岡山大学は10学部・1プログラム、8研究科、4研究所、附属病院、附属学校を有する地域の中核となる総合大学型の国立大学法人です。
今回、最新の研究成果をわかりやすく紹介する「FOCUS ON」を発行しました。ぜびご覧ください!
<発表のポイント>
・放射線治療線量に影響を及ぼす放射線治療期間中の胸水や肺腫瘤の変化を、経時画像を用いた変形照合技術で、ベクトル量として客観的に検知します。
・複数回計画CT画像を用いて患者個別の放射線治療期間中の前立腺の動きを推定し、至適な計画画像の選択や放射線治療線量に関わるリスクを低減させます。
・4次元CT画像を用いて肺腫瘤や基準マーカ、肺体積の動きを解析し、より安全な治療の実現のために基準マーカと肺体積を組み合わせた新たな肺定位動体追跡治療を提案しています。
◆背 景
放射線治療では、ターゲットとなる腫瘤や臓器とリスク臓器は隣接することが多くあります。高精度放射線治療ではリスク臓器を避けたターゲットに限局した3次元的な放射線量の照射を行います。また、放射線治療ではターゲットとリスク臓器の生物学的な感受性や回復を利用して、複数回の治療が多く行われています。しかし、複数回の治療のなかでターゲットやリスク臓器は時間的な動きが生じるために、それらの変化が計画外の治療の乖離となる可能性があります。
我々はこれらのターゲットやリスク臓器の動きを客観的に解析・推定し、動きに堅固な治療計画に役立てるとともに専門職種間で共有できる技術開発を行っています。これらの解析や開発によって、より高精度で安全な新たな放射線治療が実現できると考えています。
◆研究内容、業績
肺がんの放射線治療における治療期間中の肺内変化の解析放射線治療期間中に胸水の量や肺腫瘤の大きさは変化していきます。この研究では、日々、撮影する位置合わせの画像を利用して、経時的な変化をベクトル量として客観的に解析しています。
本研究は新たな追加撮影を必要せずに、毎日の治療のなかで患者状態の変化を数値として検知できます。
論 文:Development of a novel detection method for changes in lung conditions during radiotherapy using a temporal subtraction technique.
著 者:Tanabe Y, Ishida T.
掲載誌:Physical and Engineering Sciences in Medicine, 2021 44(4): 1341-1350.
D O I:https://doi.org/10.1007/s13246-021-0107
U R L:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34704221/
前立腺がん放射線治療における治療期間中の動きの推定治療計画前に実施されている複数回の計画CTと治療期間中の画像を用いて、前立腺の動きを直腸の変形量のダイス係数で評価しました。
その結果、画像上も評価しにくい骨盤底筋群の影響を示唆し、治療や検査による緊張と前立腺の動きの関係を推定しました。本研究やこれまでの研究で、至適な治療計画画像の選択手法を提案し、治療計画時と実際の治療時の臓器関係を一致させる治療法実現の一助となりました
論 文:Evaluation of the correlation between prostatic displacement and rectal deformation using the Dice similarity coefficient of the rectum.
著 者:Tanabe Y, Ishida T, Eto H, Sera T, Emoto Y.
掲載誌:Medical Dosimetry, 2019. 44(4): e39-e43.
D O I:https://doi.org/10.1016/j.meddos.2018.12.005
U R L:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0958394718301419
論 文:Patient-specific radiotherapy quality assurance for estimating actual treatment dose.
著 者:Tanabe Y, Ishida T, etc.
掲載誌:Medical Dosimetry, 2021 46(1): e5-e10.
D O I:https://doi.org/10.1016/j.meddos.2020.08.00
U R L:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32921553/
肺定位動体追跡治療のための金マーカと肺体積を組み合わせた新たな治療法の提案定位放射線治療では少ない回数で大線量の放射線を照射します。小さな肺腫瘤は放射線画像では見えにくいために肺内に金マーカを留置することがあります。4次元CTを用いて肺腫瘤と金マーカ、肺体積の追跡精度を解析し、金マーカと肺体積の追跡精度を比較しました。
それぞれの追跡に利点と欠点があり、金マーカと肺体積を組み合わせた新たな治療法の可能性を提案しました。
論 文:Statistical evaluation of the effectiveness of dual amplitude-gated stereotactic body radiotherapy using fiducial markers and lung volume.
著 者:Tanabe Y, Tanaka H.
掲載誌:Physics and imaging in radiation oncology, 2022 24: 82-87.
D O I:https://doi.org/10.1016/j.phro.2022.10.0
U R L:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2405631622000872
◆展 望
放射線治療では安全に高精度に行うために計画前や治療時に定期的に放射線画像を撮影しています。これらの画像をもとに、さらに各臓器の位置関係や動かす力関係などの複合的な要因を解明し、より動きに堅固な治療法を実現していきたいです。
また、学会誌等で最新技術や研究の教育講座などを企画し、開発した技術を共有することで高精度の放射線治療技術の普及に尽力しています。
◆業 績
・「より安全で理想的な放射線治療計画技術への挑戦」講座紹介.
田辺悦章, 辰己大作.
日本放射線技術学会雑誌 2022 78(4): 400.
D O I:https://doi.org/10.6009/jjrt.2022-2002.
U R L:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrt/78/4/78_2022-2002/_article/-char/ja/
・「超画像処理技術」講座紹介.
田辺悦章
日本放射線技術学会雑誌.2020 76(5): 523.
D O I: https://doi.org/10.6009/jjrt.2020_JSRT_76.5.52
UR L:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrt/76/5/76_2020_JSRT_76.5.523/_article/-char/ja/
◆補足・用語説明
(1)ベクトル量:画像の特徴量から被変形画像を目標画像に一致するように変形させたときの画像の各ピクセルやボクセル間の変形した量です。
(2)4次元CT画像:CT画像撮影時に呼吸波形などを同時に取得撮影することで、3次元画像に加えて呼気や吸気など呼吸位相ごとに分けた画像が作成できます。各位相の画像を評価することで臓器の動きの軌跡を評価できます。
(3)ダイス係数:2つの集合体の類似度示す係数。本研究では異なる時間で撮影された直腸間で同じ形状や位置座標であるかを評価しています。
◆参 考
・岡山大学医学部保健学科・大学院保健学研究科
https://www.fhs.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学 学術研究院 保健学域 放射線技術科学分野 田辺研究室
https://sites.google.com/view/tanabelabo
・岡山大学病院
https://www.okayama-u.ac.jp/user/hospital/
◆参考情報
・【岡山大学】地域連携による放射線治療技術の安全文化の醸成 ~放射線治療品質管理機構による装置立ち上げ支援の取り組み~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000941.000072793.html
◆参考情報:FOCUS ON
・【岡山大学】全身性エリテマトーデスで免疫力が低下する原因分子を同定
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000419.000072793.html
・【岡山大学】酵母が必要としている栄養素を酵母に語らせる技術を開発
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000516.000072793.html
・【岡山大学】神経内分泌腫瘍治療への新しい挑戦 ~新しい放射線治療の導入~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000582.000072793.html
・【岡山大学】岡山大学病院麻酔科蘇生科におけるAcute Pain Serviceへの取り組み ~手術を受ける患者様への安全・安心・満足度向上を目指して~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000615.000072793.html
・【岡山大学】フェイクコンテンツの真偽判定技術 ~AIによるウソ発見器~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000703.000072793.html
・【岡山大学】新炭素材料Qカーボンでエネルギー・環境問題に挑戦
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000708.000072793.html
・【岡山大学】岡山の古墳人は「炊いたお米」を食べていた? 歯石内残留デンプン粒の検出から得られた新たな知見
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000772.000072793.html
・【岡山大学】医療ビッグデータを用いたデータサイエンスによって広がるドラッグリポジショニングの可能性
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000807.000072793.html
・【岡山大学】体中で高機能な抗体が作られる仕組みを解明し免疫能力の向上を目指す
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000920.000072793.html
・【岡山大学】謎に満ちたヒト脳の解明に挑む! ヒト脳の多階層な機能を計測できる革新的な脳イメージング技術 〜7テスラ超高磁場レイヤーfMRI〜
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000945.000072793.html
・【岡山大学】遺伝子・ゲノムの改変で環境変動に適応した高品質なオオムギを作る
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001117.000072793.html
・【岡山大学】多様なエネルギーの選択肢、第二世代バイオディーゼル燃料
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r4/press20221028-1.pdf
◆本件お問い合わせ先
岡山大学 学術研究院 保健学域 放射線技術科学分野 准教授 田辺悦章
〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1 岡山大学鹿田キャンパス
TEL:086-235-6883
https://sites.google.com/view/tanabelabo
<岡山大学病院との連携等に関する件(製薬・医療機器企業関係者の方)>
岡山大学病院 新医療研究開発センター
〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
下記URLより該当する案件についてお問い合わせください
http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/ph_company/
<岡山大学病院との連携等に関する件(医療関係者・研究者の方)>
岡山大学病院 研究推進課 産学官連携推進担当
〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
TEL:086-235-7983
E-mail:ouh-csnw◎adm.okayama-u.ac.jp
http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/medical/
<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
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https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001135.000072793.html
岡山大学『THEインパクトランキング2021』総合ランキング 世界トップ200位以内、国内同列1位!!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000070.000072793.html
岡山大学『大学ブランド・イメージ調査2021~2022』「SDGsに積極的な大学」中国・四国1位!!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000373.000072793.html
岡山大学『企業の人事担当者から見た大学イメージ調査2022年度版』中国・四国1位!!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000122.000072793.html
国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r4/press20221222-1.pdf