最悪の場合には癌などを誘発する。それを防止するためにUVカット化粧品などが流通している。
放射線も同様に、人間の体を構成している水分を電離させ、活性酸素を生み出す。紫外線の比ではない影響がある。体外からは紫外線並ということなのだろうが、体内に入り込み内部被曝をすると危険だ。
人間の体内にはカリウム40という放射性物質が存在する。ただし、カリウム全般は体内に必須であるが、それほど長時間とどまらないため、食物などから頻繁に摂取することで、体内の一箇所にとどまり続ける状態にはない。人間などの動物の代謝機能によって、常に循環・排泄されている。つまり、現在生き延びている生物の多くは、このカリウム40には適応し、対応する肉体的システムが完備しているわけだ。
ストロンチウム90という放射性物質は、半減期が60年だという。オレがようやく半減期を迎えるということである。体内に取り込まれれると、人間を含めた動物の代謝フェーズには乗らないまま、骨などに蓄積する。骨髄関連の疾病、特に白血病などの原因となるのは、最早通説となっているほどである。
こうした物性を示さず、しかもβ線核種であるストロンチウムは、体外からの計測器では被曝測定ができない。α線核種は、測定のために分離することそのものが、違法行為となってしまうという指摘もある。
β線核種やα線核種が体内に取り込まれ、内部被曝状態となると、実は体外からの測定はほとんど不可能となる。体内では局所的に同じ部位に延々と被曝させる。これで細胞が変性しない方がおかしい。実際に、多くの動物実験で危険が認められているのだが、人間では「確認されていない」という。
広島や長崎の原爆炸裂後に、援助のために当該地域に向かった人が、多数亡くなっている。入市被曝というものだが、米軍は戦後すぐにそれを否定し、日本政府もその否定を前提に被爆者認定を続けているのだが、肥田舜太郎医師によると、いわゆる急性症状の他に、被曝影響のために起きる原爆ぶらぶら病とも言うべき不可解な病が出ているとされている。
現在の放射線治療でも、癌部位に照射を受けた人の多くが、その照射直後に肉体的な倦怠感を訴える。放射線治療で被曝した部分は、実はメスで手術したのと同様に破壊されている。肉体のDNAはその部分の修復に全力で働く。当然のように、その肉体修復が完了するまで、疲労感は残ると推測できる。
内部被曝の場合、その肉体修復が継続し永続するわけだ。被曝が続く限り倦怠感は続く。それを「原爆のショックによる精神的なもの」とするのは、もはや医療の放棄と言わねばならない。もちろん「精神的なショック」を受ける場合もあるだろうが、オレはすべてがそうだとは思えない。
事実、チェルノブイリ原発事故で復旧作業を行った作業員、リグビダートルの人たちの多くが、外見的な老化の促進と、原爆ぶらぶら病に類する倦怠感を症状として呈している。
空間線量だけを問題とする現在の日本の体制は、被曝の危険性を過小評価する一途でしかない。問題は被曝なのだ。被曝評価のためには、バイオアッセイなどの詳細な調査が必要なのに、福島県の健康管理調査はそこにまで至っていない。