一年ぶりに訪れた実家の父は
一年分 年をとっていた
「医者だば『田んぼさ行ぐな』と言うんだっけものな」
「友達にも『八十歳すぎで 田んぼさ、行っでいるやづは、イネ(いない)ぞ。やめれってハ・・』って言われる」
「俺だば、健康のために行っでるど、こででる〈答えている)」
私も、もう、よせばいいのに・・・と思うけれど
のどまで出かかった言葉を飲み込む
田んぼや畑に出かけて、一人前の仕事をすること
それが、父の生きる原動力になっている
ひそかに自分の健康のバロメーターにしている
そう思うと、父の、大事な何かを取り上げてしまうようで、言えなかった
でも、母が亡くなって20数年
父の仕事への強烈な執着は
弟家族のバランスを、微妙に崩している・・・
たぶん、父はそのことに気づいていないだろう
残りの人生、そんなに長くないのだから
回りに散らばっている不幸のタイルばかり拾ってないで
もっと、幸せのタイルを拾えば・・・
そうも言いたかったけれど
言えずに、
黙って掃除だけしてきた