『ミヤマ珈琲 練馬春日町店』

日曜日の午前中。
風はそれほど冷たくはなく
空は快晴で、陽は優しげに眩しく
外へ出歩くには絶好の日和。

実家の近くにある『ミヤマ珈琲』で
母親と待ち合わせをしていた。

先週から風邪の前兆なのかそれとも治りかけの
不調なのかよくわからないようなダルさが続いている。
来週に予定している健康診断の書類がなぜか実家の方に届けられてしまい
母親からの手渡しのために場所をこのミヤマ珈琲に設定していた。

待ち合わせ時間1時間程先に来て、PCを開いて
せっせと資料つくりをしながら
モーニングのトーストとゆで卵を食べ終わったところに
母親が来て私の前に座り、同じモーニングを注文。
わたしはその注文にすかさずトーストをもう一枚追加した。

スタッフの会釈で去ったあと
すぐに母親が泣きそうな顔をして
話しかけてきた。

「お兄ちゃん、これが出たのよ！これが！」

”これが”という指示代名詞を強調しながら
両腕を広げて、さらに両手首をまるで鳥の羽ばたきのように
曲げる母親がその小さい肩幅をしきりに動かしたジェスチャーで
何か訴えかけるような真剣な眼差しで語り始めた。

「何？これって？お化け？」
私も同じジェスチャーで聞き返す。
親子で朝から向かい合って形態模写。
何か不思議な光景だ。

「ヤモリが出たのよ！ヤモリ！」
「えっ！ヤモリ！？」

ヤモリはこうだろう？と言わんばかりに
私は両方の手のひらをパーにして
5本の指をしっかりと伸ばした格好を示して
母親のジェスチャの訂正をしたのだが、
そもそも母親にとっては真似事なんぞ
そんなことはどうでもいいと言った風な表情で
ヤモリが家の中で這っている光景を細かく説明してきたのだ。

つまり、私は母親の現時点の悩み事を
このミヤマ珈琲でモーニングをしながら、
ひたすら聞いていたのだった。

厚切りトーストは柔らかく
無塩バターを塗りたくった純な香ばしさを伴った
甘さはなかなか美味しく
ボリュームもあるのが満足。

そして珈琲は本家ルノアールの、あのさっぱりとした
アメリカン的な要素とは全く違って、なかなか渋みを伴った
濃厚さが心地がいい。



店内は席も広々としていてファミリー向けな印象は
こうした住宅地の駅前に似合っていて、実家の傍に
いいお店ができたんだなぁと羨ましくもあり

母親の悩みは数々あれど
元気な姿を見ることができて
安心したってのもある。

光が丘のIMAでの買い物に付き合い
「またね」とお互い言いながら
私は成増駅ゆきのバスに乗って母親とバイバイした。

また『ミヤマ珈琲』での
待ち合わせを約束をしながら。

ミヤマ珈琲 練馬春日町店 （カフェ / 地図：練馬春日町駅）
昼総合点★★★☆☆ 3.5