アメリカのルース大使広島訪問
昭和21年1月、ポツダム宣言に基づき連合軍最高司令官マッカーサーが極東国際軍事裁判条例を発布し、戦争そのものに責任のある戦犯を審理し処刑した。この当時、戦争犯罪人とは捕虜の虐待や殺傷のように「通例の戦争犯罪」を犯したものを指し、戦争すること自体が犯罪とは考えられていなかった。裁判の手続きも問題であった。
そのアメリカは、昭和20年3月の東京空襲以後、本土の主要都市の一般市民を空襲で殺傷した。広島・長崎には警告なしに原爆を投下した。戦後も、ベトナム戦争のソンミ村虐殺事件、イラクで刑務所に収容されていたイラク兵の虐待、キューバのグアンタナモ基地に収容されているテロ容疑者に対する虐待など数々の戦争犯罪を犯したが、いずれも末端の兵士に責任をかぶせて誤魔化した。 日本に対しては現場の指揮官、軍司令官、戦争を開始、実行した政府や軍部の指導者を処刑したが、自国の国防長官、大統領の責任を追及したことはない。
オバマ大統領は、ノーベル平和賞を受賞するが、彼が広島に来れば、原爆投下という重大な戦争犯罪を行った国の大統領であるから、単なる訪問は許されないだろう。終戦後の対日政策だけでなく、アメリカが犯した数々の戦争犯罪を糾弾される契機となる可能性がある。したがって、オバマ大統領が広島に来ることはないだろう。先日、駐日大使が広島に来たのは、そのような考慮のもとで日本側の感触を探るとともに対日世論工作の一環として訪問したのだろう。
アメリカはかってな論理で敗戦国日本を裁いた
昭和21(1946)年1月22日、ポツダム宣言に基づき連合軍最高司令官マッカーサーが極東国際軍事裁判条例を発布し、戦争そのものに責任のある主要戦犯を審理することとした。満州事変からシナ事変、大東亜戦争に及ぶ17年8ヶ月間、日本を指導した百名以上の戦犯容疑者の中から28名が被告に指定され、市谷の旧陸軍省参謀本部に開設された。
裁判官および検事は、降伏文書に署名した9カ国とインド、フィリッピンの計11カ国の代表で構成され、裁判長は、オーストラリアのウエッブ、主席検察官はアメリカのキーナンで、彼の下には通訳を含め百名以上の人員をそろえていた。一方、弁護側は28名に対する主任弁護人がそろわず、2人の被告を兼任するものが4名いるなど不公平であった。
5月に開廷した法廷で朗読された起訴状において、第一類 平和に対する罪、第二類 殺人、第三類 通例の戦争犯罪および人道に対する罪に大別され、55項目に及ぶ罪状が挙げられた。この裁判では、戦争の計画や開始そのものの責任を問う「平和に対する罪」を設けられた。
6月4日、キーナン主席検事は南京事件、泰緬鉄道を巡る大量虐殺などの残虐行為に関して「正義を伴わぬ文明は背理であり、この裁判の要求は、実に文明と、人間存在の要求である。」とし、個人の責任もまぬがれることが出来ないと述べた。
弁護団は、戦争は国家の行為であり、個人責任は問えないと異議の申し立てを行ったが、個人を罰しなければ国際犯罪が実効的に阻止できないとの理由で、裁判所はこれを却下した。判決について、インド、オーストラリア、フランス、オランダ、フィリッピンの5判事が少数意見を提出、異議を記録にとどめた。特にインドのパル判事は、裁判の違法性と非合理性を指摘して全員無罪を主張した。
極東軍事裁判はポツダム宣言の「我らの捕虜を虐待せる者を含む一切の戦争犯罪人は厳重に処罰されるべし」の文言が根拠とされ戦争責任が追及された。しかし、この当時の国際法では、戦争犯罪人とは捕虜の虐待や殺傷のように「通例の戦争犯罪」を犯したものを指し、戦争すること自体がが犯罪とは考えられていなかった。裁判の手続きも問題であった。裁判官、検察官の構成は戦勝国と独立前のインドとフィリッピンであり裁判の公正は期待できなかった。
「平和に対する罪」は、「侵略戦争を計画、準備、開始または実施する行為、もしくはそれらの共同謀議への参加」と定義されたが、国際法上「侵略戦争」の定義は、明確でない。1928年の不戦条約は「国際紛争を解決する手段としての戦争」(=侵略戦争)を禁じたが、自衛のための戦争を禁じてはいない。戦争が自衛か否かの判断は、当該国の判断にゆだねられ自衛戦争か否かは、各国が自国に都合よく解釈でき侵略か自衛かの区別は、あるようでないのが実態である。
国際裁判所条例制定時の論議
極東軍事裁判は、「平和に対する罪」と「残虐事件の罪」をともに刑事犯として裁いた。「平和に対する罪」は、当時の国際法の規定になかったが、昭和20(1945)年6月、アメリカ、イギリス、フランス、ソ連がロンドンで会談して国際裁判所条例を作り、その中に事後法として創設されたものでだった。
アメリカ代表ジャクソンは侵略の定義を提案したが、他の代表は容認しなかった。ジヤクソソがトルーマソ大統僚に提出した雑告書によると、下記のような状況であった。
「(1)他国に対する宣戦布告
(2)軍隊をもって他国の領土に対する侵略
(3)陸軍、海軍または空軍をもって他国の領土、艦船または航空機に対するこ攻撃
(4)他国の沿岸または港湾に対する海軍による封鎖、
(5)自国内にて組織された他国の領土に侵入した武装集団に対する援助を与える等の行為
政治的、軍事的、経済的そのほかいかな考慮も、これらの行為に対する弁護、またはこれを正当化する理由とはならないものとする。ただし、適法および自衛権の行使、すなわち、侵略行為に対する抵抗、または、侵略を受けている国を援助する行為は、侵略戦争を構成しないとする。」
これに対し、フランス代表ロゲは、「われわれは侵略戦争を開始することは犯罪となるべき違反行為でないと考える。もし、われわれが、ここで戦争を個人の犯罪行為であると宣言するならば、われわれは現行の法律を越えようとしていることになる。
われわれは、今後幾年間かに侵略戦争を開始する国家はそれがいかなる国家であれ、道徳的に、また、政治的に犯罪責任を負わされるであろうと考える。 しかし、今日現に存在するままの国際法を基礎とすれば、こういう結論を出すことは正しいことではないと信ずる。
ある国が侵略戦争を開始し、その戦争を国際法の原則に従って遂行しない場合、侵略戦争を開始するというだけでは犯罪にならない。
・・・・この問題は、国際連盟でもしばしば論議されたところである。侵略戦争が国際犯罪であり、結果として、侵略者は、その侵略によって他人に与えた損害を賠償すべき義務を負うということが、しばしば言われたのである。しかし刑事的責任は認めていない。」と主張した。
この主張に、イギリス、ソ連の代表も同意をした。個人に刑事的責任を問えないとするのが、多数であった。
また、侵略の定義も定かでなかった。不戦条約締結時、アメリカのケロッグ国務長官は、アメリカ議会に批准を求めるとき、「この条約は政策の手段として戦争に訴えること、すなわち侵略戦争は放棄したが、自衛の戦争は放棄していない。アメリカの安全が脅かされたり、権益が侵されたりすれば、アメリカは決然立って自衛の戦争を行うことが出来る。そして何が自衛であるかは、アメリカ政府が決定し、他の何者の指図を受けなるものではない。」との解釈を示している。
日本が行った一連の戦争を侵略と決め付けても、当時の国際法上これを犯罪とすることは出来ない。然るに極東軍事裁判では、日本の戦争を侵略とし、有罪と断定した。アメリカという国は手前勝手な、いい加減な国であることが良く分かる。
原爆で消滅した広島市の惨状
(原爆資料館、模型)
赤い球体は、原爆の火の玉を示す
アメリカの侵した戦争犯罪は誰が裁くのか
昭和20年3月10日、東京・下町一帯が米軍の無差別爆撃で10万人が死亡した東京大空襲が行われた。8月6日と9日には広島、長崎に原爆が投下された。
米軍の長距離爆撃機B29による本格的な本土空襲が始まったのは、昭和19年(1944年)年夏以降だ。当初は、軍需工場などに目標を絞った精密爆撃だったが、20年1月、米極東空軍司令官にカーチス・ルメイ少将が赴任してからは、住宅密集地などを標的にした無差別爆撃に切り替えられた。
それは、まず、爆撃目標地域の周囲に焼夷弾を投下し、逃げ道を塞いだうえで絨毯爆撃を加えるという非人道的な方法だった。無差別爆撃は東京大空襲の後も、大阪、名古屋などの大都市や地方都市にも行われ、広島・長崎の原爆被害を含めると50万人以上の民間人が犠牲になった。
地獄! アメリカが広島にもたらしたもの
1922年、ハーグで日米英などの法律家委員会が作成した「空戦に関する規則(24条)」は未発効ではあったが、軍隊や軍事施設以外の目標に対する爆撃を禁止していた。東京大空襲や原爆投下を、当時の米国政府は「戦争終結を早めるため」などと正当化したが、日本の敗色が濃厚な時期に、非戦闘員を標的にした都市爆撃は必要ではなかった。
昭和20年3月の東京爆撃以後、本土の主要都市に無差別爆撃を行い一般市民を殺傷した。アメリカは日本がソ連を通じた和平への試みを知っていながら原爆を投下した事実は、原爆がソ連との政治的戦争の道具だったことを示している。
アメリカは、ベトナム戦争でソンミ村虐殺事件を起こした。戦争に従事していないソンミ村の村人を虐殺したが、これを自国の裁判にかけたか。アメリカ兵は、イラクで刑務所に収容されていたイラク兵を虐待したが、末端の兵士に責任をかぶせてごまかした。現場の指揮官、軍司令官、戦争を開始、実行した国防長官、大統領の責任を追及したことはない。
キューバのグアンタナモ基地に収容されているテロ容疑者に対する虐待についても同じだ。アメリカは、自国の犯した戦争犯罪にダンマリを決め込んでいる。
住宅密集地に投下された原爆の煙
(原爆資料館の展示写真)
1945年 原爆投下を検討した暫定委員会の結論
「労働者の住宅を含む軍需工場に、できるだけ早く警告なしに使用されるべし。」
警告なし。これは、非戦闘員を抹殺する重大な戦争犯罪!
戦争終結を早めるための投下だった!関係者の発言
●トルーマン大統領
「ソ連が参戦すれば日本はお手上げだ。」
(1945年7月17日 ポツダム会談初日)
「原爆を投下すれば、ロシアがやってくる前に日本はお手上げだ。」
(翌7月8日 原爆実験成功の電報を受け取り)
●スチムソン陸軍長官(原爆投下責任者)
「(投下の目的は)満州に侵攻したロシアが日本に到達する前にで きるだけ早く降伏を実現することであった。」
スチムソン陸軍長官は、ルーズベルト大統領(ユダヤ人)のドイツ人を抹殺したいとの執念には断固阻止するつもりであったが、日本に対する原爆投下責任者となった。
●バーンズ国務長官
「原爆は日本を打ち破るために必要でなく、ソ連を最もコントロールしやすくするためだった。」
●マッカーサー
「私の幕僚たちは一致して日本は崩壊と幸福寸前の状態にあると判断していた。原爆投下は軍事的にみれば全く不必要である。日本は降伏を準備している。」
●米戦略爆撃調査団の報告(1946年)
「原爆が落とされなかったとしても、ソ連が参戦しなかったとしても確実に1945年11月の九州上陸予定日までに、日本は降伏した だろう。」
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