先日行った「この空の花 長岡花火物語」新潟県長岡市の凱旋上映会で大林宣彦監督が語っていたアメリカ・ロサンゼルスでの大林宣彦監督映画特集の初日が無事終了したようだ。
その様子の写真を見ると、かなりアメリカには熱狂的な大林ファンがいるようだ。
http://t.co/0g9tbjioZU
特に「HOUSE」にのめり込んでいる人が多いよう。あのぶっ飛んだ斬新感はやはり欧米あたりでも受け入れられるのか。素晴らしい限りである。同じ「HOUSE」ファンとして嬉しい。
中には自分が持ってる「HOUSE」のサウンドトラックLPを持っていた人がいた。どこから手に入れたんだろうか。
他にも自分が好きな「時をかける少女」とかもかかるようだ。あのノスタルジックな日本的な落ち着いた情緒感を彼等は理解できるだろうか。興味津津である。
こうやって大林監督が見直されるのも「この空の花」の繋がりによるものか。5月12日には、この作品が控えている。
*映画「この空の花 長岡花火物語」より。背景に見えるのが新潟県長岡市の水道公園の「水道タンク」とレトロな「ポンプ棟」。この建造物は第二次世界大戦の長岡空襲の戦火を潜り抜けた世界遺産に匹敵する歴史遺産である。AKB48「So long !」MVでもロケされている。
それと、5月18日(土)22:00~23:00のNHK・Eテレ「SWITCH インタビュー 達人達」という番組に大林監督とAKB48のメンバー(渡辺麻友、松井珠里奈、高橋みなみ)が出演して対談するようだ。
「So long !」MVのことや、「この空の花」のことまで語るらしい。これは、必見である!
最新映画批評 その1
●映画「リンカーン」 星五つ満点とすると [ ★★★★ ]
昨日は、Tジョイ長岡に映画「リンカーン」を観に行ってきた。シネマチネの活用。
この作品は気になっていた作品。アメリカで今一番観たい映画作家となると殆どおらず、スティーブン・スピルバーグ監督ぐらい。
やはり力量、勉強度が他の作家と全然違うし、時代における目の付けどころがいつもいい。
先日、うちの親父も観てきて、「自分ら世代は、ある程度のことを知ってるから理解できるけど、知らない人は難しいかも。重厚な作りだった。民主主義を敷くことがいかに大変なことが分かる。」みたいなことを語っていた。
自分としては、恥ずかしながらリンカーンについては偉人中の偉人。奴隷を解放した人。人民のための民主主義を築いた人。あと、偉人らしい写真、自画像ぐらいなもんで、これまできちんとまともに伝記等を読んだこともなかった。
そう考えると、映画って便利だなあ。手を抜く訳じゃありませんが。
それにしてもスピルバーグ監督って、今持って故・黒澤明監督を崇拝してるんだなあ。この作品にも色濃くその影響が窺える。
リンカーンは正に志村喬(しむらたかし)。「生きる」「七人の侍」の志村喬そのものって感じだ。
エイブラハム・リンカーンという名前は、エイブラハムという名を考えるとユダヤ系アメリカ人かもしれない。リンカーンがソロモンのなんたらこうたらの劇が観たいと語ったり、ラストにその劇演らしいものが写り、息子がその観劇中にリンカーンが暗殺者の魔の手に倒れるのは、それを意識したメタファー?
リンカーンの髭もそういうことで生やしていたのだろうか。
スピルバーグ監督もユダヤ系アメリカ人。そこに呼応したのだろうか。
黒人の解放、それはユダヤ人の解放にもつながる。
共同プロデューサーにキャスリーン・ケネディの名がクレジットされているのも何だか気になった。
アメリカ現大統領のバラク・オバマ。このバラクもヘブライ語の同じ発音で「稲妻」という意味の単語がある。そういう意味なのだろうか。だとしたら、オバマ大統領もユダヤ系アメリカ人。それも黒人の血を引いた。
もしかしたらスピルバーグがこの作品を一番見せたかったのは、アメリカ国民、そして、オバマ大統領だったのでは。
リンカーンの奴隷解放の礎があっからこそ、アメリカの未来において黒人大統領が誕生したのだと。それを知れと。
アメリカで南北戦争が何年も続いてたことや、奴隷解放のための法律の修正案を通すまでに同じく何年も日々重苦しい駆け引きがあって成立したのを映画は明示する。一朝一夕のものではない。民主主義もそうであろう。
そして、今、アメリカにおける銃規制も健康保険制度等もである。
スピルバーグは、本来活劇が大好きでそういうタッチになるとカメラワーク等、俄然力を発揮するのだが、今回は敢えてそれをしない。一切しないことに徹していると思う。一つの挑戦である。そこもまた面白いではないか。
それによって如何にリンカーン像を浮かび上がらせるか。うちの親父が重厚と言ったのはそういうとこだろう。
また、スピルバーグがお得意とする恐怖感を煽る演出も抑制した。だから、黒人奴隷が南部の連中に酷い目に遭わされている描写とか、南北戦争の場面が「プライベート・ライアン」的にリアルに残酷に表現されたりはしない。暗殺の場面も隠喩的になっている。
唯一、北軍の重傷兵らしきの切断された無数の腕や足が廃棄される場面がある。ちょっとそれは、ナチスがユダヤ人の死体を無造作に廃棄する様子をどこか思わせるものだ。それぐらい。
劇中、リンカーンが使用人の黒人男性が渡す手袋を執拗に拒否する場面が象徴的に繰り返される。捉え方は色々ある。私的には、人民の手をしっかりと自分の手で握りたいからという、コミュニケーションの重要性を意味していると考えた。
この政治家の握手という行為だが、一説に手から手を介して病原体等を感染させ、死に至らしめるバイオテロの危険性があるという。もちろん、この時代にそういう意識があったとは到底考えられぬが。
役者の面では、ダニエル・デイ・ルイスのリンカーンの演技は重厚で素晴らしく、写真や自画像にそっくりで、乗り移ったかのようにも思う。苦悩を続ける様々な角度からの表情が印象的。
妻役を演じたサリー・フィールドは、元から好きな存在感のある女優で、おっあの女優を使ったか、さすがスピルバーグと思った。その期待を裏切らない演技だった。
それに、意外と日本でお馴染みのトミー・リー・ジョーンズがいい。彼の言うセリフ「自分の心に聞け。」が響く。これは、今、世界中に問われる言葉だろう。特に出鱈目な独裁、人権無視、捏造、粉飾、パクリ国家の連中に!
また、俳優名は知らないが、リンカーンと妻に仕える黒人の男と女の使用人がいい味を出している。実は、スピルバーグはこの二人に重要なスポットを当てているのではないだろうか。殆ど語らずだが、表情でメッセージさせているかのようだ。全てを。ありのままの心を。そこにまた心を打たれる。感動する。
その中でも黒人のアイディンティを明確に表す使用人の女の言葉がある。「私たちはいつも(アメリカの中で)自由を勝ち取るために闘っている。」
これは、今に通じる言葉なのだろう。
自由の国、アメリカにおいて何とも皮肉なセリフだ。
昨年、ニューヨークに行ったが、黒人に対する人権はどうだろうか。
「カーネギーホール」の前のごみ箱から食べ物を漁るホームレスの黒人女性や底辺にある安賃金の店の売り子を殆ど黒人が請け負っている現実を見ると今でも完全ではないように思える。
それと、そう言えば、散策する途中で「リンカーンセンター」の外観だけだが見てきた。その裏手に「メトロポリタンオペラハウス」や有名な「ジュリアード音楽院」があるのだ。セントラルパークから割と近い所だった。
映画の続きだが、やがて、奴隷解放の法案は成立する。リンカーンたちはアメリカの一つの歴史を変えた訳だが、そこで描かれる黒人たちの様子を見て、スピルバーグが大好きだという「七人の侍」のラストの場面が重なる。
生き残った侍の志村喬が呟く「勝ったのは我々侍じゃない。あの百姓たちだ。」
それにどこか通ずるものがある。
「白人(北軍)が勝ったのではない。あの耐え忍んできた奴隷だった黒人たちだ。」
だから、黙して語らずの耐える黒人たちをスピルバーグは描いたのか。
農民と黒人たちが、なぜか重なる。
黒澤明の真骨頂、ヒューマニズム!正義!
この映画「リンカーン」は、スピルバーグが敬愛して止まない故・黒澤明監督にも捧げたものでもあるのではないだろうか。
それで、自分は何か心境的に色々と重なったこともあったのか、何度か涙(号泣)してしまった。
ぜひ、お薦めの映画である!(歴史に詳しくない人は予習していった方がいいかも)
そう言えば、長岡市出身の聯合艦隊司令長官・山本五十六元帥がリンカーンを敬愛していたことを長岡市にある山本五十六記念館だったと思うが、そこで知った。きっと渡米したのもそんなアメリカの姿を見たかったのだろう。
*それで映画館への苦言だが、「Tジョイ長岡」は、なぜ未だに料金等のサービス体制が悪いのだろうか。正に差別されているようだ。これは、もしや新潟県の映画館興行組合辺りが圧力でもかけているのだろうか。
プログラムについてでもある。長岡市の唯一のシネコンであるのにわざとお客を行かせない流れにしているように見受けられる。そういう自分たちさえ良ければという悪辣な謀をする輩に言いたい。「自分の心に聞け!」。それに、謀はいつか崩壊すると。
トバヨ! ブタケヨ!
平成25年5月13日
その様子の写真を見ると、かなりアメリカには熱狂的な大林ファンがいるようだ。
http://t.co/0g9tbjioZU
特に「HOUSE」にのめり込んでいる人が多いよう。あのぶっ飛んだ斬新感はやはり欧米あたりでも受け入れられるのか。素晴らしい限りである。同じ「HOUSE」ファンとして嬉しい。
中には自分が持ってる「HOUSE」のサウンドトラックLPを持っていた人がいた。どこから手に入れたんだろうか。
他にも自分が好きな「時をかける少女」とかもかかるようだ。あのノスタルジックな日本的な落ち着いた情緒感を彼等は理解できるだろうか。興味津津である。
こうやって大林監督が見直されるのも「この空の花」の繋がりによるものか。5月12日には、この作品が控えている。
*映画「この空の花 長岡花火物語」より。背景に見えるのが新潟県長岡市の水道公園の「水道タンク」とレトロな「ポンプ棟」。この建造物は第二次世界大戦の長岡空襲の戦火を潜り抜けた世界遺産に匹敵する歴史遺産である。AKB48「So long !」MVでもロケされている。
それと、5月18日(土)22:00~23:00のNHK・Eテレ「SWITCH インタビュー 達人達」という番組に大林監督とAKB48のメンバー(渡辺麻友、松井珠里奈、高橋みなみ)が出演して対談するようだ。
「So long !」MVのことや、「この空の花」のことまで語るらしい。これは、必見である!
最新映画批評 その1
●映画「リンカーン」 星五つ満点とすると [ ★★★★ ]
昨日は、Tジョイ長岡に映画「リンカーン」を観に行ってきた。シネマチネの活用。
この作品は気になっていた作品。アメリカで今一番観たい映画作家となると殆どおらず、スティーブン・スピルバーグ監督ぐらい。
やはり力量、勉強度が他の作家と全然違うし、時代における目の付けどころがいつもいい。
先日、うちの親父も観てきて、「自分ら世代は、ある程度のことを知ってるから理解できるけど、知らない人は難しいかも。重厚な作りだった。民主主義を敷くことがいかに大変なことが分かる。」みたいなことを語っていた。
自分としては、恥ずかしながらリンカーンについては偉人中の偉人。奴隷を解放した人。人民のための民主主義を築いた人。あと、偉人らしい写真、自画像ぐらいなもんで、これまできちんとまともに伝記等を読んだこともなかった。
そう考えると、映画って便利だなあ。手を抜く訳じゃありませんが。
それにしてもスピルバーグ監督って、今持って故・黒澤明監督を崇拝してるんだなあ。この作品にも色濃くその影響が窺える。
リンカーンは正に志村喬(しむらたかし)。「生きる」「七人の侍」の志村喬そのものって感じだ。
エイブラハム・リンカーンという名前は、エイブラハムという名を考えるとユダヤ系アメリカ人かもしれない。リンカーンがソロモンのなんたらこうたらの劇が観たいと語ったり、ラストにその劇演らしいものが写り、息子がその観劇中にリンカーンが暗殺者の魔の手に倒れるのは、それを意識したメタファー?
リンカーンの髭もそういうことで生やしていたのだろうか。
スピルバーグ監督もユダヤ系アメリカ人。そこに呼応したのだろうか。
黒人の解放、それはユダヤ人の解放にもつながる。
共同プロデューサーにキャスリーン・ケネディの名がクレジットされているのも何だか気になった。
アメリカ現大統領のバラク・オバマ。このバラクもヘブライ語の同じ発音で「稲妻」という意味の単語がある。そういう意味なのだろうか。だとしたら、オバマ大統領もユダヤ系アメリカ人。それも黒人の血を引いた。
もしかしたらスピルバーグがこの作品を一番見せたかったのは、アメリカ国民、そして、オバマ大統領だったのでは。
リンカーンの奴隷解放の礎があっからこそ、アメリカの未来において黒人大統領が誕生したのだと。それを知れと。
アメリカで南北戦争が何年も続いてたことや、奴隷解放のための法律の修正案を通すまでに同じく何年も日々重苦しい駆け引きがあって成立したのを映画は明示する。一朝一夕のものではない。民主主義もそうであろう。
そして、今、アメリカにおける銃規制も健康保険制度等もである。
スピルバーグは、本来活劇が大好きでそういうタッチになるとカメラワーク等、俄然力を発揮するのだが、今回は敢えてそれをしない。一切しないことに徹していると思う。一つの挑戦である。そこもまた面白いではないか。
それによって如何にリンカーン像を浮かび上がらせるか。うちの親父が重厚と言ったのはそういうとこだろう。
また、スピルバーグがお得意とする恐怖感を煽る演出も抑制した。だから、黒人奴隷が南部の連中に酷い目に遭わされている描写とか、南北戦争の場面が「プライベート・ライアン」的にリアルに残酷に表現されたりはしない。暗殺の場面も隠喩的になっている。
唯一、北軍の重傷兵らしきの切断された無数の腕や足が廃棄される場面がある。ちょっとそれは、ナチスがユダヤ人の死体を無造作に廃棄する様子をどこか思わせるものだ。それぐらい。
劇中、リンカーンが使用人の黒人男性が渡す手袋を執拗に拒否する場面が象徴的に繰り返される。捉え方は色々ある。私的には、人民の手をしっかりと自分の手で握りたいからという、コミュニケーションの重要性を意味していると考えた。
この政治家の握手という行為だが、一説に手から手を介して病原体等を感染させ、死に至らしめるバイオテロの危険性があるという。もちろん、この時代にそういう意識があったとは到底考えられぬが。
役者の面では、ダニエル・デイ・ルイスのリンカーンの演技は重厚で素晴らしく、写真や自画像にそっくりで、乗り移ったかのようにも思う。苦悩を続ける様々な角度からの表情が印象的。
妻役を演じたサリー・フィールドは、元から好きな存在感のある女優で、おっあの女優を使ったか、さすがスピルバーグと思った。その期待を裏切らない演技だった。
それに、意外と日本でお馴染みのトミー・リー・ジョーンズがいい。彼の言うセリフ「自分の心に聞け。」が響く。これは、今、世界中に問われる言葉だろう。特に出鱈目な独裁、人権無視、捏造、粉飾、パクリ国家の連中に!
また、俳優名は知らないが、リンカーンと妻に仕える黒人の男と女の使用人がいい味を出している。実は、スピルバーグはこの二人に重要なスポットを当てているのではないだろうか。殆ど語らずだが、表情でメッセージさせているかのようだ。全てを。ありのままの心を。そこにまた心を打たれる。感動する。
その中でも黒人のアイディンティを明確に表す使用人の女の言葉がある。「私たちはいつも(アメリカの中で)自由を勝ち取るために闘っている。」
これは、今に通じる言葉なのだろう。
自由の国、アメリカにおいて何とも皮肉なセリフだ。
昨年、ニューヨークに行ったが、黒人に対する人権はどうだろうか。
「カーネギーホール」の前のごみ箱から食べ物を漁るホームレスの黒人女性や底辺にある安賃金の店の売り子を殆ど黒人が請け負っている現実を見ると今でも完全ではないように思える。
それと、そう言えば、散策する途中で「リンカーンセンター」の外観だけだが見てきた。その裏手に「メトロポリタンオペラハウス」や有名な「ジュリアード音楽院」があるのだ。セントラルパークから割と近い所だった。
映画の続きだが、やがて、奴隷解放の法案は成立する。リンカーンたちはアメリカの一つの歴史を変えた訳だが、そこで描かれる黒人たちの様子を見て、スピルバーグが大好きだという「七人の侍」のラストの場面が重なる。
生き残った侍の志村喬が呟く「勝ったのは我々侍じゃない。あの百姓たちだ。」
それにどこか通ずるものがある。
「白人(北軍)が勝ったのではない。あの耐え忍んできた奴隷だった黒人たちだ。」
だから、黙して語らずの耐える黒人たちをスピルバーグは描いたのか。
農民と黒人たちが、なぜか重なる。
黒澤明の真骨頂、ヒューマニズム!正義!
この映画「リンカーン」は、スピルバーグが敬愛して止まない故・黒澤明監督にも捧げたものでもあるのではないだろうか。
それで、自分は何か心境的に色々と重なったこともあったのか、何度か涙(号泣)してしまった。
ぜひ、お薦めの映画である!(歴史に詳しくない人は予習していった方がいいかも)
そう言えば、長岡市出身の聯合艦隊司令長官・山本五十六元帥がリンカーンを敬愛していたことを長岡市にある山本五十六記念館だったと思うが、そこで知った。きっと渡米したのもそんなアメリカの姿を見たかったのだろう。
*それで映画館への苦言だが、「Tジョイ長岡」は、なぜ未だに料金等のサービス体制が悪いのだろうか。正に差別されているようだ。これは、もしや新潟県の映画館興行組合辺りが圧力でもかけているのだろうか。
プログラムについてでもある。長岡市の唯一のシネコンであるのにわざとお客を行かせない流れにしているように見受けられる。そういう自分たちさえ良ければという悪辣な謀をする輩に言いたい。「自分の心に聞け!」。それに、謀はいつか崩壊すると。
トバヨ! ブタケヨ!
平成25年5月13日