ここ10年ぐらい融通のきく床屋さんが身近にいたので、我が家の頭髪はなんとか無様にならなかったが、今年はとうとう床屋難民に逆戻りしてしまった。
なんとか体裁を繕いながら、3ヶ月に一遍くらい融通のきく床屋さんを訊ねて仙台や富士宮に出かけて行って、むさい頭を親子で刈ってもらっていた。
だけどそうそう旅行みたいに散髪にいけるほど時間とお金を持て余してはいないので、あまりにみっともなく伸びた毛は自分で切ったりしていた。
もはやスキカルみたいなものを買ってだましだまし刈るかと、仙台と富士宮以外の床屋さんにかかる気がしない我が家は寂しく肩を寄せあっていたのであった。
そんなある日、本屋さんを何気なく冷やかしていたら、どうしても手に取らずにはおれないタイトルの文庫本が目にとまった。
それが「夜の床屋」。
買うかどうしようか悩むこと1分30秒、気になった時に手に入れないと最近は忘れてしまうので勇気を振り絞ってお買い上げ。
内容は短編ミステリー集で、「夜の床屋」をはじめとして「空飛ぶ絨毯」「ドッペルゲンガーを探しにいこう」「葡萄荘のミラージュ Ⅰ ・ Ⅱ」「眠り姫を売る男」「エピローグ」の全7編。
怪しげで不可思議な世界が展開するのかと思いきや、文体はとてもかるく読みやすくライトノベルのようで、しかも正統派のミステリーみたいで、正直さほどの期待もないままスルスルと読み進んでいった。
なんでもない山道で迷子になった大学生の佐倉(彼がほぼ全編を通じての主人公で探偵役)と高瀬は、仕方なく無人駅で一夜を過ごすことになった。
駅前には打ち捨てられたようなシャッターを閉めた店舗があるにはあるが、自販機もなけりゃコンビニもなく、人っ子一人居ない。
深夜トイレに起きたふたりは、くだんのシャッターが上げられ煌々と明かりがともりサインポールが回っている光景を目にする。
なにゆえこの山の中の寂れた理髪店が深夜に営業を開始したのか
ほ~ら、床屋さん関係者ならちょっと気になるでしょう。
床屋難民だって気になるから、あれよあれよという間に全編読んでしまったサ。
それぞれのお話しには一見関連はないのだが、最後まで読み進んでいくと、
う~ん、そうきたか、なるほど、うまい
とニンマリしてしまうのだ。
ささっと読めて、しかも満足度が高い、これはお買い得でありました。
だけど現実にはどうして深夜に床屋さんはやっていないのか ?
飲んだ帰りにサクッとサッパリ刈ってくれる床屋さんのひとつやふたつ、駅前にあったっていいではないか。
シャンプーしててゲーゲーされたら困るというのだろうか、気持ちよくって爆睡されても面倒くさいというのだろうか。
いや、たしかにそれもあるだろうが、床屋さんだって夜は飲んだくれたいに決まっている。
オヤジが知る限りでも、仙台や富士宮へ行っちまった床屋さんは夜ともなればベロンベロンだったからなぁ。
そうだよなぁ、そりゃ夜の床屋は無理だよなぁ。
嗚呼、少ないながらも髪ボーボーだぜ
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