弟114回直木賞を受賞した長編を読んだ。1992年浅間山荘事件の陰で大学教授と妻、そしてアルバイトの女子学生の自由奔放な男女関係が最後はあっと驚く一件で悲しく静かに終わっていく。理解し難い異質な恋は著者の単純だが静かに迫る文章力が美しく胸に沁みる。審査員だった平岩弓枝は著者の筆力、文章力に溺れた…と言っているが、音楽で言うと”バロック”的で気だるいような耽美がながれている。(余談ですが手術をする前好きな音楽を流してくれるというのでバロック音楽をリクエストした…後から考えるとこれから手術だというのにバロックじゃあね?がたがたの仕上がりだったらどうするの?)話の構成がとにかくうまい。結末は悲しくて遣り切れないが、教授の残した優しさが心に残り腑に落ちた。これで小池真理子を卒業しようかな…。