ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

まぼろしの市街戦

2023年03月13日 | なつかシネマ篇

反戦をファンタジックに描いたカルトムービー。第一次世界大戦末期、ドイツ占領下にあった北フランスの城壁都市から、ドイツ駐留軍が撤退を開始。スコットランド軍の入場にあわせて、街のどこかに大量の爆弾を仕込んだドイツ軍。その極秘情報が漏れたため、市民が街から姿を消してしまう。爆弾解除の指令をうけたブランピックは一人捜査を開始、それに感づいたドイツ軍の追跡を逃れ精神病棟に逃げ込んだブランピックだったが......

人っ子一人いなくなった街に繰り出した患者たちは、元軍人や司教に伯爵、床屋や娼婦にサーカス団の綱渡り少女。これ幸いと誰もいなくなった店舗や娼館、聖堂に忍び込み、娑婆の生活を束の間エンジョイしだすのである。そんな患者たちに始めはイラついていたブランピックも、いつしか心を許し打ち解けていくのである。歌い、騒ぎ、踊ることこそ人生の醍醐味とばかり、迫り来る爆発のタイムリミットもなんのその。街に入場してきたスコットランド軍も合流し、ブランピックのハートのキング就任を盛大に祝うのであった。

後先短い人生のことばかり考えてせかせか生きるよりも、例え一瞬であってもそれが永遠に感じられるほど人生をとことん楽しむ。そんなフランス人のラテン気質が詩情タップリに綴られているのである。今が戦争中なんてことを微塵も感じさせない狂人たちの余裕綽々ぶりが、映画を見ていてとても心地よく感じられる1本なのだ。それとは対照的に、ドイツ軍やスコットランド軍の軍人たちが非常に滑稽に描かれているのは、本当に狂っているのはどちら側なのかを観客に考えさせたいがための演出であろう。

就任祝いの花火を爆破成功と勘違いしたドイツ軍が街に再入場、次の戦地に向かおうとしたスコットランド軍と鉢合わせ、両軍とも全滅してしまう。それをみた患者たちは祭りの終わりを察知し、早々と精神病院に閉じ籠り狂人のふりを続けるのだ。「外の世界は危険な動物がうようよしている」サーカスの檻から逃走した動物よろしく、街中でライフルを平気でぶっぱなす危険な動物(人間)たちに幻滅した患者たちは、どこよりも安全な場所をよくご存じなのだ。これを賢人と言わずしてなんと呼ぼうか。アルジェリア戦線の地獄を知るド・ブロカならではの演出が光る傑作コメディである。

まぼろしの市街戦
監督 フィリップ・ド・ブロカ(1966年)
オススメ度[]


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