Mrs.Uponwaterのブログ

日記です♪

ヴェニスに死す トーマス・マン(新潮文庫)

2020-06-06 15:54:54 | 読書

このような時期は”古典を読みなさい”のイタリアの学者の声にまた手に取ったのが”ヴェニスに死す”。映画は美しい少年だけが頭に残っていて、その少年に憧れた老作家が何が原因で死んだのかも忘れてしまった。理性もあり名誉もある老年を迎えた芸術家が躊躇することなく貪欲にポーランドの貴族の少年に陶酔した。芸術家、作家としての倫理や良心と自分が今まで味わったことのない美やエロスに燃える、双方の板挟みの気持ちの揺れがやはり古典は深い。しかし街には消毒の匂いが充満しコレラにに襲われた事が解る。そう、青白く優雅に静かな面持ちは蜂蜜色の髪に取り囲まれ…ギリシア芸術最盛期の彫刻作品の美少年に陶酔し続けた作家はコレラに…。こんな時期に読んでいささか怖くなってしまった。それにしても訳者はもっと文学を理解した訳し方をして欲しい。