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基本的にパロディ映画であるし、お馬鹿映画なのだが、そのお馬鹿映画としての本質が、正しいパロディ映画として成立している。特にレテーナ・リヒター役を演じた女優ユリア・ディーツェが、異様に可愛く見える。
ナチスが月に逃亡し雌伏し、地球をアーリア人国家で統一しようとするというヒトラーの妄想も含め、今日の国際政治のデタラメさすら表出させる。最後は月面ナチスを打倒した地球の国家同志が核を打ち合い地球が滅びることを暗示して終わるエンドロールにいたるまで、笑いと毒が適度に交じる。異様で意外な傑作なのかもしれない。
戦争を始めた大統領は再選されると語る女性米国大統領やら、そのブレーンと戦争の遂行者が女性広告屋だったりとか、今日の世界の「歪み」を、思う存分切り取っていて、月面ナチと対峙する各国が、実は宇宙協定を破って武装宇宙船を各国が保持していたとか、平和の象徴である国際宇宙ステーションの隣で、月面ナチの戦艦と各国の宇宙戦闘艦が互いに攻撃をしあうなど、その吐いている毒は十分だ。
毒の無いパロディ映画なんぞには存在意義が無い。月面ナチの中にはマッドサイエンティストも登場するし、盛り沢山である。
でもねぇ、世界がこんなパロディ映画のような「底」で動いているのだとしたら、楽しくはないかもね。笑いながら世界を憂う映画ということか。