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雑感録

これもビートルズだ! その14『PAST MASTERS』

 
PAST MASTERS(1988年)

ビートルズが原則としてシングルとアルバムの重複を避けてきたのはこれまで何度も述べてきた通り。
しかし、後発のビートルズファンにとってはシングルやオリジナルEPは入手しにくかろうと、オリジナルアルバムが世界統一フォーマットでCD化された翌年に、『黒盤』(vol.1)と『白盤』(vol.2)の2つに分けて発売された、親切なアルバム未収録曲集である。
今回のリマスターでは、これら2枚をセットにして、黒ジャケットのみの『PAST MASTERS』に生まれ変わっている(白ジャケットは『MONO MASTRES』に使われた)。
それにしても、『ABBEY ROAD』まで順にひと通り聴き直したあとでこれを聴くと、なんだかタイムスリップしたような感覚に襲われるなあ(『ABBEY ROAD』とて40年前にタイムスリップしてるようなものなのだが)。

Disc 1
01 Love Me Do(1962年)
前述の通り、シングル盤から起こしたというリンゴバージョン。ドラム以外にも違いはたくさんある(別テイクなので当然)が、そこまで細かくチェックする曲でもあるまい。

02 From Me to You(1963年)
あれ? 冒頭のコーラスにハーモニカが入っていない。と思ったら、これがステレオとモノラルの大きな違いだった。ってことは、今までモノを聴いてたんだ。そんなことも意識してなかったよ。また、ボーカルはその部分だけセンターから聴こえるが、あとは例によって右から聴こえる。

03 Thank You Girl(1963年)
02のB面曲。あれ? こんなとこにもハーモニカ入ってたっけ?と思ったら、以下同文。

04 She Loves You(1963年)
ビートルズの人気を確固たるものにした曲で、ウイングスの『Mull of Kintyre』に記録を塗り替えられるまで、イギリスのシングル売上ナンバーワンを誇った曲。なぜだかよく分からないが、モノで収録してある。

05 I'll Get You(1963年)
04のB面曲。A面同様モノで収録。まあ。こちらはいかにもなB面。

06 I Want to Hold Your Hand(1963年)
事実上のアメリカデビューシングル。たった1年足らずでここまで来たか。リマスターで聴いてみると、ギターが限りなく生音っぽい。しかしまあ、何度聴いても不思議なギターだ。

07 This Boy(1963年)
06のB面。確か昔は『こいつ』というとんでもない邦題があって、原題には(Ringo's Theme)というのがついてたような気がするのだが…。

08 Komm, Gib Mir Deine Hand(1964年)
カーペンターズもクィーンもポリスも日本語で歌わされた。その先駆けか、ビートルズがドイツ語で歌わされたバージョン。しかも、レコーディングはパリ。国際色豊かなのは分かるが、別にこのアルバムに収録する必要はなかったのでは? 僕はいつも飛ばしてます。

09 Sie Liebt Dich(1964年)
これまたドイツ語。これくらいのドイツ語なら俺にも分かると思っていたが'Liebe'ではなかったんだ(活用が分かってない?)。なお、これらドイツ語レコーディングがちゃっちゃと済んでしまったので、余った時間で『Can't Buy Me Love』まで作っちゃったというのは有名な話。

10 Long Tall Sally(1964年)
カバーばっかしのオリジナルEP『LONG TALL SALLY』のタイトルナンバー。オリジナルはリトル・リチャード。『Twist and Shout』『Rock and Roll Music』のポール版か。ポールの声域には驚くばかりだが、ポールの醍醐味ロックはやはりオリジナルでなくちゃ。

11 I Call Your Name(1964年)
同じく『LONG TALL SALLY』収録。こちらはジョンが「クレイマーがダコタハウスに」とかいうバンドに提供した曲のカバーなので、セルフカバーといえばそういうことになるのかな。

12 Slow Down(1964年)
同前。オリジナルはラリー・ウィリアムス(知らん)。カバーならもうちょっと練りそうなものだが、退屈なイントロ。ブレイク明けのリンゴのドラムも笑える。

13 Matchbox(1964年)
同前。お馴染みカールおじさんのカバー。『A HARD DAY'S NIGHT』でリンゴのボーカルを入れなかったジョンが、お詫びに1曲歌わせたもの。

14 I Feel Fine(1964年)
「ギョワ~ン」のフィードバックをレコーディングに使ったとかいうことで知られる曲。プロモーション・フィルムが作られた最古の曲かもしれない(“最初の曲かもしれない”のは後述)

15 She's A Woman(1964年)
14のB面。イントロのギターが 裏から始まるので、ドラムとベースが入ったときに「アレっ?」とこんがらがる。ポールの新分野開拓曲だが、エンドレス系でいまいち盛り上がりに欠ける。それにしても、ビートルズは1964年にいったい何曲出してるんだ?

16 Bad Boy(1965年)
なんでも米Capitolが強引な企画アルバムを作るのに曲数が足らないからと強引に録音させた曲。これもラリー・ウィリアムスのカバー。これまでの例から言うと『悪いやつ』とでも邦題をつけそうなものだが…。

17 Yes It Is(1965年)
HELP!』に収録された『Ticket to Ride』のB面で、得意の3声コーラス炸裂。同時期の『I Need You』『Wait』同様、ジョージがボリューム・ペダルのギターを駆使している。

18 I'm Down(1965年)
で、これがポールのオリジナル絶叫ロック第一弾。とはいえ、まだまだ習作の域を出るものではない。『Help!』のB面という位置づけもやむなし。前から変だなと思ってたのだが、「だあ~ん」のコーラスは、ジョンの半拍遅れでジョージ(?)がついてきてたんだ。ライヴフィルムなんかで見ると、ジョンがオルガンをヒジで弾いたりしてはしゃぎまくってて楽しそう。

Disc 2
19 Day Tripper(1965年)
ポールの『Drive My Car』に触発されてジョンが作ったそうだが、意外とストレートな、リフ一発の曲。ジョンも作っては見たものの音が高くて久々のポールとの早変わりを披露。20と両A面での発売だが、20の方が真のA面だと思う。テレビ出演にも飽きてきたビートルズは、このシングル発売に向けて初のプロモ・フィルムを制作。エド・サリバンなんかが「ビートルズから新曲のフィルムが届きました!」とか言ってテレビで流していたらしい。あわせていっしょに作られたフィルムが『I Feel Fine』『Help!』『Ticket to Ride』。

20 We Can Work It Out(1965年)
ポールとジョンの合作。よく楽天的なポールと悲観的なジョンの対比がどうしたこうした言われる曲。3拍子を入れたのはジョージのアイデアだとか。そのジョージ、演奏ではタンバリンを担当したらしい。

21 Paperback Writer(1966年)
ブライアン・ウィルソンの影響を受けたポールが、俄然ベースサウンドにこだわったシングル。コーラスもビーチ・ボーイズっぽいって言えばそういうことになるのかな。とにかく他の人には書けそうにない、ポール独特の曲。

22 Rain(1966年)
21のB面。ポールのベースとリンゴのドラムが炸裂。ADTやテープの逆行回転などの当時のスタジオテクニックも駆使し、来るべき『Revolver』の予告編のごとし。A面でもいいような気がするが、当時の一般リスナーには刺激が強すぎたか?

23 Lady Madonna(1968年)
ポール得意のものまね王決定戦で、これはプレスリーのものまねなんだとか。左右から別のドラムが聴こえるが、ブギー感を出すために意図的に分けたのか? 2回目のコーラスが妙に引っ込んでるのも不思議。

24 The Inner Light(1968年)
23のB面。B面ながら、インディアナ・ジョージ初のシングル曲。ポールによると、ジョージは歌うのをためらっていたが、ポールが励ましたとか。そう言った手前かどうかは知らないが、ジョンとともにほんの1フレーズだけコーラスでサポートしている。

25 Hey Jude(1968年)
康樹先生の言うところの笑っちゃうほどの名作。なにせシングルに入りきれるかどうかの7分以上。そのうち半分以上の約4分がナナナコーラス。このコーラスでのポールのアドリブボーカルを全部いっしょに歌えないとファンではないと言われている(このアドリブ、コーラスの頭から入ってる形跡が音漏れレベルで聴こえるが、さすがにそこまではマネできない)。それにしても、リマスターのせいか非ぬか、ピアノが強調されてアドリブが引っ込んだような気がするのだが…。伝説の「デンニュビギイン」の「デン」の裏にかすかに入ってるという「xxxx hell!」のポールのひとりごと、今回初めてじっくり聴いてみたが、確かに聴こえますね。

26 Revolution(1968年)
25のB面。この曲の3バージョンの話は前述の通りだが、このシングルについての解説は『Hey Jude』もあわせて康樹先生の『ビートルズを笑え』に勝るものは絶対にあり得ないので、ぜひご一読を。ちなみにこのアップテンポのバージョン、ジョンはしぶしぶだったらしいが(だからイントロで「あああああ~っ、もう!」と叫んだのだが、「もう」は編集でけされてしまったのである)、それを要求したポールとジョージ、プロモで見るとなんとも楽しそうにやっている。リンゴのドラムも妙な迫力がある。ジョンのボーカルは部分的なダブルトラックが面白いが、揃ってなかったり歌詞が違うんじゃないかと思うところもあって、ADTを使ったのではないのかな。

27 Get Back(1969年)
前述の通り、クレジットは「The Beatles(With Billy Preston)」。マーティン先生のプロデュースだと思うけど、なんか異様にエコーが深いんだよなあ。細かいことはこちらにゲット・バック!なんちゃって(そんなに細かくないけど)。

28 Don't Let Me Down(1969年)
27のB面で、ジョンがヨーコに向けて歌い、ポールがジョンに向けてコーラスを叫んだ曲。
ジョン「がっかりさせないでくれ、ヨーコ」
ポール「がっかりさせないでくれ、ジョン」
ジョン「この愛に過去はないんだよ」
ポール「僕らには素敵な過去があるじゃないかあ!」
ルーフトップでは『Get Back』とともに3回演奏された。康樹先生は「しつこい」とおっしゃっていたが、やはりルーフトップの目的はコンサートではなく、レコーディングだったということだろう。レコーディングなら3テイクぐらい録っても不思議ではない。ビリー・プレストン大活躍で、エンディングでは前面に押し出されている。また、曲の最後にジョン(?)が「ふ~っ」とため息をついているのが聴こえる。なお、前述の通り『LET IT BE』には収録されなかったが、ポールが気をつかったのかどうか、『NAKED』には収録されている。

29 The Ballad of John and Yoko(1969年)
たぶんジョージとリンゴが不在で、ジョンとポールだけでレコーディング。この時期に二人で、である。レコーディング中の和気あいあいとした模様はご存知の通り。
ジョン「少しテンポを上げてくれ、リンゴ」
ポール「OK! ジョージ」
ジョン「もうちょっと滑らかに叩けんのか、リンゴ!」
ポール「なんだと! そっちこそ少しは他の楽器手伝えよ、ジョージ!」
なんてくだらない話は置いといて、「君とだったらどこでだってやるさ」ではないが、この赤面しそうなタイトル(内容も)の曲も、ジョンから声をかけてもらえたのがよほど嬉しかったんだろう、ポールも「君とだったら何だってやるさ」とばかりに喜々としてつきあっている。キモは何と言ってもポールのハモリ。レコーディングは1日で終了。この二人、わだかまりを捨てれば、まだまだやれたのだ。

30 Old Brown Shoe(1969年)
29のB面。ジョンは内容的に29を早くリリースしたがっていたが、そこにデモを制作済みののジョージの曲があった。
ジョン「何かB面にいい曲ないか~?」
ジョージ「ふっふっふ。あるよ~ん」
ジョン「インドならいら~ん」
ジョージ「ふっふっふ。違うよ~ん」
ノリがすべてのシンプルな曲だが、かくしてジョージ2作目のシングル曲が誕生したのである。このシングルは、ジョンの望み通りセールスも何も考えずに『Get Back』のわずか1カ月後にリリースされた。

31 Across The Universe(1969年)
パンダでお馴染み(?)WWFのチャリティ・アルバム『NO ONE'S GONNA CHANGE OUR WORLD』(もちろんタイトルはこの曲から)に収録されたバードバージョン。

32 Let It Be(1970年)
こちらもあらためて聴くと、異様にエコーが深い。まあ、細かいことはこちらにあるがままに(そんなに細かくないけど)。

33 You Know My Name(Look Up the Number)(1970年)
32のB面曲。これもビートルズの真骨頂。聴いたことないので分からないが、ファンクラブ向けのクリスマスレコードなんかではこんなおふざけもやってたのではないかな? おふざけとはいっても、サックス・プレーヤーとしてストーンズのブライアン・ジョーンズを起用するほど気合いが入っている(てか、ジョーンズは単にスタジオに遊びにきただけで、ジョンにお前も入れと言われて「そんじゃオレはサックスでも吹いちゃるぜ」と調子に乗っただけだと思うけど)。レコーディングはかの『All You Need Is Love』の全世界公開レコーディング(こちらにはミックとキースが来ている)のちょい前だが、さすがにケッサク過ぎて置きどころがなかったのか、最後の最後のB面でリリースされることとなった。僕にとっては、初めてビートルズの曲をエアチェック(分からない人はお父さんに聞こう)した記念すべき曲でもある。

つづく
CONTENTS

パスト・マスターズ vol.1&2
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