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とみしゅう日記

お嬢さん

【注意】
このブログでは、映画『お嬢さん』のネタバレをします。
本編を鑑賞されていないかたは、お気をつけください。

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いやー、すごかった。
前評判に違わぬ面白さ。
どんでん返しがあるというのを事前に聞いてしまったのは残念だったけどね…

この手の映画は、確かに紹介が難しいよなぁ。
映画は全部で3部構成になっていて、第1部と第2部の終盤にそれぞれ「どんでん返し」が潜んでいるという、大掛かりな構成。
それが本作の魅力になっていることは確かだけど、「この映画にはどんでん返しがあるんだよな」ってことを知っていると、ついついいろんなところを疑ってしまうことになる。
下手をすると、「あれ、これって、ひょっとしたら…」と仕掛けに気づいてしまって、「ああ、やっぱりな…」と確認作業になってしまうこともある。

これは、初見としてはあまり楽しくない。
僕はもともと勘働きが悪いほうだから、ほとんどが驚いて終わるんだけどね。
それでもごくまれに、「あ、これって…」なんて気づいてしまうことがあって。
そういうときは、なんか損した気分になるんだよなぁ。
2回目以降の鑑賞だったら、それでいいんだけどさ。

まあね、人にはそうやって勧めたくなるよね。
「この映画さ、実はね…」ってニヤニヤしながら言いたくなるんだけど、それはやっぱりやめたほうがいいと思う。
とはいえ、ただ漠然と「面白かったからぜひ観て!」という一辺倒も、芸がないことは確かだし、説得力にも欠けるわけで。

本作の『お嬢さん』については、どんでん返しがあることは知っていたけど、ストーリーの細かいところは知らなかった。
予告編は劇場で何度か観たけれど、女性同士の絡みがフィーチャーされていて、「道ならぬ恋の顛末なのかなぁ」くらいの印象だった。
現代ではない感じだったから、女性同士の「秘めた恋」が許されないような封建的な時代で、その中で展開される悲劇なのかな?とも思っていた。

それがね…
まさか、ここまで変態的な要素が強いとは (^_^;)

大金持ちの令嬢・秀子と、その秀子が受け継いだ遺産を騙し取ろうとする詐欺集団の一員、スッキ。
同じく詐欺集団の1人、藤原伯爵に秀子を誘惑させ、結婚して遺産をものにするという企てがあり、秀子の侍女としてスッキが屋敷に送り込まれる。
ところが、スッキと秀子が恋仲になってしまい、一味の目論見が狂っていくわけだ。

秀子の後見人である上月は、いかにも怪しげな男。
上月と秀子には、公にはできない秘密があるらしい。
映画のテイストからして「性の奴隷」みたいなことかな…と1部の中盤くらいまでは思っていた。


まんまと藤原伯爵の策にはまり、駆け落ちの約束をする秀子。
しかし、すっかり秀子に心奪われてしまったスッキは、2人に嫉妬すると共に、当初の目的である「秀子を精神病院送りにする」という企みに嫌気がさしてくる。
とはいえ、いまさら何もかもご破産にすることはできない。
ついに精神病院へとやって来る3人。
ところが、なぜか病院に連れ込まれたのは、秀子ではなくスッキだった…

で、第2部。
第1部はスッキ目線だったけれど、第2部は秀子の目線で描かれる。
叔母と共に上月に養われ、とんでもない教育を仕込まれる秀子。
「朗読会」と称して、変態趣味を持つ金持ちの日本人男性を集め、古今東西の性的な文献(色本やSM小説など)を秀子が日本語で読み上げる。
ときに男たちは秀子に鞭で打たれ(あるいは鞭で打たれる妄想だけ?)、それぞれの性欲を満たす。
その客の1人が、あの藤原伯爵だったのだ。

秀子が相続する遺産に目をつけた藤原伯爵は、上月の目を盗み、秀子にある企てを持ちかける。
それは、この屋敷を抜け出し、秀子に自由を与えること。
その代わり、秀子が受け継ぐ遺産は2人で折半。
そのための協力者として、スッキが送り込まれる。
しかし、本当の狙いは、スッキを秀子の身代わりとすることにあった。
スッキは、騙す側ではなく、騙される側だったのだ。

ところが、ここで想定外のことが起こる。
秀子とスッキが心も身体も深い関係になってしまった。
互いに不遇の身。このままでは男たちに搾取されるだけ。

そこで、さらなる裏切りが起こる。
秀子とスッキが手を組み、上月と藤原伯爵を騙し、金と自由の両方を手にしようと新たな企てを起こしたのだ。

第3部。
精神病院送りになったスッキは、詐欺仲間たちの協力により、見事脱走に成功する。
一方、秀子は藤原伯爵に一服を盛り、金を持ち出すことに成功する。
追っ手もなんとか交わし、船で海外に逃亡する2人。

藤原伯爵は上月の追手に捕まり、屋敷に監禁される。
上月の拷問を受け、片手の指をすべて切り落とされる。
意識が朦朧とする中、秀子との初夜のことを上月に問いただされ、タバコを吸いながらその夜のことを話し出す藤原伯爵。
しかし、2人の間には肉体関係はなく、初夜にしても、秀子は道具を使って自慰をしただけだったのだ。
地下の拷問室で倒れる上月。
藤原伯爵が吸ったタバコには水銀が仕込まれていたのだ。
自暴自棄となった藤原が、上月を道連れに自殺を図ったのである。

スッキが秀子と屋敷を抜け出すとき、書庫にあったおびただしい数の性的文献を目にする。
怒りに震えたスッキは、主だった文献すべてを引き裂き、インクをかけて、水浸しにする。
まるで、彼女たちを搾取しつづけてきた男たちに復讐をするかのように。

ラスト。
秀子とスッキは裸で抱き合う。
性具についた鈴がチリリと鳴る中、喜びと愛おしさに満ち溢れて互いを愛撫する2人。
男に奪われることなく、互いをいたわる2人の強烈な意思表明、とでも言うべきなのか。

『アナと雪の女王』と同じく、本作も「王子様と王女様が結ばれました」的な展開ではなく、「性別にかかわらず、あなたの大切な人とともに生きましょう」という真っ直ぐなメッセージが感じられた。
書庫をめちゃくちゃにするシーンも、けっこうなカタルシスがあった。
サディスティックに女性を痛めつけることが愛情なわけないだろう!っていう正しいツッコミというか、報復のビンタというか。
愛しているなら慈しみなさい、ってことだよね。
R18+ではあるけれど、描いていることはしごく真っ当という印象の映画でした。
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