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 創土社から刊行予定のゲームブック、『ザ・タワー・オブ・ドルアーガ 悪魔に魅せられし者』の発売延期記念に、勁文社から刊行された、北殿光徳・文、スタジオ・ハード・編のゲームブック『ドルアーガの塔 外伝』をプレイ開始。

 これ以降、「ドルアーガの塔 外伝」のネタバレを含んでいます。ご注意ください。



 あたし、レイン・デシンセイ。国を捨てて、旅から旅への気ままな生活を送っている、20歳のか弱い女の子、兼、冒険者。
 祖国に忍び寄る、悪魔ドルアーガの脅威。祖国のため、そしてあたしが密かに想いを寄せいていた王子ギルのため、あたしはドルアーガの塔の秘密を探ろうと、ドルアガノンの内部へと侵入したのだった。
 しかしこの塔の内部は奇想天外。上を下への大騒ぎの末、あたしは完全に道に迷ってしまった。
 それでもめげずに強敵シルバードラゴンをなぎ倒したあたし。ドルアーガの秘密を求め、どんどん塔を上っていくのでありました。



<冒険記録紙>

基本設定
体力 4
剣技 7
魔術 3

バトルポイント
A:5  B:1  C:0  D:4  E:6
F:9  G:8  H:2  I:7  J:3

宝物リスト
白い剣、キャンドル、赤い薬、本



 階段を上りきり、扉を開ける。通路はその地点から、北と西の2方向へと伸びている。
 あたしは耳を澄まして周囲を探る。どうやらこの周囲に敵の気配はないようだ。
 一応地図を見てみるが、相変わらず現在地の見当はつかない。あたしは無造作に地図をザックに放り込むと、通路を西へと向った。

 少し行ったところで、通路を奇妙なものが塞いでいた。上部から不気味な触手を何本も生やしている、ぶよぶよとしたかたまり。巨大イソギンチャクといった感じの化け物、ローパーだ。
 そいつは巨体をうねらせながら、少しずつこちらに近づいてくる。
 気持ち悪い。
 あたしも冒険者なんてやっているくらいだから、血みどろのぐちゃぐちゃしたものへの耐性はある。しかしこの化け物はとにかく近くにいて欲しくない、怖いと言うよりも気持ち悪いといった感じの存在だ。殴れと言われれば殴らないでもないけど、できることならば触らないでおきたいところだ。
 あたしはそいつとまとに戦う気が失せてしまった。幸いにして、ローパーと通路の間には、かろうじてあたしが通れるくらいの隙間はある。なんとか穏便にやり過ごそうと、その隙間を慎重にすり抜けようとした。

 ゆっくり、ゆっくり、あたしは身体を横にして歩く。どうやらローパーもあたしを認識しているわけではないようだ。
 しかしそのとき、あたしはつま先でうっかりローパーの足元を突付いてしまったのだ。
 まずい。
 あたしがそう思うよりも早く、ローパーの触手があたしの腕に絡み付いてきた。あたしも必死で振りほどこうとするが、ローパーは見た目以上に強力な力であたしを捕らえて離さない。
 ローパーはその触手からあたしの力をどんどん吸い取っていく。時間が経つごとに、あたしは抵抗することすらできなくなっていく。
 このままだとやばい。
 手も足もでないまま、あたしの意識がもうろうとしてくる。
 しかしそのとき、不意にローパーは絡みついた触手を解き、あたしを開放した。あたしは力なく、その場に崩れ落ちた。
 なんとか首を起こしたあたしの目に、いずこかへと去っていくローパーの後姿が見えた。満腹にでもなったのだろうか。
 剣を杖代わりにして、なんとか身体を起こす。九死に一生を得たあたしは、ふらつきながら通路を先へと進んだ。



 通路は東、西、南の3方向に分かれていた。あたしは東へと向かう。
 すると、あたしの行く手を大きな人影が現れた。その姿は人のようでもあるが、その全身はごつい緑色の鱗に覆われている。
 人とトカゲの混じり合った化け物、リザードマンだ。リザードマンは全身に殺気を纏いながら、やる気満々であたしに近寄ってくる。
 先ほどローパーに力を絞り尽くされた後だけに、あたしの背に冷たいものが走る。けして侮れる相手でないことは、対峙していればわかる。
 しかし戦いの場に於いては、敵に背を向けるというのもまた危険な行為だ。ここは死中に活を求めるしかない。
 あたしは覚悟を決めて、リザードマンに立ち向かった。

 ボカ、スカ。

 そのリザードマンは左手に剣を持つ、いわゆるサウスポースタイルだった。相手の剣は右から襲い掛かってくるため、盾が役に立たないのだ。左利きの相手との戦闘には慣れていないため、非常にぎこちない戦いを強いられることになってしまった。
 ええい、面倒くさい。
 どうせ役に立たないのだから、あたしは思い切って盾を捨て、両手で剣を構えた。そして全身全霊の力を込めて、真正面から振り下ろした。
 あたしの一撃を防ごうとしたリザードマンの剣もろとも、あたしはリザードマンの脳天を叩き割った。



 通路の角で少し休憩してから、あたしは再び通路を進んでいった。
 しばらく行ったところで、あたしは宝箱を見つけた。しかもなんと、一度に大小2つの宝箱を見つけたのだ。
 あたしは喜び勇んで箱を開けようとしたのだが、しかし箱のそばに何かが書かれた札が置いてあった。拾い上げてみると、なにやら注意書きが書かれていた。

「どちらか一つを手にするべし。さもなくば災いあらん」

 どちらか一つか。この注意書きを無視するのは賢明ではないだろう。
 うーん、どうしよう。
 寓話などでは、小さい箱にこそ良いものが入っていると相場は決まっているものだ。しかし、端的に言って、あたしは大きい方が欲しい。中身がたくさん入っていそうだからだ。
 考えること数分間。信心深いあたしは先人の知恵を採用して、小さな宝箱を開けた。
 その箱の中には、青く輝く鎧と篭手、そして兜が入っていた。イシターには悪いが、今装着している金の鎧よりもずっと良いもののように見える。単に鎧としてもそうだけれど、何よりもその鎧の発する光と、帯びている魔力が尋常ではない。
 あたしは金の鎧を脱ぐと、その青い鎧を装着した。すると、全身に力がみなぎってくるような気がする。一つ、二つ、素振りをしてみるが、剣を振るう腕も軽い。防御力だけではなく、肉体的にもあたしをバックアップしてくれるようだ。
 大きな箱の中身も気になるところだが、あたしはこの青い鎧に満足して、その場を後にした。



 先へ進もう下そのとき、突然脇道からローパーが現れた。
 くそっ!
 ローパーの触手があたしを捕らえようと迫ってくる。あたしは不意を突かれ、対処が遅れてしまった。
 しかし、ローパーの触手はあたしの腕に触れたとたん、びりびりと痙攣して縮んでしまった。そしてそれにひるみ、ローパーはまた出てきた脇道へと、すごすごと逃げ去ってしまった。
 あたしはローパーにつかまれた腕を見る。そうか、この青い鎧の魔力が、ローパーの触手を寄せ付けなかったんだ。
 鎧のおかげで、あたしは難を逃れることができた。この青い鎧、本当に大した拾い物だったようだ。



 さらに通路を進んでいくと、前方からローブを纏った影が現れた。その影はランプを手にしており、その光によって不気味な陰影が浮かび上がっている。
 魔術師だろうか。いや、それにしても少し様子が変だ。そいつはまるですべるようにこちらに近づいてくる。
 よく足元を見てみると、なんとそいつには足がなく、宙に浮いているではないか。こいつはきっと、魔術師の亡霊、ウィザード・ゴーストに違いない。
 切った張ったならともかく、魔術師系はどうも苦手だ。
 あたしはまともに相手をする気にならず、その場から逃げようとした。
 しかし背を向けて反対方向へ向ったあたしの目の前に、そいつはテレポートし、先回りしてきたのだ。
 逃げられない。
 あたしの頬を冷や汗が伝う。
 そんなあたしの心情を知ってか知らずか、ウィザード・ゴーストはなにやら呪文を唱え、あたしに向かって火炎球を投げつけてきた。
 まずい。
 あたしはそれを防ごうと両腕で身体をカバーした。

 ギャー!

 通路に響き渡る悲鳴をあげたのは、あたしではなくウィザード・ゴーストの方だった。青い鎧が呪文を跳ね返し、火炎球はウィザード・ゴースト自身を焼いたのだ。
 ウィザード・ゴーストはいずこかへと消え去ってしまった。できれば完全に成仏してくれればいいのだが。
 ローパーのときにも助けられたが、あたしは改めて青い鎧の威力を思い知らされた。
 これさえあればどんな敵でも……。そう油断してしまいがちになるのを戒めながら、あたしは先を急いだ。
 


 通路の向こうから、青い炎を発する飛行体がやってきた。ウィル・オー・ウィスプだ。
 またこういうタイプか……。物理的なやりとりで片がつかない相手は苦手なんだよなぁ……。
 一瞬、この青い鎧があれば勝てるかもしれないという思いが脳裏をよぎる。しかし、鎧を過信しすぎるのも危険だ。確かに凄い力を持った鎧ではあるが、いざというとき救いになってくれればいいなぁという程度の期待にとどめておくべきだろう。
 あたしはウィル・オー・ウィスプを避け、別な通路へと逃げ出した。幸いなことに、ウィル・オー・ウィスプはあたしの後を追ってくるようなことはなかった。あたしは安堵のため息をついた。何もなければ、それが一番だ。



 通路を進んでいくと、前方に扉を発見した。
 それはラッキーではあったけれど、アンラッキーなことに、あたしはまだ鍵を見つけていないのだ。
 ちぇ。
 仕方がない、この階の探索を続けよう。

 通路は左右に分かれている。あたしは左に向かった。
 前方からガチャリ、ガチャリと、金属音が聞こえてきた。闇の中から現れたのは、ハイパーナイトだ。
 あたしは咄嗟に剣を構える。こいつの実力は向き合っただけでわかる。今までの敵とはレベルが段違いだ。
 ハイパーナイトは余裕綽々といった様子で、ゆっくりとあたしに近づいてくる。しかしその態度とは対照的に、禍々しいほどの殺気が渦を巻いていることも確かだ。狙いはただ一点、あたしの心臓だ。
 ごくりと息を飲む。恐ろしいことは恐ろしい。だが、ハイパーナイトの腰には鍵がぶら下がっている。ここで引くわけにはいかない。そしてなにより剣士として、この強敵と剣を交えたいという欲望を抑えきれない自分がいるのだ。
 あたしは一声吼えると、ハイパーナイトに向って剣を振り下ろした。

 ボカ、スカ。

 剣の腕前という意味では、おそらくハイパーナイトに軍配が上がるだろう。あたしの剣は後一歩のところでハイパーナイトを捕らえきれない。逆にハイパーナイトの攻撃にひやりとさせられることも多かったが、青い鎧の魔力がその危機を未然に防いでくれていた。
 どれほどの時間が経過しただろうか。あたしもハイパーナイトも疲弊し、肩で息をするようになってきていた。そしてそんな状況になったことで、改めて装備の性能差が浮き彫りになってきた。ハイパーナイトが重い鎧を邪魔にするようになってきたのに対して、あたしの青い鎧はとても軽快だ。
 ハイパーナイトの繰り出した突きを紙一重でかわすと、あたしはカウンター気味に突きを食らわせた。あたしの剣はハイパーナイトの鎧の隙間を貫き、深々とわき腹に突き刺さった。
 しかしそんな状態になりながらも、ハイパーナイトはなおも剣を振るおうとする。その様子を見て、あたしは剣を捨てて、思わず後ろに飛び退る。
 腹に剣が刺さったまま、ハイパーナイトは1歩、2歩と、あたしに歩み寄ってくる。しかしついに力尽き、前のめりに崩れ落ちた。
 激闘の末、あたしはようやくハイパーナイトを倒すことができたのだ。
 あたしは剣を引き抜くと血を拭った。そして、敵ながら見事な戦いぶりを見せてくれたハイパーナイトを通路の脇に移動させ、しばしの間黙祷を捧げた。



 ハイパーナイトの腰から鍵を入手し、あたしは先を急いだ。
 通路は十字路になっていた。あたしは適当に左へと進む。
 すると、前方に扉があった。鍵を使って開けてみると、その先には上へと続く階段があった。
 ハイパーナイトのような強敵が出てきたのだ。今何階にいるのかはわからないが、そろそろドルアーガの塔の秘密にも近づいているのではないだろうか。
 あたしは冒険の終わりが近づいているという予感と共に、階段を上っていった。


(つづく)



基本設定
体力 4
剣技 11
魔術 3

バトルポイント
A:5  B:1  C:0  D:4  E:6
F:9  G:8  H:2  I:7  J:3

宝物リスト
白い剣、キャンドル、赤い薬、本、ブルー・アーマーセット


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おっと、もう第6回 (SEN)
2006-12-14 19:04:11
初回プレイでは見事に大きい方を開けました。
その後どういう運命をたどったかは言うまでもありません……。(爆)
 
 
 
もうじき終わりですが (タワ・タワー)
2006-12-15 00:56:29
いやもう、指栞を使ってやり直しまくりですよ。
終盤は本当に厳しいですね、これ。
 
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