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『死神』8.死神の危険<1>

2011-07-19 19:09:47 | 小説『死神』
死神

8.死神の危険

<1>

何で、こうなってるんだろ?
「ルリ…ごめん。迅が寝てたから、少し出かけてもいいかなって…!」
ルカが必死に言う。
「うん…悪いのは、ルカじゃないんでしょ?」
私は、それしか言えなかった。
迅のせいでも、ルカのせいでもない。
そう…迅の、お父さんだった。
「迅の叫び声が聞こえて、慌てて部屋に来たら、迅のお父さんがっ…包丁もってて…っ!」
ルカが泣き崩れる。
私も、ようやく事情が分かった。
つまり。
私が龍牙様と会っている時、迅は部屋で寝ていた。
それを見たルカは安心して、外で休んでいたのだろう。
急な仕事で、気も張っていたようだし。
で、迅の叫び声が聞こえて―――――。
「まず。迅の行く病院に行こう。悔やむのはそれからってことで。」
「…うん。」
それで、迅は刺されたんだ。
実の父親に……………。
ルカによると、父親は狂ったように笑っていたって………。
もう、訳分かんないよ…!

「ル、リ…?」
目が覚めると、心配そうに覗き込むルリの顔があった。
その顔を見て、思わず手を伸ばす。
「なんて顔…してんだよ…?」
肩の傷がうずいた。
あぁ…そっか…。
俺、親父に刺されたんだっけ。
「あんたのせいでしょ…!迅のバカっ!」
ルリは、泣いていた。
そんなに心配することねぇのに。
「ルリ…俺、死にそう?」
俺は本気でそう聞いた。
冷たい目になったルリは声も冷たくして言う。
「傷、えぐるわよ。」
「わーっ!ごめん、ごめんって!嘘!今の質問なし!!」
今でも痛いのに!
えぐられたらマジ泣きするよ俺!?
不意に、ルリが俺の入ってるベッドに顔を埋めた。
「…っ、ほんとに、心配したんだから…!」
「ルリ…。」
「良かった…っ、死ななくて、良かった……!」
俺は、しばらく何も言えなかった。

こんなにも心配をかけた自分が、あまりにも情けなくて。


written by ふーちん


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