一方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の名前はロシア語で「Владимир Путин」、ローマ字にすると「Vladimir Putin」、発音記号は/vlɐˈdʲimʲɪr ˈputʲɪn/だ。欧米の言語の多くでは「Putin」を「プーティン」のように発音する。日本語で「プーチン」と書かれるのはその方がロシア語の発音に近いからだという。Forvoで「Путин」の発音(ロシア語)を聞いてみたら、多くは「プーチン」に聞こえたが、一部は「プーティン」に聞こえた。数年前にForvoで聞いた時と比べて「プーティン」に聞こえるような発音をする人が若干増えているような気がする。
「Владимир」は/vlɐˈdʲimʲɪr/と発音し実際には「ヴラディーミル」に近いはずだが、一般的に「ウラジーミル」と書かれる。ロシア語の[v]は英語より息が弱い傾向があり、「ウ」や「ワ」で書かれることが多い。
ロシア語の「ти」は「チ」とカタカナに転写されることが多い。「チ」に近いと考えられているためだろう。実際の発音を聞いてみると、「チ」に聞こえることが多いが、「ティ」に聞こえることも少なくない。「Ти」はローマ字で書くと「ti」で発音記号は/tʲi/または/tʲɪ/だから普通に考えると「ティ」に聞こえるはずだが、なぜか「チ」に聞こえることに疑問を感じていたが、「チ」に聞こえる場合厳密な発音記号で表すと[t̻ʲsʲi]または[t̻ʲsʲɪ]で、[t]の後に[s]が弱まった軽い摩擦音を伴うらしい(参考:ウィキペディア「ロシア語」)。
「Ти」に対する有声音(濁音)の「ди(di)」は「ディ」に聞こえることが多いが「ジ(ヂ)」に聞こえることもあり、その場合[d̻ʲzʲi]または[d̻ʲzʲɪ]と発音している。
ユーチューブのロシア民謡をロシア語で歌っている動画で歌詞にロシア語の発音を表すカタカナが付いているものでは多くは「ти」は「チ」、「ди」は「ヂ」で書かれているが、聞くとだいたい「ティ」、「ディ」に聞こえる。
最近のメディアはロシア人の人名に言及する時など「ти」を「ティ」で表記することが多い(例:Субботин→スボティン、Тимофей→ティモフェイ)。しかし、プーチン大統領はあくまでも「プーチン大統領」だ。
ロシアの首相はМихаил Мишустин(Mikhail Mishustin)氏。「Мишустин」の発音をForvoで聞いてみたら「ミシュスティン」に聞こえた。メディアでは「ミシュスチン首相」と表記することが多いが、「ミシュスティン首相」と表記しているものもある。ロシアの首相はロシアの大統領と比べてニュースに登場する頻度は極めて低く、そのためか表記揺れが見られる。日本語版ウィキペディアのページ名はもともと「ミハイル・ミシュスティン」だったが、メディアなどで「ミシュスチン」と表記することが多いということで「ミハイル・ミシュスチン」に変更された。
2024年ロシア大統領選挙に立候補しようとしたが認められなかったБорис Надеждин(Boris Nadezhdin)氏については、ナジェジュジン、ナジェージュジン、ナジェジジン、ナジェージジン、ナデジディン、ナデージディン、ナデジュディン、ナデージュディンといった表記が見られる。琉球新報と沖縄タイムスでは「ナデジディン」を使っている。
「Де」は[dʲe]と発音する。カタカナにすると「ディェ」という感じ。「ジェ(ヂェ)」に聞こえることもある(この場合の発音記号は[d̻ʲzʲe])。「ディェ」という表記はなじみがないので普通は「デ」か「ジェ」で書かれる。ローマ字は発音に忠実に書くと「dye」というところだが 、一般的に「de」が使われる。
「Катюша(カチューシャ)」などに見られる「тю(tyu)」も「チュ」に近いと考えられ「チュ」と書かれることが多いが、聞いてみたらだいたい「テュ」に聞こえる(「チュ」に聞こえることも時々ある)。「Катюша」は「カテューシャ」に聞こえた。ロシア民謡『一週間』の「Тюря, тюря, тюря…」というはやしの部分は日本語訳詞では「テュリャテュリャテュリャ・・・」となっている。
「チ」に転写されるロシア語の音を他に挙げると「чи(chi)」があって、発音記号は/ʨi/で日本語の「ち」とほぼ同じ発音。
「Ти」は「チ」に近い発音をすることが多かったが、最近は「ティ」と発音する人が増えているようだ。ロシア人でも「チ」に近い発音だと「чи」と紛らわしいと感じるということもよくあったのだろう。
日本語のロシア文字転写法で、一般的に使用されている方式では「ち」は「ти」と表記する。しかし、「ти」が「チ」に聞こえても日本語の「ち」の発音とはちょっと違うし、「ティ」のように発音されることも多い。実際、日本語の「ち」と同じ発音なのは「чи」なので「чи」と転写するのを好む人もいる。
『劇場版名探偵コナン 世紀末の魔術師』でロシア文字の文字盤を押すシーンがあって、そこでは「香坂喜市」という登場人物の名前を「Киичи Косака(キイチ・コーサカ)」と押していた。
ロシアに「YAMAGUCHI(ヤマグチ)」という会社があって、2年前に話題になった。山口県や山口市の場合「Ямагути」と書くのが普通らしいけど、この会社名はロシア語で「私は強い」という意味の「Я могучий(ヤー・マグーチー)」とかけていると言うからロシア文字表記は「Ямагучи」かな?
ちなみに、「ウラジーミル・プーチン」の中国語表記は、大陸では「弗拉基米尔·普京(Fulajimi’er Pujing)」、台湾では「弗拉迪米爾·普丁(Fuladimi’er Puding)」または「-普亭(Puting)」が使われる。ロシア語の「ти」と「ди」は大陸では「ji-」で読む漢字を当て(基本的に「ти」「ди」共に無気音の「ji」が当てられる。一方「чи」は有気音の「qi-」が当てられ、例えば都市名「Сочи(ソチ)」は「索契(suoqi)」)、台湾では「ti-」「di-」で読む漢字を当てるのが一般的だ。
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