【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

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税抜経理はインボイス時代のスタンダード?

2024-09-16 15:00:00 | 消費税
昨年10月からインボイス制度が始まり、新たに消費税の課税事業者となったことで消費税の経理処理や申告に困惑する事業者は多いです。消費税の課税事業者が対処しなければならない課題のひとつが消費税の「経理方式」、税抜経理と税込経理のいずれを選択するかです。

◆税抜経理とは(仮受消費税、仮払消費税という勘定科目が生じる)

税抜経理とは、消費税が関連する取引に関する仕訳を本体価格と消費税に分けて行うという方式です。例えば、商品の販売を本体価格100、消費税10で行った場合、売上(収益)は100、消費税10は仮受消費税(負債)で処理します。商品の仕入れを本体価格70、消費税7で行った場合、仕入(費用)70、仮払消費税(資産)7で処理します。

税抜経理においては、消費税は負債(仮受消費税)あるいは資産(仮払消費税)で処理されるので損益(利益計算)には影響しません。

◆税込経理とは

税込経理とは、消費税が関連する取引であってもその仕訳に消費税は表さず、本体価格と消費税を合計して仕訳をするという方式です。例えば、商品の販売を本体価格100、消費税10で行った場合、売上(収益)110と処理をして消費税を表しません。商品の仕入れを本体価格70、消費税7で行った場合、仕入(費用)77です。

税込経理においては消費税が収益あるいは費用に含まれます。ただし、事業者が税務署に納める消費税、つまり収益に含めた消費税(100とします)マイナス費用に含めた消費税(80とします)を費用処理(100-80=20)することから最終的には利益に影響しません。収益100=費用80+費用20ということです。

◆税抜経理のメリット

税抜経理のメリットはいくつかありますが、そのひとつが「消費税が見える」ということです。事業年度開始から受け取った消費税の合計額は仮受消費税に集計されます。一方、支払った消費税は仮払消費税に集計されます。税務署に納める消費税は「仮受消費税-仮払消費税」です。仮受消費税も仮払消費税も税務署に消費税を納めるとゼロになります。

税込経理だと、この点がまったく見えません。

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★税抜経理はインボイス時代のスタンダード?

事業者が販売時に受け取る消費税は「預かった」と考えられます。事業者はこの預かった消費税から仕入や諸経費に関して支払った消費税を差し引いた額を税務署に納めます。このような消費税の仕組みからすれば消費税は利益計算に影響しません。受け取った消費税を収益(大部分が売上)に、支払った消費税を仕入や諸経費に含める税込経理は合理的でないということです。確かに、税務署は税込経理も認めてくれます。しかし、融資申込みや補助金申請など、税務署以外に経理数値を提示しなければならない局面では「税抜経理を前提」としている思われることが少なからずあります。

なお、消費税の免税事業者は税込経理しか認められません。そんなことから課税事業者になってからもそのまま税込経理を続けているケースも多いです。しかし、インボイス制度導入後はほとんどの事業者が開業時から課税事業者となり税抜経理を選択することが普通になるでしょう。そうなれば、「税込経理は時代遅れの方式」になることは必至です。

税抜経理、インボイス時代においてはスタンダード(常識?)といえるのではないでしょうか。

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