地球には重力というものがある。
重力はありがたい存在で、人が土地に根を張り、生きていくことを可能にした存在である。
また根無し草という言葉もある。
まさに俺の20代は根無し草だった。
とにかく彷徨った。
迷走した。
いつも満たされなくて、ふわふわしてて、ジタバタしていた。
いつも『ここじゃないドコカ』を探していた。
そんな俺もようやく土地に根を張ることができた。
重力のおかげである。
ここで変わらない生活を続けることの尊さを初めて知った。
ようやく地に足ついたのである。
俺はここでの生活に満足していた。
死ぬまでこうして生きていよう。それでも幸せだと思っている。
重力の安心感は半端ない。
今、20代を振り返ると、『勇気がなかった』と一言で表現できる。
重力に逆らって好きな場所に飛び出す勇気も無ければ、土地に根を張る勇気も無かった。
中途半端だった。
だから、ふわふわしていた。
今、29歳になり、『ここじゃないドコカ』を探すことは少なくなった。
地に足をつけて生活をしている。
帰るべきところがある。
その環境になってようやく気づいたことがある。
いまなら飛び出しても、きちんと戻ってくることができる。
いまなら、重力に逆らって好きな場所に行くことと地に足をつけて生活することが両立できる。
仕事、世間の目、恋愛、結婚、将来、人間関係、病気。
いろんなしがらみに対して勇気が無くてがんじがらめになっていた俺は、ようやくそのしがらみにケジメをつけて、自由になった。
重力を突き破って、宇宙へ行き、そして地球に帰ってくる。
例えだが、それができる。
さぁ、俺はどこに行き、何を見たいのだろう。
誰と知り合い、何を話すのだろう。
条件は整った。
あとは飛び出す勇気だけである。
そして、たくさんのことを見て知って感じてまたここへ帰ってくる。
そんな循環をしていければいいと思う。
そんなことを思う穏やかな日常の午後。