50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

「<ふしぎの森のイメージ>を鳩も聞きたくて」

2016-08-06 10:02:06 | 小説
「<ふしぎの森のイメージ>を鳩も聞きたくて」
「そんなんやないのん」
なるほど鳩に、気いつけやと声をかけるのが大阪人のイメージだった。和歌山の町ではない。ざっくばらんに言うと情のからまる答えを受入れられ易く言うことだった。
「鳩のデートやろう」
「もうちょっと」
「鳩も、御堂筋でデート」
音のしない拍手をなす和子。幼稚なのではない、啓の気分をちゃんと読んでいて、たわいない遊びを和子は思いついていたのだろう。

(「南幻想曲」つづく)

そのうち御堂筋のデートは終わる。・・・

2016-07-30 07:49:28 | 小説
そのうち御堂筋のデートは終わる。歩道の影が股に迫って日だまりを犯していくから。・・・・・・
啓は、ちらちら目を射った太陽がうらめしい。
「鳩はほんとうは御堂筋に何しにきやはったと思う?」
また啓の耳を疑わせることを和子は口にした。謎なぞ遊びでもなさそうだった。目の前を通りすぎる人らの頭越しに放って、和子はしゃあしゃあとしたものだ。空腹をがまんしながらそう言ったからには、啓の気分を理解していた。そのような思いにさせて啓を喜ばせている。やはり和子も夢を抱いた二十歳に違いなかったのだとか。啓は閃いて答えを出した、空想の中から言う。

(「南幻想曲」つづく)

あれはそうではなくて・・・

2016-07-25 21:20:02 | 小説
あれはそうではなくてセックスだと啓は声を喉もとにつめた。が、この季節に果たしてそうだろうかと思いなおす。その時和子はジーンズを小刻みに引いて、あたかもそのケンカの応援にかけつけた少女を啓に思わせる。そうして御堂筋に違和感を抱かせるかのようだ。

(「南幻想曲」つづく)

指さしていて、御堂筋の鳩を和子が珍しがるようだが、・・・

2016-07-16 14:25:37 | 小説
指さしていて、御堂筋の鳩を和子が珍しがるようだが、啓の気分をその小柄な体の豊かな胸が表してゆれている。それは暗黙のうちに和子の気持ちを言い、セックスを言うことだろうと、啓に、まじめな二十八歳の男がるだけでは嫌とかと言うのかも知れなかった。
鳩が、と言った後で啓の声を待つ和子。啓はそびえ立つビルに、半裸のイチョウに鳩に、
「何やおなかすいたん忘れる、ええながめや」
「そやけど何やケンカしてはるようよ」

(「南幻想曲」つづく)