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支流からの眺め

上高地と涸沢(4)氷河の彫刻

 穂高岳周辺には氷河の痕跡がある。今の地球は260万年前から続く第四紀氷河時代にあり、数万年の周期で氷期と間氷期が繰り返されている。現代は間氷期で、最後の氷期は約1万年前に終わった。その氷期には穂高に氷河があったのだ。最近は温暖化が目立つが、周期からはいずれ氷期が来るはずだ。

 氷河に話を戻す。氷河の底部では氷が圧迫で融解して水となり、氷塊は緩徐だが斜面を降りて行く。その際に岩は磨かれ、割れた岩は取り込まれる。落石も氷河の中に埋まる。これらの岩は氷河の末端部や側面に集まり、そこで積み上がる(モレーン)。この浸食と堆積の結果、独特の氷河地形が生まれる。

 南極やグリーンランドにある氷河は大陸を覆う氷床だ。日本の氷河は谷氷河に限られる。国内には7か所で氷河が現存している。即ち、立山の内蔵助雪渓と御前沢雪渓、剱岳の三ノ窓雪渓と小窓雪渓と池ノ谷(いけのたん)雪渓、鹿島槍ヶ岳のカクネ里雪渓、唐松岳の唐松沢雪渓だ。

 氷河が谷を浸食するとU字状になる(河川の浸食はV字谷)。斜面の窪みにできた氷河は斜面を広く丸く削って圏谷(カール)を作る。カールは槍穂高の地域で20か所以上に見られる。その中で最大のものが涸沢カールだ。涸沢ヒュッテが建つのはモレーンの上で、奥には氷河湖(池の平)がある。

 ヒュッテから見上げると、視野全体がカールだ。北穂の頂上直下にも小さなカールがある。涸沢槍のすぐ右手手前の獅子岩(上から見るとホント三越ライオンだ)は、背中の部分が平坦で顔の部分は切り立っている。これも、上流部は岩を磨き下流側は剥ぎ取るという氷河による浸食の結果だ。

 涸沢小屋から前穂高岳の北尾根を眺めると、谷筋に枝状の氷河が想像できる。小尾根の先端部が崖状になっているのは、本流の氷河で削り取られたためだ。北穂への南陵の登り道で振り返ると、横尾谷全体が深いU字谷になっている。これは、厚さ百m以上の氷河が横尾付近まであった証拠だ。


 穂高から槍ヶ岳への縦走路の東側にはカールが続く。あの尖峰と四方に広がる鎌尾根も、氷河で削られて出来たものだ。天狗原カールは氷河公園とも呼ばれ、氷結で割られた巨石、氷食で丸く削られた尾根筋、モレーン、氷河湖である天狗池が身近で見られる。その天狗池に映る逆さ槍も見どころだ。(続く)



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