5月9日付の琉球新報の「読書」欄の五木寛之さんによるコラム「新・地図のない旅」で、「はじめに言葉ありき」と題して、男が先で女が後という言葉の表現が多い(「男女」とは言うが「女男」とは言わないとか)ことについて取り上げていた。
確かに、日本語には男が先で女が後になった言葉が圧倒的に多い。
一方、英語は男が先で女が後になった表現と女が先で男が後の表現が程よくある。
女を先に言って男を後に言う表現は、例えばここで取り上げた「Ladies and gentlemen!」があるね。
女が先で男が後の表現:
Ladies and gentlemen!
bride and groom
mother and father(mom and dad)
LGBT
※bride=花嫁、新婦 groom=花婿、新郎
男が先で女が後の表現:
boys and girls
husband and wife
Mr.&Mrs.
he or she
上にあげたものは一つのフレーズとして語順がだいたい決まっていて、「boys and girls」を仮に「girls and boys」とすると違和感を感じるそうだ。「Ladies and gentlemen」に続けて言う場合もやはり「boys and girls」という語順になる。
両親を言うときは「mother and father」とするのが一般的とのことだが、ネット上では「mother and father」と「father and mother」どっちでもOKと書いてあるのもあったし、昔はfatherを先に言うのが普通だったとの情報も。
「He or she」は不特定の人を指す代名詞で、昔は「he」だけで済ませるのが普通だったが今は男女平等の観点から「he or she」と言うようになった。Heを先に言うのが普通だが、「s/he」という省略形で表記される場合もあり、これを読み上げるときは「she or he」と言うこともある。
ものによって男が先だったり女が先だったりするのは英語のいいところだと思う。二つの異なる単語を同時に発音することなど不可能だから、どっちかが先でどっちかが後になるのは物理的に仕方ないことだ。なので、これのときは女を先に言って、これのときは男を先に言うというのがあるのは理想的だ。
それに対して日本語は、男が先で女が後になった言葉が圧倒的に多い。英語で女を先に言うものも「父と母(父母)」、「新郎新婦」、「紳士淑女」というふうに男が先になる。「母と父」とか「淑女紳士」とか言うと違和感を感じる。
数少ないが女が先で男が後になる言葉は一応あって、例えば「雌雄(しゆう)」というのがある。
「主婦/主夫」「主婦(夫)」に関してはこのように女が先で男は後に表記するのが一般的。もともと女の主婦が普通にいたのに対して男の主夫は少なく、「主夫」という言葉も新しくできた。女では普通だったが男では一般的でなかったものに関しては、女を先に言うことが多い。こういったものは女が先で男が後になる理由がジェンダーの固定観念によるものではあるが、「男が先で女が後になる言葉ばかり」というのを解消していくためにはこういったものを女を先に言うものとするのは良いことかもしれない。
おもしろいのが「夫婦(めおと)」という言葉。「夫婦」と書いて「ふうふ」(漢語)とも「めおと」(和語)とも読むんだけど、「めおと」と読む場合、漢字は男が先で女が後になっているけど「めおと」は「め(女)+おと(男、夫)」で女が先で男が後になっているわけ。これからすると漢字では「婦夫」と書くべきのはずだが、そうではないのは中国から伝わった「夫婦」という熟語に和語の「めおと」という読みを当てた熟字訓だから。
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