
『バンテージ・ポイント』のリバース編集をいつか誰かが真似をするにちがいないと思っていたら、まさか巨匠シドニー・ルメットがそれをやるとは・・・。映画製作年を確認するまで勝手に勘違いして意気消沈していたのだが、実は本作品より後に『バンテージ・・・』が撮られていることが判明し、ほっと胸をなでおろした次第である。
不動産会社の役員におさまっているアンディ(フィリップ・シーモア・ホフマン)と妻&娘と別居中のハンク(イーサン・ホーク)の兄弟。“金”目的にある犯行を企てたのだが、運命の歯車は思わぬ方向へ転がりはじめ、次第に家族の確執があきらかになっていくというお話。
久々に高評価を得たルメットの最新作は、アンディ、ハンク、そして父親チャールズ(アルバート・フィニー)の行動をリアルタイムから巻き戻すことによって、シーンに「実はこうだった」という逆伏線の意味合いを持たせている編集が特徴だ。例えば、シーモアにしてはちょっとヤセすぎかと思った目だし帽男の正体が、時間を遡ることによって観客に明かされたりするのである。
演技達者の3人の個人的能力によって、登場人物の焦りや怒り、悲しみといった感情がそれなりに画面から伝わってくるものの、魂の奥底に響いてくるようなドシンとした重さは不思議と感じない。父親チャーリーが最後にとった行動などもあまりにも短絡すぎて、素直には感情移入できかねるのだ。
心理サスペンスとしての編集には長けていたが、逆にヒューマンな内面を描くにあたっては妨げとなってしまった・・・そんな印象が残る1本である。
その土曜日、7時58分
監督 シドニー・ルメット(2008年)
〔オススメ度

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不動産会社の役員におさまっているアンディ(フィリップ・シーモア・ホフマン)と妻&娘と別居中のハンク(イーサン・ホーク)の兄弟。“金”目的にある犯行を企てたのだが、運命の歯車は思わぬ方向へ転がりはじめ、次第に家族の確執があきらかになっていくというお話。
久々に高評価を得たルメットの最新作は、アンディ、ハンク、そして父親チャールズ(アルバート・フィニー)の行動をリアルタイムから巻き戻すことによって、シーンに「実はこうだった」という逆伏線の意味合いを持たせている編集が特徴だ。例えば、シーモアにしてはちょっとヤセすぎかと思った目だし帽男の正体が、時間を遡ることによって観客に明かされたりするのである。
演技達者の3人の個人的能力によって、登場人物の焦りや怒り、悲しみといった感情がそれなりに画面から伝わってくるものの、魂の奥底に響いてくるようなドシンとした重さは不思議と感じない。父親チャーリーが最後にとった行動などもあまりにも短絡すぎて、素直には感情移入できかねるのだ。
心理サスペンスとしての編集には長けていたが、逆にヒューマンな内面を描くにあたっては妨げとなってしまった・・・そんな印象が残る1本である。
その土曜日、7時58分
監督 シドニー・ルメット(2008年)
〔オススメ度


