この1枚のメモ紙に私は心が救われた。
あれは2012年12月
夏に母の大手術を終え、通いで自宅介護をしていた時の事。
母の体力は少しづつ回復をしてきたけれど、
うつ病と認知症が急速に進んでいる時期だった。
当時、私は更年期のど真ん中、体調が酷く悪い日があり
精神的にもかなり疲れていた。
初めての介護、何もかもが手探り状態の日々。
兄は仕事があるので、実質私ひとりしかいない。
ちょっと誰かに変わってもらう事が頼る事ができない。
夫もこの頃、うつ病で休職中だった。
私は死ねない!なにがあっても死ねない!と毎日
気が張っていた。この2年前には私は脳の疾患で入院をしていた。
ケアマネさんは新人さんで(後に大きく成長を遂げる)
何かあるたび二人であたふたする始末で。
あの日はとても寒い日で、体調が悪く体の芯まで寒い・・・
私は通りまで出て贅沢だがタクシーを拾った。
50代後半?と思われる女性のドライバーさん
行き先を告げて暫くするとドライバーさんの方から
「今日はとても寒いですねー」と話しかけられた。
気のないような感じで窓の外を見ながら「そうですねー」と私は答えた。
「女性は冷えには気を付けないといけませんよ」と言われた瞬間に
「えっ・・・」と思い、急に涙が溢れた。
「すみません・・今、母親の介護をしているんですけど
初めてのことで、私も体調が良くなくて・・・しんどくて・・・」
わずか20分の間に私は、堰を切ったように泣きながら自分の思いを話した。
自分の知ってる母親じゃなくなってしまったことが悲しい。辛い。
どんなに頑張っても工夫してもご飯を食べてくれない、食べないと死んでしまう
死んでほしくない。何をどうしたらいいのか分からない。
しんどいからイライラしてしまって、母に酷いことを言ってしまう。
私の中に鬼がいて、そのことが嫌で仕方ない。
周りに介護経験者の友達も知り合いもいない。
愚痴をこぼしたとして分かってもらえないからずっと誰にも言えなかった。
実家近くに着いた。
女性ドライバーさんは介護の経験者だった。
自身もとてもしんどい思いをしたと。
1枚の紙に名前と携帯の電話番号を書き、
「いつでも辛いときには電話をしてきてね。私にできることがあるかもしれない
怪しい者じゃないから。見て、これが私の勤めているタクシー会社。
この紙は、お守り代わりに持っていてね。
とにかく、体に気を付けて。あなたが倒れたらお母さんはとても困るから」
と言ってくれた。
結局、電話をすることは無かったけれど
私の辛い状況をわかってくれる人がいてくれるんだ。
ということが心の支えになり、頑張ることができた。