それは単に、する事がなくて時間が経つのが遅いためで、「あれもしたいからやろう」「これもしたいからやろう」と、なんでも取り組んでいた自分としては非常にもどかしい。
「なんにもしない贅沢」なんて言葉は、慌ただしい日常があってこそ。
脳梗塞の症状は、日本の医療の中では4段階の時期に分けられるらしい。それらは「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」と呼び、入院生活16日目を迎える今の私は「回復期」に入ったようだ。症状は安定し、リハビリで治癒をすすめる時期とのこと。
リハビリは、理学療法士(リハビリ士)と共に行う動作訓練が一日の中で約3時間、それ以外は誰も付き添わない。自主練習というか、要するにヒマを持て余している。回復期に入り、病気に対する気持ちもおちついたので尚更ヒマに感じる。ヒマなのでスマホアプリでワンピースを読む。
歩けるようになったとはいえ、看護師が同行する必要があるので、一人で勝手にフラフラ歩くわけにもいかず、かと言って看護師を呼んで歩くのは申し訳ないので、大概はトイレに行く時か、水を買いに行く時だ。
私は脳神経外科の病棟へ入院していて、病棟の患者の多くは高齢者のため、歩ける人は少なく、寝たきりの患者が多い。そのため、看護師や看護助手は昼夜問わずナースコールの対応に追われる。ひっきりなしで看護にあたる。排泄から寝返り、食事の介助など、もうひっきりなしだ。おそらく新型コロナで医療崩壊しはじめるのは、治療できない段階より前に看護できない段階が来ることなんじゃないだろうか。看護師の人手不足は深刻な問題なのかもしれない。