社会思想社・現代教養文庫、イアン・リビングストン著のゲームブック、「死のワナの地下迷宮」をプレイ開始。
これ以降、かなり「死のワナの地下迷宮」のネタばれを含んでいます。ご注意ください。
あたしの名は、レイン・デシンセイ。ちょっとお茶目な23歳。まだ小娘だった頃から、剣だけを頼りとして生きてきた。
ファングの町で開催されている、迷宮探検競技。ファングを治めるサカムビット公が、持てる知恵を全て詰め込んだこの迷宮は、いまだかつて誰の生還も許してはいない。
生還を果たせば莫大な報酬に多大な名声が得られるだろう。しかし、あたしが欲しいのはそんなものではない。
あたしはただ、不可能とも思える難題を打ち破りたい、ただそれだけが望みなのだ。
難攻不落の迷宮に、あたしは今、挑戦する。
<現在の状況>
技術(12):11
体力(23):16
運(10):7
食料:9
金貨:3
宝石:エメラルド、オパールの短剣、ルビー
飲み薬:ツキ薬
装備:ロープ、中空の木の管、金の指輪
通路は左へ、北の方角へと折れ曲がっている。覗いてみると、例によってずっと先へと伸びている。
少し進んだところで、左側に木の扉があるところに出た。そろそろ悩まなくなってきたあたしは、おもむろにその扉を開いて中を確認する。
そこはろうそくの灯った大きな部屋で、騎士や兵士や戦士など、さまざまな石造が立ち並んでいる。
すると、その石造の合間から、白髪の老人がくすくすと笑いながら姿を現した。それはまるでばかみたいに見えるが、この人はけしてそれだけではないように感じられた。
「やれ嬉しや、わしの庭にもう一つ石がやってきたわい。ようこそ、ここであんたの友人たちの仲間入りをなされ。ところで、わしは公正な人間じゃ。だからあんたに一つ質問をしよう。もしあんたが正しく答えられたら、ここから出してやろう。だが、あんたの答えが間違っていたら、石に変えてしまうぞ!」
そういうと、彼はまた心底嬉しそうに笑い出した。
要するに、ここにある石造は、みんな元人間だったわけだ。なかなかいい趣味してる爺さんだこと。
あたしはちらと入り口を見やって、逃げ出せるかどうかを検討してみた。やってやれないこともないかもしれないけれど、この爺さんの石化能力がどれほどのものかわからないだけに、危険な賭けかもしれない。それよりは知恵比べを挑んだ方がマシではないだろうか。
あたしは爺さんにうなずき返し、質問を促す。
すると爺さんは、一体の彫像を指し示した。あたしは思わず息をのむ。それは一番最初にこの洞窟に潜っていった、鎧兜の男だ。その顔は苦痛に歪んだまま硬直してしまっている。いったいいかほどの苦しみを味わったのだろうか。
「この男の重さは、100ポンドプラス彼の体重の半分だ。彼の体重はいくらだと思うかね?」
ばかにするなと思う。この程度の計算なら、バジリスクとコカトリスの鶴亀算の方がよほど面倒だ。
あたしは爺さんに答えを告げる。
「でかしたぞ。それが正解じゃ。この迷宮探検競技におけるお前の幸運を祈ろう。そして、そのために、お前の力を増してやろう」
爺さんはぶつぶとなにやら呪文をつぶやいた。するとたちまち,あたしの全身に力がみなぎってくる。
いけ好かない爺さんだったけど、あたしは一応彼に別れを告げて、再び通路を北へと進む。
ほんの数メートルほど進んだところで、また左手に扉があった。その扉の中央には、「X」と殴り書きされている。聞き耳を立ててみるが、何も聞こえない。あたしはその扉を押し開ける。
扉の向こうはとても大きな部屋だ。奥の壁のへこんでいる所も気になるなのだが、なんと言っても目に付くのは部屋の中央の石の椅子に腰掛けている骸骨だ。鎧を着込んでいるところから、おそらく昔にこの迷宮に挑んだ者なのだろう。
その骸骨は、右手に羊皮紙を握り締めいている。中に何がかかれているのかは分からないが、今はどんなヒントでも欲しいところだ。
あたしが羊皮紙に手をかけると、案の定、その骸骨はガクガクとぎこちなく動き出し、あたしに向かって剣を振りかざしてきた。
まあ、こんなことだろうと思ったけどね。あたしも剣を構えて応戦する。
ボカ、スカ。
まあ先輩には申し訳ないけれど、こんな程度で倒れたような人に負けるあたしではない。あたしは崩れた骨の山から、羊皮紙を摘み上げる。
マンティコアに出会ったら、
そいつの尻尾に気をつけろ。
うなりを生じて飛んでくる
とがった釘から身を守れ。
ありがたいような、そうでもないような内容だけど、一応頭に入れておこう。
あたしはブツブツとその文言をつぶやきながら、奥の壁へと向かった。
壁のへこみの奥には、穴倉へと降りていく階段があった。あたしはクモの巣をかきわけながら、その階段を下りていく。
天井の低いその穴倉にはゴミが散乱していて、奥にはアーチ状の出入り口があって別な洞窟へと続いている。
ゴミの中に妙なきのこが生えているが、それを手に取る気は起きなかった。あたしは奥の洞窟を目指した。
その洞窟は西へ数100メートルほど伸びていき、その端は階段で終わっていた。その階段を数段登った先には跳ね上げ式の扉がある。
階段を登って聞き耳を立てると、なにやら話し声が聞こえる。あたしは少しの間思案し、剣を構えて一気に扉の中へと飛び込むことにした。
部屋の中はランタンが灯った小さな部屋だ。そして2匹のゴブリンが剣を研いでいる。
奴らはあわててその剣を取り、あたしに向かって切りかかってきた。
ボカ、スカ。
所詮ゴブリンなど、あたしの敵ではない。あっさり斬り捨てて、部屋の中にある戸棚を調べる。
中には木槌が一つと、鉄釘が10本入っていた。何かに使えることもあるだろう。あたしはそれをザックに詰める。
部屋には西と北の2箇所に扉がついている。少し考えて、あたしは西の扉に手をかけた。
扉の先は、また別なトンネルになっている。あたしはそこを西へと進む。
しばらく行くと、北側に扉があった。その扉を開けるとそこは小さな部屋で、床の上には小さな木の球が二つ転がっている。部屋の中央に大理石の台座があり、その上に両目に宝石の嵌った人間の頭蓋骨が載っている。左の壁を見ると矢をつがえた石弓が多数並んでいる。
危険だ。この部屋は明らかに危険だ。
しかしこれまでの経験から考えて、この迷宮を無事に抜けるためには宝石が重要なキーアイテムになっているような気がする。だとすれば、この骸骨の両目の宝石も、何とかして回収するべきではないだろうか。
手前に転がっている木の球、そして剣呑な石弓。これらがどのような罠なのかは見当もつかない。
あたしは思い切ってそれらを無視し、部屋にずかずかと入り込んで頭蓋骨に手を伸ばした。
石弓を横目に確認しながら、頭蓋骨に触れる。しかし、石弓はぴくりとも反応しない。あたしはそのまま頭蓋骨を手に取った。
眼窩に嵌められていたのはトパーズだ。あたしはそれを頭蓋骨から外し、ザックに収める。
そしてあたしは、その頭蓋骨を元に戻すかどうかで再び迷う。が、ここまできたら皿までだ。あたしは頭蓋骨を手にしたまま、その部屋から這い出した。ついに石弓は何の反応も示さなかった。あたしはどうやらうまく立ち回れたようだ。頭蓋骨を部屋の中に放り投げると、あたしは扉を閉めた。
あー、疲れた。あたしは大きく息を吐き出すと、また通路を西へと向かった。
(つづく)
<現在の状況>
技術(12):12
体力(23):17
運(10):9
食料:9
金貨:3
宝石:エメラルド、オパールの短剣、ルビー、トパーズ
飲み薬:ツキ薬
装備:ロープ、中空の木の管、金の指輪、木槌、鉄釘10本
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