I~これが私~

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『同居人は化け猫!』第8章-1

2011-11-07 21:08:01 | 小説『同居人は化け猫!』
同居人は化け猫!

第8章 のほほんな日々

1.第二の『家』 ―鈴蘭―

鈴蘭にとって、羚歌の別荘は『家』だった。
鈴蘭は化け猫で、家なんてもちろんなかった。
実は今まで何人かに自分のことを教えたことがある。
教えられた人は、
『化け猫!妖怪!寄るな気持ち悪い!!』
そう言って、鈴蘭から逃げた。
そして、鈴蘭は思ったんだ。
あぁ、私を受け入れてくれる人はいないのだと。
だからといって、泣くことはなかった。
別に受け入れられなくてもいい。
だって私はそれでも存在しているんだから。
やさぐれていたんだと、思う。
でも、冬夜にあう前に言われたあの一言はキツかったかも。
『妖怪なんぞ、存在する意味などない。』
その時のことを思い出して、鈴蘭は自嘲の笑みを浮かべた。
あの時初めて泣いたんだっけ。
本当にあの時は魂が抜けた。
存在しているのに、存在している意味がない、なんて。
自分は要らない―――そう言われているようでいやだった。
そんなこと考えて、絶望して、ふらふら歩いていたら目の端に映ったまんじゅうがうまそうで。
で、そこは羚歌の家だった。
冬夜にあって……。
不安だった。
たぶん彼も、私のことを受け入れてくれないんだろうって。
でも、彼は。
『自分で世話するなら飼ってもいいわよ。』
と羚歌に言われたのを喜んで、さらに同居を許した。
ふざけてんのか、からかっているのか、と思った。
飼うとか言っていじめる気なのかと、最初は警戒した。
しかし、冬夜は鈴蘭に向かって、屈託なく笑って。
あろう事か鈴蘭のワガママにも苦笑しつつ付き合っていて。

彼なら、大丈夫だ。

鈴蘭は知らぬ間に、冬夜を自分の安全地帯と認めていた。
自分のいることを認めてくれる人。
そして、その冬夜の実家も鈴蘭を受け入れた。
冬夜と同じ、笑顔で。
冬夜の家族だからなぁと、納得できる。
だからここも、鈴蘭の『家』になる。

自分がいてもいいんだと。
鈴蘭がここにいることを認めてくれる、第二の『家』に。


written by ふーちん


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