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「除霊」問題の難しさ (2)

2011-10-10 01:01:20 | 高森光季>スピリチュアリズム霊学

 難しいのは、「未浄化霊による憑霊ないしは霊障と“見える”現象」が、本当に霊的問題なのか、精神病・神経症による妄想なのか、はっきりと判別できるものではないことです。霊能者は「見ればわかる」と言うかもしれませんが、それを客観的に証明する手段は現在のところありません(複数の霊能者による「二重盲検法」を行なえば、信憑性のあるデータが出るかもしれませんが、それを行なう研究者も霊能者もなかなかいないでしょう)。

 実際のところ、精神疾患による妄想が、「憑霊」といった表現を取ることは、多くあるようです(中には「宇宙人」といった表現もあります)。
 ここにはかなり深遠な問題が入り込んでいます。それは、
 ・患者の無意識が、「わざと一般人には“異常”と見えるような表現をし、それによって自らの異常性を印象づけようとしている」可能性がある。
 ・患者の無意識が「病気」を作り上げるために、「真正の憑霊」(どこかでその情報を知り)を模倣している。
という可能性です。
 そんな馬鹿なことがあるかと言われるかもしれませんが、人間の心はとんでもない能力を秘めているものです。何らかの目的で、「病気」を自ら作り上げることは、しばしばあります(このあたりのことに関しては、笠原敏雄『幸福否定の構造』を参照)。
 17世紀最大の実地医家で、イギリスのヒポクラテスと呼ばれたトマス・シドナム(シデナム)(Thomas Sydenham, 1624~1689)は、次のように言っています。
 《人間が罹患するあらゆる病気の中で、ヒステリー患者がそれを擬態できない病気はない。》
 この「ヒステリー」というのは、今ではほとんど死語になっている言葉ですが、「純粋に心理的原因によって身体症状を発している患者」と読み換えて差し支えありません。つまり、人間は、心理的な問題によって、「あらゆる病気」を“自ら作り出す”ことができるのです(純粋に肉体的な問題での病気が存在しないということではありません、念のため)。

 また、「霊障」を訴える患者に、心理療法を施すことで、治癒したという事例もあります。除霊やお祓いをするのではなく、クライエントが抱えていた現実の心理問題を解決することで、症状が消えたというものです。
 (ちょっとずれるのですが、私自身、知り合いの知り合いの知り合いが、統合失調症と診断され、傍目には「これはどうも憑霊ではないか」と思わざるを得ない状態にあったのですが、ある心理療法によって劇的に改善した例を知っています。この心理療法が少し特殊なものなので、一般化はできませんが。)

 ただ、こうした場合、心理療法家が霊的な問題をまったく排除して、心理的な次元のみで対処したかどうかを“厳密に”判定できるわけではありません。
 セラピストは、クライエントの訴えに、基本的に「受容」の態度で接します。クライエントが「私の中に助けを求めている霊がいる」と訴えた場合、セラピストはそれを一笑に付すことは普通ありません。ある程度その主張を聞き、何が問題なのかを探っていきます。場合によってはそこで、「助けを求めている霊」に対してセラピストが語りかけるということも行なうかもしれません。そうしたプロセスの中で、「未浄化霊への説得」がなされている場合もあるわけです。
 「心」の領域と「霊」の領域は、はっきりと線引きできるものではないので、このあたりは非常に難しい問題です(もちろん、そういったことを研究している人もほとんどいませんし)。

 結局のところ、「未浄化霊による憑霊ないしは霊障と“見える”現象」が起こった時、私たちは、それぞれの考えや、外的状況によって、それぞれに判断せざるを得ないわけです。
 まあ、一般的には、まずは精神科へ行って向精神薬による治療を求めるのが「常識的な行動」だと思われているようです。ただし、向精神薬は純粋な器質性疾患には有効でしょうが、心因性のものには、一時的な症状緩和にしかならない(時には悪化を招く)ように思います。
 そしてそれが無効な場合(あるいは精神科をそもそも信用していない場合)、私たちは、心理療法家のところへ行くか、「除霊」をしてくれるような人を探すか、ということになります。そしてどちらかに行って、それでもだめならもう一方へ行く、ということになるでしょう。
 優秀な心理療法家がたくさんいて、心理的領域からうまく治療をできればいいのかもしれませんが、なかなかそういうわけにも行きませんし、また、心理療法ではどうにもならないケースもあるわけで、そこで「除霊」の試みがなされることは、やむを得ないことでしょう。
 (この項、つづく)


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