社会思想社・現代教養文庫、イアン・リビングストン著のゲームブック、「死のワナの地下迷宮」をプレイ開始。
これ以降、かなり「死のワナの地下迷宮」のネタばれを含んでいます。ご注意ください。
あたしの名は、レイン・デシンセイ。ちょっとお茶目な23歳。まだ小娘だった頃から、剣だけを頼りとして生きてきた。
ファングの町で開催されている、迷宮探検競技。ファングを治めるサカムビット公が、持てる知恵を全て詰め込んだこの迷宮は、いまだかつて誰の生還も許してはいない。
生還を果たせば莫大な報酬に多大な名声が得られるだろう。しかし、あたしが欲しいのはそんなものではない。
あたしはただ、不可能とも思える難題を打ち破りたい、ただそれだけが望みなのだ。
難攻不落の迷宮に、あたしは今、挑戦する。
<現在の状況>
技術(12):12
体力(23):22
運(10):10
食料:10
金貨:2
宝石:
飲み薬:ツキ薬
装備:
通路の左手に、閉じた扉があった。その扉には、小さな鉄のプレートがついている。
そのプレートを横に滑らせて部屋の中を覗いてみると、部屋の床には大きな穴が開いているようだ。そして部屋の向かいの壁には鉄のフックがついていて、一束のロープがかかっている。
あのロープは今後の冒険に有用そうだ。しかし、わざわざのぞき穴をつけてくれている辺り、何かの罠のような気もする。
あたしは少し逡巡したが、意を決してその扉を開けた。
部屋の中にあいている穴はそれほど大きくなく、助走をつけることで難なく飛び越えることができた。あたしはロープを入手し、再び通路を北へと進む。
通路は左へと折れている。あたしはついつい何の気もなしに通路を曲がると、二匹のオークと正面衝突しそうになってしまった。
抜かった!
こんなところで油断するなんて、まったく恥ずかしいことこの上ない。
あたしはとっさに剣を抜くが、その前にオークが手にもったスパイク球であたしに殴りかかってくる!
ゴツ!
なんとかかわそうと試みたけれど、オークのスパイク球はあたしの太ももを直撃した。
くそっ。あたしは少し後ずさり、体勢を整える。
幸い通路は狭く、奴らは一度に一匹ずつしかかかってこられないみたいだ。
ボカ、スカ。
不意打ちさえなければオークなんてどうってことのない相手だ。あたしはあっさりと2匹を斬り捨て、その懐から金貨1枚と、中空の木の管を頂くと、通路を西へと進んだ。
通路を進んでいくと、入り口付近と同様に天井から水が滴ってきた。そのおかげで、目の前にはまた、誰のものかはわからないけれど、先行者の足跡が浮かんでいる。
少し行くと、通路の右手に鉄の扉があった。足跡はその扉を無視して先に進んでいるようだ。
あたしは、あたし以外の誰かがこの迷宮から生還できるなど信じてはいない。そして生還できなかった理由が、この部屋の中を探索しなかったからだと誰に言える?
まあ、それは屁理屈だけれど、どこにも逃げ場のないこの迷宮から生還する確率を上げるためには、わずかな助けも無駄にすることはできないだろう。
あたしはゆっくりと扉を開けた。
!
あたしは思わず息を呑む。その広い部屋の中に、あたしと同じく挑戦者の一人である蛮族の死体を発見したのだ。哀れにも、数本の長い鉄釘によってめった刺しにされている。どうやら部屋に仕掛けられたトラップにかかったようだ。
あれ? 先行者は一人で、その足跡は西へと続いていたのに……。どうなってるの? それともこの蛮族はあたしの後から入ってきた人で、あたしがロープを取りに部屋に入っている間に追い抜いたのかしらん。それともまた別な仕掛けがあるのか。
ともかく、彼がこの部屋の仕掛けを暴いてくれたおかげで、あたしの危険は少しだけ少なくなった。この部屋の奥には銀色のゴブレットが置かれている。これで罠が全部消えたと考えるのも早計なので、あたしは慎重に部屋の奥へと進み、ゴブレットの前までやってきた。
そのゴブレットには、赤くきらめく液体が入っている。それは、あたしの目にはとてもまがまがしく映った。
あたしはそのゴブレットを放置して、蛮族の身体を探ってみた。大したものはなかったが、乾燥した肉があったのでそれだけありがたく頂いた。味は不味いが、なにやら力が湧いてきたような気がする。あたしの血肉になったことが、この蛮族さんにとってのせめてもの供養になればいいけど。
彼の姿は未来のあたしの姿かもしれないのだ。あたしは一段と気を引き締め、その部屋を後にした。
しばらく西へ進むと、通路は南北に分かれていた。ここで多くの、おそらく3組くらいだろうか、足跡が混ざっている。それらはみんな、北へと向かっているようだ。
と、言うことは、入り口から西に向かう通路と、ここで合流しているのだろう。だとすれば、あたしも北に向かうしかない。
足跡をつけて北へと進んでいくと、不意に広々とした大洞窟に出た。また乾燥してきたためか、先行者の足跡は消えている。
薄暗い洞窟を進むと、目の前に、5、6メートルほどもあるだろうか、大きな偶像があった。その偶像の両目には、大きな宝石がはまっている。
あたしはすぐにでも宝石を取りたかったが、その像の両脇にいる、大きな鳥の剥製が気にかかる。宝石を取りに行ったら、間違いなくこいつらとの戦闘になるだろう。
あたしは5秒だけ考え、宝石を取るために偶像によじ登った。考えたと言うよりも、覚悟を決めたといった方が正しいのだが。
と、像は思ったよりもつるつるとしていて、うまく登れない。そこであたしはロープで投げ縄を作り、偶像の頭めがけて投げつけた。
ぴしっ。
うん、うまいこと引っかかってくれたみたい。あたしはロープを伝って、像の頭までよじ登った。
ちらと左右に目をやるけど、鳥の剥製はまだ動かない。もしかしたら、宝石に手をつけたタイミングで動くのかもしれない。
あたしは像の左眼を取ろうと、剣の柄で小突いた。するとそのとき、バタバタと大きな音を立てて、鳥の剥製があたしの頭上へと飛び立った。
やっぱり来たか。
あたしは剣を抜いて応戦する。
ボカ、スカ。
足場が悪いのでちょっと苦戦したけど、どうにか2体とも撃破。あたしは像の左眼から無事に、やたらとデカイエメラルドをほじくり出した。
像から降り、ロープを回収すると、あたしはここで少し休憩することにした。
ふぅ。
食事を取って一息つくと、あたしは再び北へと向かって歩き出した。
(つづく)
<現在の状況>
技術(12):12
体力(23):18
運(10):9
食料:9
金貨:3
宝石:エメラルド
飲み薬:ツキ薬
装備:ロープ、中空の木の管
|