韓国、国連安保理制裁提起へ、
英、豪も支持したが、中露は慎重姿勢
今年の3月26日、黄海で韓国海軍の哨戒艦は船体中央で真っ二つに切断、沈没した。韓国と米英などの共同調査団は、「黄海の北朝鮮海軍基地で運用されていた一部小型潜水艦艇とこれを支援する母船が天安攻撃2、3日前に黄海海軍基地を出航し、天安攻撃後2~3日後に戻ったことも確認された。・・・・・魚雷は北朝鮮の小型潜水艦艇から発射されたという以外に説明できない。」(5月20日、韓国・民間合同調査団発表「韓国哨戒艦沈没の調査結果」)と結論付けた。北朝鮮の魚雷攻撃が沈没原因と断定する調査結果を公表したことを受けて、韓国の外交通商省は、5月20日「国連憲章に違反する。厳正な措置をとる」と述べ、国連安保理への提起など対北制裁に向けた準備を本格させた。
ホワイトハウスも5月19日、声明を発表し、韓国哨戒艦が北朝鮮の魚雷攻撃で沈没したとする調査結果を全面的に支持し、攻撃が朝鮮戦争の休戦協定違反にあたると主張、対北制裁で韓国と同一歩調をとる姿勢を明確にした。イギリスのヘイグ外相は5月20日、声明を出し「韓国政府が考えている多国間での対応策に協力する」と韓国を後押しする考えを示した。来日中のスミス豪外相も5月20日、都内で記者会見し対北制裁を強く求めている韓国を「強く支持する」と述べた。
その一方、中国は、冷静な対応を求めている。ロシアも「評価を下す前に調査結果を精査したい」と述べ、慎重に対応する姿勢を示した。
中国 冷静に、露は慎重姿勢、その背景は?
事件発生海域にアメリカの原潜が潜っていたことは報じ
られていない。韓国の「哨戒」艦は、単に海面を巡航するだ
けでなく、哨戒=敵と味方を瞬時に識別する能力を備えて
いるはずであり、敵・味方の艦船の動きを察知していなか
ったはずがない。哨戒艦の沈没事件について韓国の発表
が事件の全貌を明らかにしたといえるのだろうか。不自然
さが残る。自国に都合の悪いことを表に出す国はない。アメ
リカ、イギリス、オーストラリアの情報機関は、”同じグルー
プ”である。韓国の情報機関はアメリカが育てた。日本の”情
報機関”は、いたって”弱い”。日本独力の情報収集能力と戦
略が国家存立の基盤をなすが、これが実に弱い。
鳩山首相が日米対等を唱えても、”盲人”(日本)が遠くまで
見通せる人(米英)と暗夜を歩めば、導かれるままに歩むこと
になる。日本は先頭を走れない。
日本はつんぼ桟敷
気付いてみたら一人ぼっち、蚊帳の外
沈没事件の調査に加わったアメリカは当然であるが、朝鮮半島から遠いイギリス、オーストラリアは韓国を支持した。調査に不参加で国境を接し北朝鮮に利害を持つ中露は慎重である。
新聞に「韓国は安保理制裁を提起、日本、中国に協力要請・・・・」の文言が有る。一番“弱い”のは日本=抑止力を“学び”つつあるレベルの鳩山首相である。
日本は、事件の調査に参加していない。韓国にとっては軍事機密が絡むから調査内容を鳩山政権に知られたくないだろう。理由は、大きく3つ。一つは、鳩山首相そのものが安全保障に無知・いい加減なので相手にならない。2つ目は、鳩山政権・民主党など与党はどれも情報管理に無関心で情報の垂れ流し体質。3つ目は韓国の仮想敵国は、北朝鮮であるが、北朝鮮と同じような比重で日本も仮想敵国である。竹島問題の対応、韓国の海軍、空軍の装備は、北朝鮮だけでなく日本の海空自衛隊を意識したものを導入している。日本は韓国の隣国であるが、調査に加えられなかった。更に、米韓から鳩山首相に事件の詳細が伝えられたのか?黄海の事件発生の海域は、アメリカの原子力潜水艦が潜伏し、有事に必要であれば北朝鮮にミサイルを撃ち込む体制をとっていた。韓国が潜水作業で捜索を急ぐあまり犠牲者を出したが、これは米韓が“機密情報”の漏洩防止のため捜索を急いだからだ。鳩山首相は、真相を伝えられたのだろうか。「日米対等」はどうなったのだ!
来日中のオーストラリアの外相、国防相が5月20日、11時20分から昼まで首相官邸で首相と面会した。この面会時間では、事件の調査結果についての話があったとしても、大まかなことしか伝えられなかっただろう。
日本の隣国で起こった軍事的事件で日本の安全保障に大きく関係するにも関わらず日本はつんぼ桟敷である。気付いてみたら日本は一人ぼっち、蚊帳の外である。
(参考)9月から日米 新たな布陣か、民主”政権”一夜漬け政策で混乱、そして破綻 2009年07月27日
格好いい言葉に酔った鳩山首相
ヒラリーに合ってもらえると分かった鳩山は舞い上て出来もしないことを口走った。鳩山政権は、「北朝鮮船舶検査法」も成立させられなかった。にもかかわらず格好のいいことを口走ってしまった。
鳩山首相は、5月21日来日したクリントン米国務長官と首相官邸で会談し、韓国哨戒艦の沈没事件について日米韓3カ国が緊密に連携していくことで一致したとマスコミが報道した。首相とクリントンが会った時間は、約1時間だった。二人が記念写真の撮影に要した時間が数分、二人は通訳を介してのやり取りをしたのであるから会話に要した時間は、1時間もない。会談は、事件の調査結果の概要を簡単に伝え、日米韓3カ国が緊密に連携をとって行こうとの言葉を交わしただけで、鳩山首相、国務長官が情報を共有したというほどでもない。日米関係が緊密であれば、日本の首相にはアメリカ側から周辺国の核兵器の配備状況について概要程度は伝えられるだろうが、最近の鳩山首相の迷走振りを見れば、とても知らせる気にならないだろう。クリントン長官から「米韓のやることに対し足を引っ張るようなことをしないで。」と念押しされたというのが実態だ。そのクリントン長官は、5月24日、25日中国で「米中戦略協議」に臨む。ということは、韓国哨戒艦事件の決着方法も話題になり幕引きを模索する。クリントン長官は25日から訪韓し北朝鮮に対する制裁を話し合う。米中韓の腹の内は、鳩山首相にはどれだけ伝えられるのか。
二人のすれ違う視線、うつろな目つき
友好を演出したが、両者の疎遠さが余計露になった。
ところが、”おめでたい”鳩山首相は、クリントンが面会してくれると知っただけで舞い上がってしまた。5月20日夜、首相は「韓国が国連安全保障理事会に決議を求めると言うのであれば、日本としては先頭を切って走るべきである」と出来もしないこと、言わなくてもいいことを口にした。格好いい言葉に酔うという悪い癖がまた出た。以上のような経緯をみれば「日本が(日本を仮想敵国視している韓国のために)先頭を走る」との首相の言葉は滑稽である。
日本は率先して支持というが・・・・
鳩山政権は、貨物検査法案を成立させなかった
自公政権時代、北朝鮮のミサイル発射や核実験に際して国連の制裁決議に伴って日本も北朝鮮制裁のための貨物検査法を成立させようとしたが、当時野党であった民主党などは難癖をつけて妨害したので貨物検査特別措置法案は昨年夏の国会では会期切れ・廃案になった。
この法案は廃案になった
(参考)船舶検査法廃案、北朝鮮崩壊に備える各国と対称的な日本 2009年07月14日
鳩山政権は、社民党の慎重論に配慮して10月14日、対北制裁の貨物検査法案の国会提出を見送る決定をした。
10月22日、北朝鮮に対する融和的姿勢の批判を避けるためということで岡田外相が巻き返し、「北朝鮮貨物特別措置法案」を10月26日召集の臨時国会に提出することを決定した。これまた、会期切れで成立せず廃案になった。
「貨物検査法案」は成立せず国会閉会、越年
社民党は自衛隊が関与することに反対で法案に慎重であったが、これに配慮しただけでなく、北朝鮮の金正日が核開発議題を巡る6ヶ国協議への復帰に柔軟な考えを中国の温家宝首相に示したことで、与党で法案提出を避けるべきだという意見が強まり、見送りを決めた。これについて北朝鮮が核放棄に向けて動き出す兆候も無いままに法案提出を見送ったことで、鳩山政権は関係各国から理由の無い「譲歩」と受け取られた。
国連安保理の非常任理事国,主役は日本
鳩山首相「北朝鮮制裁を率先して支持」と言うが 、何が出来るのだ!
辺野古基地問題で迷走、鳩山首相、小沢幹事長のカネの問題の対応に追われて有事対応の準備がごてに回ったため「貨物検査特別措置法」は、今月20日衆議院を通過した。月内に成立の予定である。この法律は、社民党に配慮して検査の実施主体は自衛隊をはずして海上保安庁に限定したため北朝鮮軍の艦船に対処できない。”ザル”法である。朝鮮半島有事における自衛隊と米軍の関係についても具体的な手順が定まっていない。
鳩山首相が、「韓国が国連安全保障理事会に決議を求めると言うのであれば、日本として先頭を切って走るべきである」と言っても、社民党に弱く、中国に篭絡された小沢一郎に“お伺い”をたて了解を受けなければ何も出来ない。両者とも鳩山首相にすんなりと同調しないだろう。日本政府は、北朝鮮制裁のための実効有る船舶検査が出来ない。何もかも後手後手、泥縄的対応である。
日本は現在、国連安保理の非常任理事国である。アジアの国で非常任理事国になっているのは日本とトルコである。トルコは、イランの核開発問題でアメリカとは一線を画し同じく非常任理事国ブラジルと共に、イランの使用済み核燃料をイラン国外へ搬出させるべく活躍している。
国連安保理で哨戒艦沈没事件に関する討議が始まれば、韓国の隣国である日本の対応は、事件の調査には地球の裏側のイギリス、スエーデンも参加したので東アジアだけでなくヨーロッパ各国など世界中から普天間問題の混迷で揺れる日米同盟の行方とともに注目を浴びる。
ところが、肝心の鳩山政権は外交・安全保障についてしっかりした戦略もなく、鳩山首相に指導力がなく無能ぶりは際立っている。民主党が政権を取った直後と違って鳩山政権をめぐる情勢は格段に厳しくなっている。国会日程、参議院選挙、普天間問題「最低以下」の混迷、牛・豚の口蹄疫の蔓延、首相・幹事長や小林千代美議員のカネの問題、内閣支持率の著しい低下など難問山積のため鳩山政権は、その日その日の対応に精一杯で、北朝鮮制裁に向き合っている余裕はない。
このような状況で温家宝首相が5月30日来日する。鳩山首相は、温首相に軽くあしらわれるのではないか。6月にも訪中するが外交・安全保障に疎い鳩山首相は、「北朝鮮制裁を先頭を切って走る」つもりでも老獪な中国指導部に言いくるめられるのが目に見えている。国連安保理で制裁問題が討議される前に腰砕けにならないか。
格好いい言葉を口にして陶酔した鳩山首相が腰砕けの姿を晒せば、米韓の期待を裏切るだけでなく諸外国の信頼も失い嘲笑の的になる。鳩山首相が大恥をかくだけではすまない。日本の国益が大きく損なわれ、国際社会のおける日本の存在感の低下、没落を加速させることになる。