ヤング＠ハート

スポーツイベントや山登りに出かけると、まだまだ元気なお年寄りがたくさんいてびっくりさせられることが多い。そんな元気なお年寄りが若者と競い合っている姿は、見ていてあまり気持ちのいいものではない。「オレはまだまだ若いんだ」まるで成金が高級外車を乗り回すように、＜（年歳の割には）健康であること＞を周囲に見せびらかしたがるご老人たちにはどうしても魅力を感じないのである。

（なんだか書いていることが矛盾しているようで申し訳ないのですが）そんな老人にはどちらかというと批判的な私にさえ、コーラスに励むこの映画に登場する老人たちの姿には思わず涙腺を刺激させられた。コンサート開催を目指して、難しいヴィンテージロックやソウルを練習する風景が中心に描かれているのだが、その素人老人たちの歌はお世辞にも上手いとはいえない。普段はオペラやクラシックを愛聴している人たちにジェームス・ブラウンなどハナッから無理だと思ったのだが、鬼のように厳しい指導者のもと楽曲を自分のものにしようとする老人たちの懸命な姿に、いつしか引き込まれてしまったのである。

何せ平均年齢８０歳、体のあちこちにはガタが来ていて、杖を着くなんてのは当り前、鼻には酸素吸入用チューブ、立っているのもやっとな感じのヨボヨボな姿が、なんともユーモラスでしかも感動的なのである。途中挿入されるＭＴＶ風のＰＶも非常にうまく撮られていて理屈なしに楽しめる。そして、練習の最中大切な仲間を喪った悲しみを歌にこめた、（医者に告げられた）余命をとうに過ぎた鼻チューブ老人が独唱する「フィックス・ユー（コールドプレイ）」は必聴。実人生と（あまりにも重なる）その歌詞に、観客の感涙度はＭＡＸに達することだろう。映画を見終わった後、思わずサントラＣＤ（もちろんオリジナル・バージョンで？）を買いたくなってしまう１本である。

When you try your best but you don't succeed
When you get what you want but not what you need
When you feel so tired but you can't sleep
Stuck in reverse.

And the tears come streaming down your face
When you lose something you can't replace
When you love someone but it goes to waste
Could it be worse?

Lights will guide you home
And ignite your bones
And I will try to fix you

Fix You 歌詞（抜粋）/Coldplay

ヤング＠ハート
監督　スティーヴン・ウォーカー（２００７年）
〔オススメ度　〕