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支流からの眺め

統一教会を考える

 ある宗教団体(以後は、統一教会と称す)の話題が盛んである。統一教会は1954年に韓国で文鮮明により創設され、今やその活動は世界中に及ぶ。日本では、1964年に世界基督教統一神霊協会として宗教法人の認可を得て、2015年に世界平和統一家庭連合と改称した。1970-80年代にかけて違法または強引な霊感商法が大きく取り上げられたが、その後は余り話題となっていなかった。それが、安倍晋三氏の狙撃事件を契機として再び注目を集めている。

 統一教会の教義の核心は何か。それは、日本国と共産主義をサタンとする侮日と反共、および韓民族の選民思想(救世主が韓国人に再臨する等)である。その根底には、日本と北朝鮮から受けた屈辱に対する教祖の恨(ハン)がある。この構図は、朝鮮人が中華帝国から受け続けた屈辱と朱子学的妄想たる(日本を蔑視する)小中華思想との関係と同じである。迫害から生まれた選民思想はナチズムにも似る。ナチにとってのユダヤ人が統一教会にとっての日本人である。

 侮日は日本人への仮借ない収奪になる。入信時に全財産を把握され、「先祖の罪が贖われていない、朝鮮人の犠牲の上に日本の繁栄がある」等と洗脳される。この理屈は、日本人の自責傾向と朝鮮への加害者意識(自虐史観による罪悪感)に合うのだろう。かくて、霊感商品を購入し、自己破産的な献金をし、韓国人男性の精子を受入れ、「祝福」されることになる。強烈な洗脳と執拗な要求に、多数の被害者が身も心も財産ももぎ取られた。裁判等で表に出たのは、その一部に過ぎない。

 その一方、反共の信念を足掛かりとして、岸信介を初めとする保守派政治家との関係を深めた。1968年には国際勝共連合を設立し、「世界思想」を刊行して反共的な活動を行った。政策的には、スパイ防止法制定や憲法改正に賛成、外国人参政権や非核三原則に反対等がある。更には、一致団結した投票行動、無償の選挙協力、人材派遣などで国や地方自治体の政治家に取り入り、代わりに情報や人脈、便宜や利権を得た。但し、侮日の教義は政治家には隠していた。

 現在の問題は、社会問題とされてから半世紀も経つのに、統一教会による日本人の洗脳や収奪が未だに続いていることである。親が信者である二世にも被害が及んでいる。それにも拘らず、政治家は、反社会性や侮日性は見ぬふりをして、その力を利用してきた。政治家の関与は統一教会の社会的信用性を高め、結果として布教活動を支援した。知ってか知らずか、教団に利用されていたのである。安倍晋三氏も加担したとされ、日本では珍しく、死んだ後まで糾弾されている。

 統一教会の本態は何か。教書にはアダムとエバ、原罪、サタンなど聖書の言葉が出てくる。しかし、三位一体やイエスの復活を否定し教祖をメシアの再臨とするなど、(文化庁の分類と異なり)キリスト教系団体ではない。それは、キリスト教を擬態しながら信仰と称して違法行為を行う反社会的な組織、即ちカルトである。オウム真理教には1996年に解散命令が出たが、統一教会は宗教法人のままである。これは行政の怠慢なのか。万一政治介入の結果であれば、それは重大な国民への背信行為である。

 信教の自由を認める日本では、宗教団体と政治家が関係を持つこと、宗教団体が政党を支持することは、他の団体と同様に許されるだろう。国民としての権利は宗教や信条によらず同等が原則である。この信教の自由と統一教会への規制を両立させるには、統一教会の宗教団体としての仮面や擬態を剥ぎ、それをカルト集団・反社集団として監視・規制の対象とすればよい。宗教団体には公共の福祉に反しないことが特に求められるだろうに、統一教会はそれに悖る。

 教義を国情で使い分ける点も、宗教団体でない証左である。韓国では侮日で官憲の支援を得、北朝鮮には反共を隠し、日本や米国では侮日を隠して反共を打ち出す。共通するのは、洗脳した信徒を使役し、強引な献金や商事業で得た資金を利用して政治家に取り入ることである。その先にあるのは教会による世界支配で、これが真の狙いであろう。こう見れば、統一教会は政教一致の独裁政権を目指す国際的な政治結社となる。まさしく地下帝国のカルトである。

 中露などの独裁国家では、統一教会の力は弱い。独裁者はカルトに自分と同じ邪悪さを感じ取るのだろう。これ対して、あのオウム事件にも懲りていない日本人は甘すぎる。カルト対策法等の導入も検討されようが、むしろこれを奇貨として政治や宗教活動の透明性を高めれば、民主制度の発展に益するだろう。例えば、宗教法人に低率で課税し、会計を明朗化するとともに国税局の強制調査を可能にする徴税制度も有効に違いない。この期に及んで、行政の無作為は許されない。

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