若者は先程頭の中を・・・ 2015-03-31 20:10:30 | 小説 若者は先程頭の中をかすめた、彼女との旅行の話をひとしきり話した。彼は暇なロビーでこう話している。クモの演劇好きの心をゆさぶって圧倒的な話になれば、いい。クモは耳を傾けていた。 「ハチなんて田舎じみたアザナをつけられても、彼女に何といわれたって彼女はぼくにとって、オアシスでした」 以上
けれども、・・・ 2015-03-30 20:00:49 | 小説 けれども、 「まさかそういうことは・・・・・・おじさまのように演劇好きじゃないみたいです・・・・・・それならこちらもやりようがあるんです。彼が正直すぎるから困ってるんです。おまけに地方出身で」 とそう耳にしながらクモはちょっぴり恥じないでいられない。かまわず若者は調子づき、 「この話から訊いてください」
頬がうるおって・・・ 2015-03-28 20:01:56 | 小説 頬がうるおっている感じから、 「たまだから地方もいいのかしら」・・・・・・ 若い恋愛は次第にクモの気持ちを若くした。それから、若者の対抗馬に一人の男が出現した、というのだった。劇場では何かにつけ舞台を思い、 「九平次みたいな人間?」 とクモはいって心が乗りだした。 (つづく)
初夏、葉桜の風が・・・ 2015-03-27 21:08:21 | 小説 初夏、葉桜の風が二人を包んで、さわやかな旅行だった。すっかり調子があがって恥ずかしさも忘れて、 「二人のユートピア」 とハチは声が弾んだ。反面内心であまりにも自由奔放な彼女を不安でなくもなかったが、キザッぽくならない話術にハチは自信がありそう弾んだ。桜の咲くころより、今の季節の方が彼女の性格的に似合っているようだった。 (つづく)
クモの姪とは若者はハチ・・・ 2015-03-26 20:00:00 | 小説 クモの姪とは若者はハチという渾名でとおっていた。首都の育ちで幼ななじみどうしであり、 「私の身も心もチクチク刺すから、ハチ」と彼女がこの渾名をつけたのだった。旅行にでた日、城門への坂道をのぼりながら彼女は、花の蜜のような甘い声で呼ぶように、 「二人で旅にでてきて、よかった」 とハチの腕にすがりついてきた。 (つづく)