I~これが私~

風の吹くまま,気の向くまま,ありのままの自分で。

『死神』9.死神の説明<3>

2011-10-27 17:48:52 | 小説『死神』
死神

9.死神の説明

<3>

迅の話で、少し時間をさかのぼる。

ルリとルカが俺の部屋で熟睡していた。
こいつら、俺が自殺しないか見張りに来たんじゃねぇの?
「ま、あれはできるわけだし。」
ベッドから出ると、俺は親父のいる部屋へ向かった。
親父がおかしくなってきたのは、もう一ヶ月前からだ。
まぁわかりやすく言うと、お袋が死んでからだ。
悲しみをぶつけるところがなくて溜め込んで…。
『自分』をわからなくなってる。
だから親父は狂ってしまったんだ。
それから俺は殴られてるわけで。
だから引きこもってたわけで。
いろいろと大変だったわけで…。
「親父…。」
「何の用だ、迅。」
まぁ、それなのに行くのは自殺行為だって?
いやいや、違うんすよ。
「酒。飲むか?」
「…いいだろう。」
一見ふつーだよな。
だけど、親父は酒を飲むことで本心を出す。
寝る直前に。
三つ段階があり、その段階によって親父の行動が変わる。
一段階目…無言。ひたすら無言。
二段階目…暴力をふるう。ここが一番つらい。
三段階目…最終段階。本心をさらけ出す。
で、俺は最終段階を目指して毎晩酒を飲ませていた。
暴力をふるうことが飲酒してなくても多く、俺のことをどう思ってるのかがわからないから、俺は確かめてるだけ。
別におかしなことでもないだろ?
「親父。」
「……………。」
来た、一段階目。
今日こそは最後までやってやる。

本心を知らなきゃ、自殺だ何だって言えないしな。


written by ふーちん


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