ある病院の、ある一室で、今、一人の老人が、息を引き取ったところでした。医師が臨終を告げると、ベッドのふちにすがりついていた彼の妻がすすり泣き、後ろに立っていた三人の息子、娘たちが、悲しげにうつむきました。
その様子を、少し離れた所から、今死んだばかりの老人が静かに見守っていました。彼は妻の頬の涙や、子供たちの顔を見ながら、心の中で呟きました。(六十二年か。よく生きたほうかな)。
と、後ろから誰かが口笛を吹く音が聞こえました。老人が振り向くと、壁の向こうが透けて見え、眼鏡をかけた一人の少年が笑って手を振っていました。老人は、「ああ!」と声をあげ、瞬時に少年の姿に戻りました。彼は壁を抜けて病室を出ると、眼鏡をかけた少年と手を握り、抱き合いました。
「やあ、ひさしぶり、わざわざ迎えに来てくれたのかい?」
「いや、そろそろだと思ってさ、待ってたんだ。この頃こっちに呼ばれる仕事が多くて、ついでと言っちゃあなんだけど。」
さっきまで老人だった少年は、金髪に青い瞳の利発そうな少年でした。眼鏡の少年は、金髪の少年を船に乗せると、早速空に飛び出しました。すると金髪の少年は、少しさびしくなり、しばらく低空を飛んでくれないかと眼鏡の少年に頼みました。
「いいよ、六十二年生きてきたんだ。すぐに帰るのはつらいだろう」眼鏡の少年は快く、船を低空に下ろしてくれました。金髪の少年は、生きていた頃住んでいた町を、しばらくじっと見回していました。
「どうだった?人生は」眼鏡の少年が問うと、金髪の少年は町を見下ろしながら言いました。「まあまあかな、と言いたいところだけど、ほんとはかなり苦しかった。仕事で、上司にミスを押しつけられて、クビになりかけたりしたこともあってさ」「へえ」「結局は内部告発があって、上司が裏でやってた使いこみなんかがばれて、僕は助かったんだけど。ショックだったよ。見た目は温厚そうな、とても良い人に見えたから」「ああ、そりゃ人怪(じんかい)だな、多分」眼鏡の少年が言うと、金髪の少年はため息をつきつつ、「うん、僕もそう思う。人怪は良い人のふりが上手くて、裏ではずるいことや悪いこと、平気でやっちゃうからな」と言いました。人怪とは、怪が神の道理を破り、勝手に人間として地球上に生まれてきたもののことでした。「そんなのは今、地球にいっぱいいるよ」眼鏡の少年が船を回しながら言いました。
「ここで生きるのは、相当苦しいんだ、今。」金髪の少年は悲しげな目で町の向こうの山を見ました。「生きてる頃から思ってたけどね。テレビでも世間でも、色んな人が色んな事を言ってた。けど、実際彼らの言いたい事は、ひとつだけだった。『やつらはバカだ。おれはつらい』。」金髪の少年の言葉を受けて、眼鏡の少年が、はっはあ、と笑いました。「うまいね。そのとおりだ。苦しすぎるんだ、ここは。怪の天下みたいなもんだからね」。
船は、山に向かい、その下方にある新興住宅街の上を飛びました。金髪の少年は言いました。「ごらん。あの新しい家。最近人はあんな大きい家を欲しがるんだ。ここでは幸せになるために、あんなものが必要なんだよ。でも、悲しい。ほんとは人間は、もっと小さい家のほうが幸せなんだ」「うん」「僕の妻も、あんな家をうらやましそうに見てたな。僕らの家は、親の代からの古い家だったからね」「幸せだったかい?」眼鏡の少年が問うと、金髪の少年はしばし黙りこみました。地球の風が彼の髪をなでました。彼は空を見上げると、「そうだな」と言いました。「とにかく、子供三人は、みなまともに育ったし」「いいことじゃないか」「うん」金髪の少年は笑い、そろそろいくよ、と言いました。そして眼鏡の少年が、船を上に向けかけたとき、ふと、金髪の少年は気付きました。
「あれ?」
青い小さな光が、空から地上に向かって、まっすぐに降ってくるのが、遠くに見えました。
「なんだ、あれは?」金髪の少年が言うと、眼鏡の少年が答えました。「ああ、あれは水晶の火だ」「水晶の火?」金髪の少年が目を凝らして見ると、青い光は、はるか遠く山の向こうの、白い頂をした高山の上に落ちました。眼鏡の少年は、今、聖者様たちがやっていることを簡単に彼に説明しました。すると金髪の少年が驚いたように言いました。
「地球に聖域をつくるって?!」
「大方の人はそう言ってる。でもほかにも、霊的ネットワークをつくるとか、地球そのものを聖化するとか、色んなことを言う人がいる。聖者様は何かを知ってるみたいだけど、誰も何も教えてくれないんだ」「そんなの無理だよ。こんなところ、どうやって聖化するのさ?」「みんなそう言うよ。でも神様は、百パーセント、いや、二百パーセント無理なことでも、やっておしまいになるからね」「そりゃそうだけど…」「君も、帰ったら忙しくなるよ。何か仕事をしろって、役人さんが言いに来る、多分ね。」
眼鏡の少年は、船をぐいと上に向け、スピードをあげました。金髪の少年は、地球が見えなくなるまで、ずっと下を見ていました。
今日のひとこと見たくてお邪魔しました。
>『やつらはバカだ。おれはつらい』
自分もそうかなとお恥ずかしいです。
でも意見を言う時、他の言い方あるのかな・・。
反省させられました。
この地球を聖化❄️できると良いです。
今日はクリスマスなので、今日はそう信じて1日を過ごしてみようと思います。
そうして見たら、世界は違うように見える✨かもしれませんね。
青城さんも素敵なクリスマス🎄✨をお過ごしください。
>コメントありがとうございます。今日はクリスマスですね。こんな日は世界中の人の平和のために祈りたいです。
物語の中では、いろんなひとが努力して、地球の浄化のために働いていきます。
そんな風に、この世界も、みんなで努力して、いい方向に向かっていけばいいと思う。
悲しいことはいっぱいあるけれど、乗りこえていける人類の力を信じたいです。
今日一日、平和なクリスマスをお過ごしください。