N大の芸術学部出身の著者がアメリカ留学やシンクタンクで働いた経験を生かし、幸運にもパリの国連で5年余り働いた国連探訪記。しかし驚いたのは世界の先端を行く国連と言う職場の何と旧態依然としたことか。勿論ピラミッド型の上下関係があり、正規職員と非正規職員の格差など一般社会と変わらない問題があるそうです。お役所は何処も同じか…。塵の分別をしようとしても難しく、まず予算がないそして一番の問題は彼らが分別しようとしない。”そこ、そこ”(いい加減)が蔓延していて何でもそこそこ…だと言う。パリの生活は皆憧れるが理不尽な事が多く勝手にストライキを突然やる。犬の糞だらけのパリ、中世には二階から汚物を捨てていた国ですもの。いろいろ悪戦苦闘をしながら、持ち前の芯の強さとおおらかさで開拓していく著者は頭もいいし凄いと思った。やがてフランス的な価値観や国連的ライフスタイルがじわじわと自分を支配し始めていることに嫌気がさす。正直に生きたい、自分の足で歩きたい、キャリアや肩書きはいらない(と言っても持てる人の言い分だと私は思う)自分は自分でいたい…と国連を辞める。そして日本に戻り作家になるのです。国連と言う硬い職場の内面が面白可笑しく読めた。度胸があり物怖じしないおおらかな性格で羨ましい。吉本ばななを追ってください。