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心のノート

道徳の授業で活用されている冊子に『心のノート』があります。

 この存在に気づいたのは最近のことで、実は平成14年から全小中学生に、文部科学省から無料配布されていたのです。検定教科書でもなく、業者が作った副読本でもありません補助教材と名付けて、国が制作したものです。当初の予算は7億3千万円。次年度から年間3億円。思い切った施策に出たものです。写真は小学校5・6年生用のものの表紙です。

 「お父さん、こんな本知ってる?」と、うちの子から手渡されて知りました。B5判フルカラー120ページで、文字も大きく写真も豊富。ノートとして自分の心の記録が綴れるようになっています。

このノートの意義について、制作責任者のある大学教授のことばです。

これからの道徳教育

いま国民全体が不安な状態にいるといわれています。これは価値意識が多様化しすぎていることに起因しているように思います。国民が安心して生活していくには,基本的な価値については共通の価値意識をしっかりと育てる教育をやっていかなければなりません。「心のノート」をもとに,基本的な道徳的価値について共通した価値意識を養っていく。それは安定した国をつくっていくところへつながっていきます。今日,大きな課題として「確かな学力」の育成があります。「確かな学力」を身に付けていくことにおいて必要なのは,子どもたちがどのように生きるかにかかわる目的意識をしっかりもてることです。その生き方にかかわって日常生活や学習活動がとらえられるようになることです。真の学力も「心のノート」の活用を介していっそう培っていけるのです。

確かに、国全体の価値観が多様化して、モラルの低下がみられる昨今です。共通の価値意識、大切だと思います。このノートを見ますと、守れていない大人の行動の方が深刻のように感じます。父母向けのノートも必要かも知れません。

ページのいくつかを紹介します。

同事行の子ども向け展開かと思わせるようなページです。教化資料ではありません。教科書的な冊子なのです。

「あなたの心にあるそのあたたかさ」  人は本来、仏性を宿っているという仏教の如来蔵思想のような、あるいは菩薩心という利他の精神を重んじる大乗思想の展開のような・・・。ここの解説文では、だれにでもある心のあたたかさ、わが国古来の「おたがいさま」という精神を紹介しています。

たったひとつの、かけがえのないものをわたしたちはもらった。・・・・だれにも平等にたったひとつだけ。・・・・何よりも大切にしたいこの「いのち」。(本文より)

「唯我独尊」のような集団の中で輝く自分の存在について書かれています。

 というような画期的な冊子。国が作ったことも驚き。かなりの踏み込んだ思想内容を、かつての教育勅語、国定教科書のように全国で画一的に使用しているのですから・・・。
 調査によれば、無料ということもあって全国の児童生徒の80㌫が使用中とのこと。とりあえず、教材があれば助かる!のは現場教師の本音ですし・・・。
 よくぞやったと評価したいところだが、年金記入漏れ、交通量水増し予想による道路の無駄遣い、業者との癒着による公金の流用・・・と、官公庁への信頼がゆらいでいる中、教育内容のミスは許されないだけに、「おい、だいじょぶかい?」と、つい思ってしまう。制作責任の公正さ、編集スタッフのバランス感覚、指導現場の共通理解、正しい活用法の徹底、広く一般国民への周知と理解・・・と、課題も山積のことであろう。
 小学校高学年でも、「道徳科」の指導は難しく、デリケートな問題も多かった記憶がある。道徳の問題を「どう説くか?」なんてシャレていた(笑)。この心のノートの中学校版は見ていないが、想像しただけでも難しそう。ダイジョブだろうか???

 検定ではなく、国定の性格を帯びているだけに重大。ある宗教団体と密接なつながりのある政党から大臣が出たとすると、その内容への影響、つまり制作責任の公正さなども、気になってくる。
 どちらにしても関心を持って見守る必要はある。


関心を持たれた人に情報提供↓

●『心のノート』は市販されています。

以下の版元に直接電話をかけて注文をすることができます。

小学校1・2年生用 360円
 
文溪堂出版(03-5976-1311)
小学校3・4年生用 370円
 
学習研究社(03-3726-8134)
小学校5・6年生用 380円
 
暁教育図書(03-3825-3302)
中学生用      430円
 
暁教育図書(03-3825-3302)
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