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Wi-Fi 6Eの6GHz帯は本当に有利? 無線LANで使う3つの周波数帯を詳しく比較。

〇 日本国内においてWi-Fiで利用できる周波数帯は2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯の3つで、使いやすい場所や用途に違いがある。

使用可能になった時期が2022年と最近の、Wi-Fi 6Eが対応している6GHz帯が条件はいちばんいいように思える。では、実際のところはどうだろうか。実測によるテストの結果も交えて、3つの周波数帯を詳しく比較して、それぞれのメリットとデメリットを見ていこう。

Wi-Fiルーターは初期設定で周波数帯ごとにSSIDを分けていて、PCやスマートフォンから接続先のSSIDを選ぶことで利用する周波数帯を決められることが多いようだ。例えばバッファローのWi-Fiルーターだと、「Buffalo-2G-~」が2.4GHz帯、「Buffalo-5G-~」が5GHz帯、「Buffalo-6G-~」が6GHz帯となる。製品によっては「Buffalo-G-~」が2.4GHz帯、「Buffalo-A-~」が5GH帯となる。

接続先のSSIDを選ぶことで、利用する周波数帯を決められる。この画面に表示されているSSIDはバッファローのWi-Fiルーター「WNR-5400XE6」のもの
画1、接続先のSSIDを選ぶことで、利用する周波数帯を決められる。この画面に表示されているSSIDはバッファローのWi-Fiルーター「WNR-5400XE6」のもの。

電波状況が良いのは6GHz帯だが対応機器が少ない。

現在、3つの周波数帯の中で最も電波状況が良いのは6GHz帯である。6GHz帯は、ISMバンド(産業・科学・医療分野で汎用的に使うために割り当てられた周波数帯を指す)である2.4GHz帯のように、他の多くの用途と電波を共用するわけではない。また利用できるチャンネル数は、2.4GHz帯や5GHz帯よりも多い。

また6GHz帯を利用できるのは、Wi-Fi 6E対応かつ実際に6GHz帯を使用できる機器に限られる。6GHz帯は日本国内では認可されて間もないため、最新製品の一部のみで機種数が少ない。利用者は現時点でかなり少ないと考えてよく、周囲のWi-Fiネットワークと電波が干渉する可能性もほぼないと言えるだろう。

ただし6GHz帯にも欠点はある。2.4GHz帯や5GHz帯と比べて波長が短いため、障害物に弱く電波が遠くに飛びにくい性質を持つことだ。

またWi-Fi 6E対応のルーターやPC、スマホで6GHz帯を使うには、6GHz帯での技術基準適合証明等を受ける必要がある。そのためWi-Fi 6E対応をうたいつつも2.4GHz帯と5GHz帯でしか技術基準適合証明等を受けていないことから、Wi-Fi 6E対応をうたいつつも日本国内で6GHz帯を使えないPCやスマホもある。

混雑具合は6GHz帯より上、2.4GHz帯より下の5GHz帯。

5GHz帯もISMバンドではないため、2.4GHz帯よりは電波が混雑しにくい。また6GHz帯よりもだいぶ早く使えるようになったため、対応している機器はかなり多い。例えばWi-Fi 5は5GHz帯専用で、Wi-Fi 4は2.4GHz帯と5GHz帯に対応している規格である。

ただし6GHz帯と比べると、利用できるチャンネル数は少ない。また前述した「対応機器が多い」の裏返しになるが、機器が普及した今は利用者が多く、周囲のWi-Fiネットワークと電波が干渉しやすい。また日本国内の場合、W52およびW53と呼ばれる一部の周波数は、気象レーダー波や航空機レーダーの周波数と干渉するため屋外で利用できない制限がある(W52は条件付きで屋外利用可能だが、条件はかなり厳しい)。

また日本国内で使える5GHz帯のWi-Fi機器には、DFS(Dynamic Frequency Selection)と呼ぶレーダー波の検知機能が義務付けられている。DFSは、Wi-Fiルーターの電源投入やチャンネル切り替えのときに、1分間は周囲の電波状況を把握し、レーダー波が無いことを確認してからWi-Fiの電波を送信する仕組みである。この機能があるため、Wi-Fiルーターは電源を投入したりチャンネルを切り替えたりしたときに、すぐにつながらないという欠点もある。

遠い場所でも電波状況は良いが、混雑し遅くなりがちな2.4GHz帯。

2.4GHz帯は波長が長いため、3つの周波数帯の中では障害物の影響が最も少なく、遠い場所でも電波状況が良いという性質を持つ。また2.4GHz帯は初期の無線LAN規格であるIEEE 802.11が出た当初から使われており、古い機器でも接続可能である。

ただし2.4GHz帯は、チャンネルが少なく十分な帯域幅を確保できない。5GHz帯や6GHz帯が最大160MHzの帯域幅を確保できるのに対し、2.4GHz帯は最大で40MHzしか確保できない。そのため低速になりがちだ。

また2.4GHz帯はISMバンドであり、Wi-Fiだけでなく電子レンジやIHクッキングヒーター、各種リモコンといった家電、無線操縦装置やトランシーバーといった玩具など、いろいろな用途で利用されている。PC周りでもBluetooth、無線キーボードやマウスなど、2.4GHz帯の電波を使っている製品は多いため、他用途との電波干渉は免れない。

6GHz帯を使うにはWi-Fi 6Eで6GHz帯を利用できるWi-FiルーターとPC、スマホが必要になる。写真はWi-Fi 6E対応のバッファローのWNR-5400XE6で、この製品は2.4GHz帯・5GHz帯・6GHz帯のいずれも利用可能
画2、6GHz帯を使うにはWi-Fi 6Eで6GHz帯を利用できるWi-FiルーターとPC、スマホが必要になる。写真はWi-Fi 6E対応のバッファローのWNR-5400XE6で、この製品は2.4GHz帯・5GHz帯・6GHz帯のいずれも利用可能。

どの周波数帯が良いのかテストしてみた。

3つの周波数帯の条件を、同一環境で実際に測定テストを実施して比較した。ここでは近距離(2m)および遠距離(30m)の2カ所で測定している。

近距離で一番高速だったのは6GHz帯で、5GHz帯は僅かに遅かったが差はほとんどない。2.4GHz帯は、規格上の通信速度が遅いためか、実際の速度もかなり遅い。6GHz帯や5GHz帯の3分の1~4分の1程度しか速度が出ていない。

2mの近距離で、Webサーバー上に置いたベンチマークアプリを別のPCのWebブラウザーから開き、速度を計測した。6GHz帯はもっとも高速で5GHz帯は若干劣る。2.4GHz帯は低速だった
画3、2mの近距離で、Webサーバー上に置いたベンチマークアプリを別のPCのWebブラウザーから開き、速度を計測した。6GHz帯はもっとも高速で5GHz帯は若干劣る。2.4GHz帯は低速だった。

30mの遠距離ではどうだろうか。今回実施したテストでは、いずれの周波数帯も2mの場合と比べて速度は落ち込んでいた。ベンチマーク上で一番速度が出ていたのは6GHz帯だったが速度の落ち込みは激しく、タスクバーの通知領域にある電波状況を示すアイコンは3段階下がっていた。コマンドプロンプトでPINGという通信テストをするためのコマンドを飛ばしてみると、タイムアウトになり一部途切れることがあったため通信は不安定だった。

5GHz帯も速度の落ち込みは激しく、通知領域のアイコンも2段階落ちていた。ただしPINGを送ってみたところ、通信が途切れるようなことはなかった。

2.4GHz帯は3つの中で最も速度が落ちていない。ただもともと低速だったためか、ベンチマーク結果は5GHz帯や6GHz帯より遅い。通知領域のアイコンは1段階落ちただけで、ほか2つの周波数帯よりも電波状況は良かった。PINGを送信しても途切れることがなかった。

遠方(30m)の速度を比較した。6GHz帯が最も速度が出ているが、通知領域のアイコンを見ると接続状況は悪く、PINGは断続的に途切れていた。5GHz帯も速度の落ち込みが激しかったものの、安定して通信できていた。2.4GHz帯も速度が落ち込むが、3つの周波数帯の中では最も落ち込みの割合が少なかった
画4、遠方(30m)の速度を比較した。6GHz帯が最も速度が出ているが、通知領域のアイコンを見ると接続状況は悪く、PINGは断続的に途切れていた。5GHz帯も速度の落ち込みが激しかったものの、安定して通信できていた。2.4GHz帯も速度が落ち込むが、3つの周波数帯の中では最も落ち込みの割合が少なかった。

今回のテスト結果として、速度だけで比較すると6GHz帯が勝っていた。近距離では安定もしており、空いている可能性も高いと言えるので、5m以内で使う状況であれば積極的にWi-Fi 6Eで6GHz帯も使用可能な製品を選びたい。ただし6GHz帯の遠方での電波状況や接続性の悪さを考慮すると、少し離れて使う可能性もあるのなら5GHz帯が使い勝手も良さそうだ。2.4GHz帯はもともとの速度が遅いが、遠方での電波状態はかなり良い。遠方での接続性を重視するなら2.4GHz帯を使うべきだろう。

周波数帯を選ぶのが面倒で、Wi-Fiルーターが「バンドステアリング」という機能を搭載しているのであれば、これを使うことを検討しよう。バンドステアリングは、電波状況に応じて利用する周波数帯を自動で切り替えてくれる機能だ。Wi-Fiルーターによっては各周波数帯のSSIDを一つにまとめられるため、接続設定も楽になる。


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