先日からプレイしていたゲームブック、「ウルティマII 」(本橋信宏著、JICC出版局)をクリアしました。
全体的なストーリーの流れを見てみると、ちょっとまとまりがなかったかな、という印象です。
導入部分からして、ニューヨークの少年が異世界に別の人物として飛ばされるのかということに対して、まったく説明がありません。その点について、なんだかわからないままに進めていかなくてはならないので、少し取っ付きが悪くなっています。
さらに、大目標である魔女ミナクスを倒すということも物語の途中で与えられるものなので、モチベーションを保つのが困難でした。大目標にしろ、中目標にしろ、行動の指針が与えられないので、何を目指して、どう行動すればよいのかがわからないんですよね。それでも何となく話は進んでいくのですが、一つ一つの細かな行動はともかく、主人公が話を動かしているという感じは少なかったと思います。
それから、ラストが非常に弱いです。あっさりと終わりすぎています。まるでDEAD END であるかのような淡白な終わり方で、本当にこれがTRUE END なのか、自信が持てませんでした。私はエピローグには時間をかけるべし主義者なので、この点は大いに不満です。
ミナクスとのやりとりも割とあっさりと終了したのですが、ただでさえミナクスは途中の存在感が薄いのですから、もう少しボリュームがあった方が良かったでしょう。
過去や未来を飛び回り、様々な舞台で冒険をするという点は面白かったと思います。原作では未来の世界といっても、ロケットなどがあったりはしますが、表現手法の技術的な問題で、過去の世界とそれほど雰囲気が変わるわけでもありません。それに対して文章とイラストで構成されたゲームブックでは、時代の変化、世界の変化といったものが、しっかりと描写されていました。
ただし、時代を渡るごとにまったく異なるシチュエーションに放り込まれわけですから、ストーリーが細切れになるという弊害もあったと思います。もっとも、そもそものミナクスを倒すという大きなストーリーライン自体が弱いので、バラエティーの豊かさを前面に押し出すことになり、結果的には良い方向に向ったと言えるのではないでしょうか。
システム的にはとても軽く、サイコロ不要で、キャラクターシートもなく、特にメモを取らなくてもプレイ可能になっています。ただ、「○○を持っているなら~」とか、「○○をしていら~」とか、過去の行動による分岐もあり、私は寝る前に布団の中で横になりながら、2、3日くらいに分けて少しずつ読んでいたこともあったので、何を持っているのか、以前何をしたのか、忘れていたことも何点かありました。それほど量が多いわけでもないので絶対に必要というわけでもありませんが、できればメモを取りながらプレイした方が良いと思います。
それから、持ち物以外でも、何故か不自然に英語表記されている太字の単語にも注意を払った方が良いですね。なにか妙だとは思っていたんだけど、まさか最後になって効いてくるとは思わなかったなぁ、あれ。
原作にあったネタが織り込まれているらしいのですが、原作をプレイしたのは少なくとも4年以上前ですので、流石にほとんど覚えていませんでした。「ホテル・カリフォルニア」は、そういえばあったような気もしますけど……。つか、そもそも「UltimaII 」がパロった元ネタの「ホテル・カリフォルニア」を知らないので、むしまるQゴールドの「ホタル・カリフォルニア」の方を思い出してしまうのですが。
物語の流れはあまりよくないのですが、それは本家「UltimaII 」自体が持っている破天荒な雰囲気をトレースした結果だと思います。ボリュームだけは膨大な「UltimaII 」の中から、システムを簡略化してゲーム的な部分を切り捨て、その分は物語の情景の描写で補って、限られたリソースの中で上手くゲームブックとしてまとめてあったと思います。
その意味では、ゲームブックとしての完成度はそれほど高くはないものの、“「UltimaII 」のゲームブック化”としては成功していると言えるのではないでしょうか。原作の知識があった方が、このゲームブック版も楽しめると思います。
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