車に興味を持ち始めた、まだ十代の頃から、いつかはオープンカーに乗りたいと思っている。
ただ、若い頃とは、オープンカーに乗りたい理由というか動機が微妙に変わってきた。
昔は、フロントスクリーンから巻き込んでくる風を目一杯受けながら右に左にくねる峠道をビュンビュン駆け抜けたいと思っていた。
何となく考えが変わったのは、中年になってアウトドア・スポーツ……具体的には自転車……をやり始めてからだ。
例えば、今日は休日だ、朝から空が気持ちよく晴れ渡っている、「何して遊ぶ?」と自分に問いかけたとき、今の自分は、同じ風を切って駆け抜けるにしても、両足でペダルを漕ぐ方を選ぶ。仮に、オープンカーを持っていたとしても。
じゃあ、どういうシチュエーションでオープンカーに乗りたいかという話だが……
休みの日、朝から夕方まで、青空の下、思いっきりペダルを漕いで漕いで漕ぎまくって、へとへとに疲れた夕暮れ時。
普通なら家に帰って、ひとっ風呂あびて、ビールの一杯もキュッとやるのだが、たまに、体力的には疲れているのに、精神の高揚がクールダウンしきらず、
「このまま、家に入りたくねぇ、もっと、夕暮れの風を感じながら走り回りたい」と感じるときがある。
そういう場合、だいたいは、愛車(屋根つき)のイグニッション・キーを回すことになる。
ただし、精神的な高揚感に満ちてはいても、肉体的な疲労は、反射神経などの運転能力に悪影響を及ぼしているはずだから、飛ばさず、低いスピードで、見通しが良く通行量の少ない田舎道を、夕暮れの景色を愛でながらチンタラ走る。
そして、
「あ~、こんな晴れた夕暮れ時に、オープンカーで田舎道をダラダラ流したら最高だろうな~。生ぬるい夕暮れの風が頬をなでたりする中をさぁ~」
などと、思うわけだ。
つまり、駆け抜けるためにオープンカーが欲しいのではなく、ゆっくり走って心身を癒すためのツールとして欲しいわけだ。
ちなみに、下の写真は、決して合成写真の類ではない。正真正銘、車の窓に反射した雲を直に撮影したものだ。
(シグマ DP2s)