I~これが私~

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『死神』3.死神の壁<1>

2011-03-24 23:06:26 | 小説『死神』
死神

3.死神の壁

<1>

「楓さん!大丈夫ですか!?」
数人の看護師が部屋に来た。
楓さんの様子を知り、慌てて来たのだろう。
呆然と見てると、ルカが言った。
「ルリ、楓さんの願い、叶えるよ。」
「絶対、やんなきゃだめ…?」
「はぁ?普通でしょ。」
「う…。」
やらなきゃいけないのは分かってる。
もしかしたら自分のせいで楓さんが死んでしまうかもしれない。
たとえ、それが本人の望んだことだとしても、自分は…人を殺すことになるのだ。
私は、静かに――出来るだけ冷静に――ルカに聞いた。
「ルカ、楓さんを助ける方法って何?」
それでも、声が震える。
「えーっと、魂の糸――あそこに見える銀色の糸。あれを体から出てる金色の糸と結び合わせるの。体見えるでしょ?――って、ルリ、まさか!?」
「ごめん、ルカ。その『まさか』なんだ。」
「ちょ、待ちなさい!」
広い病室のすみっこらへんに浮かんでいたルカを置いて、私は楓さんのベッドに近付いた。
きれいな銀の糸は金の糸から離れそうになっている。
結び目がかなり緩い。
「楓さん、今助けるから…。」
一種の暗示のように呟きながら手を伸ばした。
「バカ!」
スパン!いい音(?)がして、ルリの手に鋭い痛みが。
隣でルカが息を荒くしている。
その時、声がした。
「…ルリちゃん、やらないで…。」
ルカの声じゃない。
それは楓さんの声だった。
「どうして…?」
私はただ呆然とするばかりだった。



written by ふーちん


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