幸男の背後に、タクシーがきて停止した。・・・ 2015-09-30 20:08:58 | 小説 幸男の背後に、タクシーがきて停止した。太鼓の陽気な響き渡る音、幸男はそれに肉づきのすばらしい胸が躍り、理恵は黄色いタクシーを姿勢を立てなおして見た。 「では。ご用がある時にはいつでも連絡ください」 と幸男。見えない壁を立てて理恵から離れ、乗ってきたタクシーにもどっていくのだった。 (つづく)
こってりもよし、あっさりもよし 2015-09-29 21:43:16 | 小説 昨日、豚骨ベースの少しこってり、どろっとした話題のラーメンを食べに行った。その前は、鳥ベースのあっさり話題のラーメンを食べた。私的にはどちらも、美味しければOKです。
声の軽さを感じ、ふっと潮風に乗ってきた・・・ 2015-09-29 21:34:47 | 小説 声の軽さを感じ、ふっと潮風に乗ってきた二十歳の声が甦り、幸男は戸惑った。まっ白いマスクに桜の花片が一つ染まって散るのを、見た。岬ホテルから宴の曲や歌声が潮風に吹かれながらこぼれてくる。耳をつんざくバンザイを余所ごとにして、理恵はヒールがもつれて幸男の手に助けられている。 (つづく)
虫も殺せないような・・・・・・ 2015-09-28 22:16:25 | 小説 虫も殺せないような・・・・・・とこれは運転手の客たちに向けた呟きだった。幸男はいそいそ降り立ち、理恵のドアを笑顔に努めて開ける。潮の香りがドアの煽りで一瞬途切れる。 「ありがとう」 と理恵がしとやかに言った。 (つづく)
小心な地方人でもバカではない。・・・ 2015-09-27 07:27:57 | 小説 小心な地方人でもバカではない。その疑いをこもらせてしまう気質に、理恵の前で特別甘んじる。エンジニアは疑いを発する気質は職場で使い果たし、今それは空っぽなのだろう。岬ホテルの日本庭園を横に見ている。自然に遠慮した風情で小庭園だ。 (つづく)