「大沢在昌」の新刊「冬芽の人」
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丸一日何も食べていないからモチリンはグーグー鳴き、目が冴えて眠れなかったのだ。
目覚めるとすでにかあちゃんの姿はなく、「小バーバー2号」(ロボット掃除機ルンバ)がギャースカ喚きながら動き回っているだけだった。
かあちゃんはまた「むっちゃん」と一緒に走りに出て行ったのだ、遅れをとったぜ
けっきょく準備して家を出たのは11時半過ぎ、土手は雲一つなく晴れ渡っていたが風が強く、追い風に押されるように走り出した。
最初の2kmぐらいはゆっくり行こうと思っていたのに、強い風に否応無く押されてペースが上がってしまう。
この風は当分止むことはないだろうから、この分だと行きは良い良い帰りは・・・、になるだろう。
しかし何ヶ月ぶりかの気持ちいい走りだし、帰りにヘロヘロになるとは限らない。
行けるところまでこのまま走ろうと、1キロを5分4秒前後で走り続け、8kmをすぎた頃に風の向きが変わった。
ペースを落として、ウエストポーチから干し梅と塩熱サプリを取り出して口に放り込み、再び海を目指した。
荒川ロックゲートを過ぎると、風向きがまた変わって追い風に。
海の突き当たりまでペースを落とすなという天の配剤か でももうハアハアゼイゼイだ。
およそ1年ぶりぐらいに海の突き当たりまで走りつき、ストレッチをして振り返ると、かあちゃんと「むっちゃん」が並んで走って来るのが見えた。
先にスタートしたふたりは途中から旧中川に沿って走り、ぐるっと迂回して小松川・大島公園から出てきたのだ。
合流して「むっちゃん」の持ってきたチョコとアメを頂き、今度は強烈な向かい風に逆らって帰路を走る。
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それにしても春の嵐にはまだ早いが、まともに走れないほどの突風がどんどん体力を奪っていく。
17kmの辺りで腹がギュ~ッと締め付けられ、お腹と背中がくっつくぞぉというくらいの飢餓感が襲う。
ついにきた 30km過ぎの擬似体験。
向かい風のせいだけじゃなく息が上がり、腿の筋肉が痛くなってくる。
これを我慢して走り続けると、脚がつるのを過去の経験で知っている。
歩いた。
後続のかあちゃんと「むっちゃん」が迫ってきて、抜かされた。
かあちゃんの後塵を拝すのは初めてのことだ
やっぱり往路に飛ばしすぎたようだ、両腿と脹ら脛がパンパンで、お腹もノドもカラカラだ。
遠ざかってゆくふたりの後ろ姿を見ながら、ゆっくり走り出す。
程なくふたりに追いつき、すぐ後ろを走りながら気がついた。
なんだ、このペースなら風の抵抗は少ないじゃないか、そりゃそうだ。
しばらくそうしてふたりの後ろを走っていたが、「むっちゃん」は力を持て余し気味なのがわかり、ますます強くなる風にかあちゃんがついていけなくなると、ひとり自分のペースで先に出た。
彼女は初フルマラソンを4時間半で走り切るだろう。
ひょっとするとサブフォーもいけるかもしれない。
それに比べて、かあちゃんはとうとう歩いてしまい、オヤジは脚がつる寸前でなんとか進んでいるというあり様。
しかしこれは本番じゃないし、ここで無理して後に引きずっては元も子もない。
歩いたっていいじゃないか、とエクスキューズしているうちにかあちゃんにも遅れをとってしまった。
20km地点通過、もう給水をしなけりゃヤバイ。
グラウンドの水道に駆け寄り、うがいして少しだけ水を飲む。
それにしてもこのダメージは、新東名を走った時のようだ。
あの時もノドはカラカラで、本当に脚が上がらなかった。
つまり断食ランの効果ありなのだが、かあちゃんの姿が見えなくなるほど差をつけられたのはちょっとショックだ。
かあちゃんも以前より力がついたということで、まあ良しと思おう。
歩いたり走ったりして、23kmでヘロヘロになって帰ってきた。
ペットボトルのスポーツ飲料を立て続きに2本空にしても、ぜんぜん渇きがおさまらない。
腹は減りすぎて、もうモチリンも鳴かない。
今夜は少しは食べないと後がヤバイ。
わーい😂 ごはん、ご飯。
今後はリカバリーに努め、体力を温存して本番に望むのだ。
う~~っ、かあちゃんに遅れをとってしまった・・・・・👎