大通りに向かう救急車両とパトカーのサイレンが、けたたましく鳴り響いていた。
思わず沢口と顔を見かわした。
「近いな、里流。行ってみるか?」
「そうだな。何か手伝うことが有るかもしれない。」
彼等は駆け出した。
そしてトラックの下部から引き出された、ありえない曲白鳳丸功效がり方をした自転車に、自分たちの高校のステッカーを見つけた。
アスファルトには、漏れたオイルで黒い染みが出来ていた。
細長いタイヤの跡が、細長く蛇行して焼き付いていた。
タイヤに挟まった自転車をトラックが引きずって出来たんだと、多くの野次馬が話をしていた。
「自転車の二人乗り」、「トラックに轢かれた」、「高校生」……口々に上る単語を聞く度、早鐘のように胸が鳴った。
少し離れた所に、彩の姿が見えた。
「里流、しっかりしろ。とにかく学校に帰って、先生に話そう。な?」
沢口がふらついた里流にささやいた。
「ここに居ても、できる事はない。帰るぞ。彩先輩は自分の足で立ってる養陰丸から大丈夫だ。な?」
「うん……」
里流の目は、別れたばかりの彩が蒼白の顔をして、駆けつけた警察官に支えられるようにして立っているのを凝視していた。
後部ドアから、救急車の奥にいる誰かを、救急隊員が慌ただしく処置をしているのが見えた。彩が乗車し、覗き込んで必死に何か話している。彩は血にまみれた手を握っていた。
視線を送る里流に気付くことなく、騒然とした中、救急車に乗りこんだ彩は去った。
沢口は現場で目撃したと言う付近の店の店員を見つけ、話を聞いてきた。
「小雨が降ってただろ?織田先輩の乗った自転車がそこのカーブでタイヤが滑って、横滑りだって。あそこは細かい砂が溜まって滑る場所で、この間も単車が転倒して大怪我したところだって。織田が道路に投げ出された所へ、運悪くトラックが走ってきたらしい。」
「沢口。自転車……めちゃめちゃに壊れてた……あそこの染み……きっと、織田朔良の血だ。」
沢口は里流の握り締めた拳が、震えているのに気が付いた。
「里流。落ち着けって。織田先輩は無事だったろ?見ただろ?織田先輩養陰丸が無事なのは確かだから。」
「でも、真っ白だった……彩さんの顔、血の気が無かった。一緒に乗ってた織田朔良は?なぁ……おれ、どうしよう……どうすればいいんだろう……」
動転して、幾度も同じことを繰り返す里流の頬を、仕方なく沢口はパンと打った。
「しっかりしろって、里流。お前が部員の指揮を執るんだろ?みんな待ってるぞ。」
「……沢口……」