お好み夜話-Ver2

ミスター・ノーバディ

iPadで映画をダウンロードして観るとき、作品を選ぶ基準はほぼインスピレーションだ。

レビューなど読まずに、ただジャケット写真と簡単なあらすじだけで決めることが多い。

ハズレることもあるが、今のところ8割方アタリだ。

そして先日、ダウンロードやレンタルDVDの映画で、本年度No.1の映画に巡りあった。

それが「ミスター・ノーバディ」。


時は2092年、医学の進歩で人間は永遠の命=不死を実現した。

病院のベッドで目覚めた118歳のニモは、不老不死の処置を拒んだ唯一命に限りある人間だった。

だがまもなくニモの命は尽きようとしており、世界中の人間が彼の“死”を固唾を飲んで見守っている。

そこへ現れた新聞記者の質問に答える形で物語は始まっていくのだが、さてそれからが一筋縄では行かない。


この映画をSFファンタジーと一言でいうのは違う。

SF的シュチエーションを持ってはいるが、恋愛映画でもあるし、哲学的、量子力学的な命題もはらんで、何度も、いくつものニモの人生が再生されるパラレルワールドに観客は翻弄される。

人生にはいくつものターニングポイントがあるが、9歳のニモの最初の岐路は、母親について行くか父の元に残るかだった。

そこで選んだ道が後に、3人の女性との切ない恋に発展していき、何度も何度も自分では気づかないターニングポイントを通り過ぎるのだ。

おぼろげな記憶をまさぐり、それが「シュレーディンガーの猫」という量子力学的な思考実験ではないかと推測した。

「シュレーディンガーの猫」についての具体的な説明は下のYouTubeの映像にまかせるが、

シュレーディンガーの猫
つまりニモが人生の扉を開けるまでは、すべてがそこにあり、またすべてはそこにないということになる。


こういう小難しいことを書くと、訳のわからん理屈っぽい映画と思われてしまいかねないが、実に驚嘆するエンターテイメントだから最後まで一気に観れてしまう。

この複雑精緻なプロットを、ある時は壮大に、またある時は情緒豊かに映像化した「J・V・ドルマル」監督の手腕に脱帽。

けっして昨今の劇場でのヒットは望めない類の作品だが、この映画は間違いなく21世紀の傑作だ。


iPadの小さな画面上で観るだけでは惜しいから、多分そのうち手に入れると思う。




ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「銀幕夜話」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事