東宝特撮映画でゴジラ以外に好きで時折思いだしたように観るのは、「フランケンシュタイン対地底怪獣」だ。
1965年の公開だから、ウルトラマンの1年前に怪獣と戦う巨大ヒーローが誕生していたことになる。
しかし身長はウルトラマンほど高くなく、フランケンシュタインというくらいで出自は暗く戦争の影響をもろに受けている。
なんせ第二次大戦中、ナチスがフランケンシュタインの不滅の心臓をUボートで日本に運び込み、広島の大学病院で被爆して消息不明になるという出だしなのだ。
ま、ま、ま、ここで書きたいのはそのフランケンシュタインのことではなくて、つい一昨日読んだ「赫獣(かくじゅう)」という小説のことだ。
この表紙の絵の場所は何処でしょう?
教会があって石畳み、そう長崎なんだなぁ。
時は1984年、巷には「中森明菜」の♫ 私は泣いたことがない ♪ が流れ、ヘボな役者上がりのロンと破廉恥な老害ヤスが政治屋だった頃。
佐世保にはアメリカの艦船が怪しげな荷物を持ち込んでいると入港反対のデモがあり、ベトナムどころか朝鮮や太平洋戦争の生還者がまだ矍鑠としている頃。
事件は大浦天主堂やグラバー邸を擁する鍋冠山でおきるのだが、これがもうエグい😨
猟奇殺人なのか、大型の野生動物による「食害」なのか、トラウマを抱えた派出所の警官「植木」は謎を追い米軍の精鋭部隊と共に殲滅戦になだれ込んでゆく・・・。
さてここでなぜ「フランケンシュタイン対地底怪獣」を冒頭持ち出したのかというと、事件の根はナチスの生物兵器開発から始まることと、それが密かに日本に持ち込まれていること、そして戦争の傷がまだ癒えていない時代を背景にしていることなどが東宝怪獣特撮を思い起こさせたのだ。
筆者の「岸川真」という人は、日本映画学校出身でルポライターやシナリオライター、監督もするような人なので、お話しはとても映像を喚起させる。
たぶん東宝怪獣特撮をメチャメチャ研究してインスパイアーされたのではなかろうか、そんな気がしてならない。
タイトル「赫獣」の「赫」とは燃えるように輝く赤のことで、普段使わない言葉だけれど赤がふたつ並んでいることでもすごく強烈な赤だとイメージできる。
その強烈な赤い獣とは何かっ⁉️
人の心の奥底に潜む獣が、過酷で残酷な現実を目の当たりにして凶暴に目覚め吠える !!
救いようのない殺戮になすすべも無く引き裂かれ噛み砕かれる人間に儚い生を与えることが神の設問なのか ?
殺して殺して殺しまくる「赫獣」は、愚かな人間が生み出した黙示録の獣なのか ?
「ウルフガイ」や「キマイラ」の残酷で凶暴なエッセンスを煮詰めて、これでもかっと吐き出したような救いのなさに耐えられない人は読むべきではない小説だ。
オヤジ的には、ちょっと注目したい作家がまたひとり増えた。
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