タイトル | 順位 | 感想 |
ラ・ラ・ランド | 1 | 魂を揺さぶられた一作。オープニング、エンディングの衝撃、いまだ醒めやらず。単純なハッピーエンディングではなく、だからこそミアとセブの2人の人生に幸あれと祈らずにはいられない。本当に美しい映画だった。 |
同じ映画を連続で4回観たのは、本作が初めてです。
それくらい心を撃ち抜かれた映画でした。
オープニング。
名曲『Another Day of Sun』と共に描かれる高速道路上の群舞シーンは、あたかもワンショットで撮ったかのような見事な演出。
踊る人々は、経済的には決して裕福ではない層、つまり「私たち」なのです。
その「私たち」が映画を観ながらさまざまな夢を描く。
嫌なこと、つらいこともいっぱいある。
でも、明日はきっといいこともあるだろう。
明日は今日とは違う日なのだから。
そして、夢のような群舞が終わり、カメラは渋滞中の車列の1台、ミアの車にクローズアップする。
この物語は「私たち」の物語なのだということがよく分かる、見事な演出です。
オーディションに失敗続きのミアを励ますように、パーティに誘う女友達。
これまた名曲『Someone in the Cloud』に乗せて描かれるシーンも、溜息が出るほどに美しい。
車に乗り込むために外に出た女性たちが、鮮やかな原色のドレスを翻し踊るシーンは、この世のものとは思えないほどの美しさ。
自分の知らない他の誰かが、きっと自分のことを見ていてくれる。
ひとときの賑やかな宴の中でも、ふと感じる寂しさ。
ここまでのシーケンスで、「ああ、これは一生忘れられない映画になるな」と確信しました。
アカデミー主題歌賞を取った『City of Stars』も、さまざまなアレンジが楽しめます。
セブの伴奏に乗せて、セブとミアが歌うシーンは、2人の絆の深さを感じさせつつ、このあとに訪れる悲劇も予感させます。
そして、そして…
なんといっても、終盤のオーディションのシーンです。
ミアの独唱『Audition』で、僕はまともに画面が見られないほどに号泣しました。
いま思い出しても涙が出てしまうほどに、切なく、美しい。
The Fools Who Dream(夢見る愚かな者たち)という副題には、映画や演劇などの芸術に携わるすべての人々に対する深い愛と尊敬を感じました。
ラストも、いわゆるハッピーエンディングではありません。
しかし、最後の最後でセブが見せた表情で、すべてが報われ、救われます。
誰もが思ったような人生を歩めるわけではない。
得たものもあれば、失ったものもある。
「たられば」は口にすればきりがない。
だからセブはうなずくのです。「これでよかったんだよ」と。
ハッピーエンディングを期待したお客さんにとっては、不満の残る作品だったことでしょう。
でも、僕はこのエンディングが大好きだし、だからこそ生涯忘れえぬ作品に出会えたという喜びに打ち震えているのです。
毎年1回、できればIMAXの大きなスクリーンで、この映画を観たいなぁ。
そして、心ゆくまで涙を流したい。
ミアとセブに会いたい。今の自分の人生を肯定したい。「これでよかったんだよね」と。
大好きな、本当に大好きな映画です。
この映画に出会えて良かった。