燕のひゅう次郎
越後は長岡の郊外―田んぼと畑に沿った旧街道の雑貨屋の入り口の軒下です。
「ねえ・・かあさん・・どうして・・このお店のお爺さんやお婆さんは・・・時々・・僕たちをみるの?」
ひゅう次郎は、お爺さんの優しい笑顔が大好きなので・・・聞きました。
「そうねええ・・私たち・・家族をいつも見ていてくれるのね。みんなが元気で今日も、巣にいるかな・・・と・・
心配してくれているのよ」
「ふうーーーーーん・・・・・お爺さんや お婆さんは優しいんだね」
青い空の向こうから・・風を切って・・・ヒュウ太郎兄ちゃんと・・・父さんが帰ってきました。
「さあ・・そろそろ・・・飛び立つ準備だぞ!明日の朝早く 南へ出発と、「燕の大海元締め」が・・・お決めになった。 ひゅう次郎もずいぶんと練習してきたしな・・・」
父さんは引き締まった瞳で僕を見ながら・・・嘴からミミズを渡してくれました。
「ひゅう次郎・・・もう・・大丈夫さ!とべるよ!!・・・兄ちゃんや・・・父さん 母さんも付いてるからな!」
僕よりちょっと大きい兄ちゃんは・・もう 自信満々です。 僕は・・初めての・・・海渡りなんで・・・心配です。
「父さん・・・どうして・・・南へ飛んでいくの?」
「そう・・ここも まもなく寒くなって雪が降るだろう。お前たちを 母さんが生んだり・・・育てたり・・・
ここは沼や 畑 エサも多くて安全なんだ。しかしな・・・・私たちも・・・これからの寒さには勝てない」
「だから・・・島沿いに・・・南に飛んで・・・来年の春に又 この巣に戻るのさ」
兄ちゃんが知ったかぶりで言いました。
朝が来ました・・・・風も強く・・・昨日よりもだいぶ寒い。 今日も 雑貨屋のお爺さん 御婆さんが見てくれてます。 仲間たちが数百群れています。いよいよです。
父さんの掛け声で・・・僕も 兄ちゃんに付いて青い空に飛びました! すごーーく気持ちのいい朝です。
「元気で 行っておいで!」おじいさんの叫び声が後ろに聞こえました。
それからの旅は・・・もおおおお・・・大変でした!
僕は初めての経験で・・・兄ちゃんが頼りでした。
日本を離れて 太平洋を南下 多分 沖縄 宮古島 台湾 海南島を経由したんだろうと・・・思います。
とても・・・疲れましたが・・・何とか・・・僕も・・・仲間や家族と飛びきることが・・・できました!!!
初めての旅のことは 長くなるので・・・又・・次の・・機会に・・・お話しますね!
着いた島はすごく大きな樹木やジャングルでした。兄ちゃんに聞いたら
「ここは・・・ボルネオ島さ。向こうに見える高い山が・・・キナバル山だよ!
マレーシアのサラワク州というところさ」
去年も兄ちゃんは来たようです!
この田舎の町は・・・とても・・・長岡に似ています。
仲間や家族と一緒に 僕は今 の前の電線の上です。
もうううううびっくりです!!!!
なんと・・・母さんに聞くと 仲間の数は 数万だそうです。
この街の人たちも・・・待っていて・・・親切にしてくれるそうです。
これから・・・おおきな木の上に今年の新しい家族のおうちを・・・作るそうです!
又・・・来春は元気で飛んで・・・・長岡のお爺さん・・・お婆さんににあいたいです!
そのときは・・・キット・・・僕には・・・弟が?? いや かわいい妹がいいかな・・・できると思います。
又 お会いしましょうね・・・・元気で暮らします!!
燕のひゅう次郎の旅日記
ペナンは今日も