最後に読み終えたのは、二十歳を越えたころだったと思います。
六巻まであったので(最後の
六巻がでるまで)、時間差があったのですね。(最終的には、七巻まであったかなぁ。)
内容は、日本における被差別部落の…
そこに生きた主人公たちの、子供から大人になるまでの、精神の成長の物語といっていいでしょう。
私はこの本で、被差別部落での差別の実態というものを知りました。
主人公は、(差別のなかに生きるしかないという)幼いころからの原体験をへて、差別の非合理性や非人間性を、世に訴えるという精神の成長を、(巻が進むなかに)遂げることになります。
私はけっこう、夢中になって読んだという記憶があります。
私は子供のころから内気で、どちらかというと、無口なほうだったと思います。
ですから、自分を主張するとか、アピールするなどということは苦手でした。
また、主張するような自分の考えや、強い思いなども、なかったように思います。
そんな自分でしたが、この橋のない川の主人公が、成人するにつれ、差別の矛盾、差別される側の心のうちを、ちゃんと言葉に置き換えていく過程に、とても衝撃をうけました。
まだまだ、高校生ぐらいで、主張するような原体験などもありませんでしたが、思いを言葉にすることの大切さを知り、その意味では、私はこの本を読んで変わりました。
この本のように、本に感化されて、変わったという体験は、ちょっとほかにありませんね。
ただ、少し理屈っぽくなりすぎて、周(まわ)りはすこし迷惑をかけたかもしれません。
でも、今はなるべく、理屈を少なく、直感を信用して。
そして、なるべく無心になるよう、心がけています。
とくに今は、気分がのらないときほど、感謝するようにしています。
そうであっても、若いとき、この本に出会えたことは、今でも感謝していることの一つです。