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支流からの眺め

ワクチン接種に伴う騒動―不安に惑溺

 日本でも武漢ウイルス感染症(WARS)に対するワクチン接種が始まった。これで流行の勢いは大きく(人間に都合の良い方に)変化するであろう。しかし、新たな騒動もまき起こっている。

 WARSワクチンに関しては、様々な憶測や疑惑が囁かれてきた。有効性が過大に評価されている、重大な副反応を隠ぺいしている、などの効果や有害事象への懸念、有害物質やマイクロチップが混入されている、中身がmRNAであることから、注射すれば遺伝子が改変される、別の遺伝子を導入するよう操作されている、などの陰謀論があった。副次的ではあるが、接種を機に国や国際企業が個人情報を管理しようとしている、開発国がワクチンを国際関係の取引に利用している、ワクチン業界が法外な利益を上げようと画策している、などもある。

 しかし、医療関係者や高齢者への優先接種が実際に始まると、上記の憶測や疑惑は話題から消えて、接種を早く行うことに話が移った。すなわち、先進国の中では日本がもっとも遅れている、接種を早く済ました国では行動制限を緩和して市民生活が戻ってきているではないか、今までのワクチン開発に対する日本の医療行政は間違いであった、配給方法が合理的でない、などである。高齢者への接種では、予約や問い合わせの電話やWebがつながらない、家族を総動員して電話をかけまくる、かくて接種会場に人が押しかけて密になる、などの混乱もみられた。

 解凍したあと再冷凍してワクチンを無駄にした、うっかり生理食塩水だけを注射した、などの技術的な間違いも大罪として報道される。ワクチンの端数の扱いでも現場は困っている。優先接種対象でない人が、地位(市長や町長など)やコネ(業務上の利益関係)を利用して、抜け駆け接種をしたことも大きく報じられた。医療関係者だけでなく、保育所、学校、高齢者施設などの職員も優先すべき職種だが、逸脱は許さない。とにかく早く国民に接種を済ませばよいのに、日本人の生真面目さで、細部に目が行き届きすぎて動きを悪くしている。

 このような有様を、マスコミは恐怖や不安を煽りたるように報道する。怖いもの見たさで視聴率が上がるからである。また、他人の所業を批判することで自己正当感が得られ、ひと時の不安の解消にもつながる。これが極まれば、やらせともなる。大手の新聞2社の社員が、偽の個人番号を使って集団接種の予約を取ろうとした。予約システムの欠陥を暴くというのが大義らしいが、営業妨害になる、模倣犯を招く、とは考えなかったらしい。コンプライアンスの遵守や報道の公益性はどこへ行ったのか。サンゴ礁への落書き、済州島での白昼婦女拉致などの作話などの前科を想起すれば、納得がいく。

 一方で、日本のWARS流行はさざ波、緊急事態宣言は屁のようなもの、などの発言で内閣官房参与を辞任した人もいる。言葉の意味は無機質な即物的なものに限らない。確かに感染者数は欧米の流行地と比べればかなり低いし、法的な拘束力は非常事態宣言よりはるかに弱い。しかし、さざ波や屁には、即物的な意味だけでなく軽蔑し馬鹿にする情動的な意味も含まれる。低身長とチビでは大違いである。感染者や営業自粛を強いられている商店主は、不快感を禁じ得ないだろう。発言者の地位もある。この騒ぎを裏返せば、それほどに国民の不安が高まっているということであろう。

 日本人は遺伝的に不安に弱いとされている。その上に、不安を駆り立てる報道が繰り返され、不安を打ち消す意見は潰される。しかも国民はマッチポンプを求めている。不安に惑溺しているのである。ここで危惧すべきは、もっと不安な事態である。より危険な感染症が流行する、石油や食料の輸入が滞る、電力供給が制限される、軍事的衝突で国民が殺される、などである。これらは地球上で頻発しているし、明日日本で起こっても不思議ではない。不安に陥る暇があれば、不安に弱いことを自覚して、危機を想定し日頃から準備しておくことであろう。

 幸いわが国は国民の間に一体感が強い。これが不安や恐怖に耐える時の力となる。為政者やマスコミ関係者は、この一体感を育むように配慮し、それを破壊しようとする力にこそ噛みつくべきである。

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